学生アリスシリーズ

有栖川有栖『月光ゲーム』(学生アリスシリーズ第1段)あらすじ、感想、まとめ

作家さんのデビュー作は好きだ。

デビューしてから何年もたってからの作品を読んで、その人を気に入ったりすると、デビュー作が読みたくなってくる。

好きな人の子供時代や、若いころが知りたくなるような心境なのだろうか。

そんな気持ちで手に取ったのは、有栖川有栖のデビュー作、「月光ゲーム」!

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
関西が舞台のミステリーや。
同じ関西人のネコ缶には、話し方や地名にとても親しみが持てたで。

月光ゲーム 有栖川有栖(学生アリス)あらすじ

英都大学に入学した有栖川有栖は、推理小説研究会に入部する。
そのサークルで、夏休みの合宿にと選んだのは、休火山の矢吹山にキャンプに行くこと。

そこで出会った雄林大学・神南学院短大の学生とも意気投合し、キャンプファイヤーをしたりゲームをしたりして楽しんでいた。

ところがキャンプ3日目に火山が噴火。下山もできない状況に17人は追い込まれてしまう・・・。

救助もなかなか来ない、閉ざされた山の中で次々に起こる連続殺人。

犯人はこの中にいるに違いない・・・恐怖の日々が始まる。

死者が書き残す、ダイイングメッセージ「Y」は何を物語るのか?
そして彼らは、この山を生きて脱出できるのだろうか?

月光ゲーム 有栖川有栖(学生アリス)感想

登場人物が、アガサクリスティ並みに多い。
覚えるのが大変だったが、とても読み易くまとまった話だった。

作者の有栖川有栖が、登場人物の一人として物語の中に入り込み、淡い恋をしたり仲間と推理をしたりと大活躍している。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
作者がストーリーの中に入るのは、実はよおある話やで。
エラリー・クイーンもそうやし、内田康夫もな。

でも主人公のはずの有栖川氏より、サークルの部長「江神次郎」のほうが、個性も強く魅力的なキャラクターとして書かれているのがポイント。

閉ざされた空間での殺人事件(クローズドサークル)はミステリーでは常套手段。
でも、その閉ざされた理由を「火山の噴火」と設定したのは心底びっくりした。

でもその火山の噴火も、うまくトリックに使われており、「推理小説に偶然は持ち込んだらダメ」のネコ缶も納得できる。

謎解きのハラハラだけでなく、こんなハラハラも期待できる。

読者A
読者A
この人たち、無事に下山できるのかしら・・・
読者B
読者B
また噴火でけがした人が出たわ。大丈夫かしら・・・ 

2つのハラハラで、ページをめくる手が止まらないこと請け合い。

 

読み応えのある作品だったけど、残念だったことはこの2つ

  • 犯人の動機が今一つ弱くて、ハッキリしないこと。
  • 「月」の扱いがあいまいだったこと。

こんなことで人殺しするの?と思うくらい動機が弱かったし、何かトラブルがあったように書かれてはいたが、それがどうもはっきりしていない。

タイトルにも月が入っているし、登場人物にも月にちなんだ女性が出てくる。
この辺りからいろいろ推理してみたが、結局「月」ってそんなに重要ではなかったのではないか?と思う。

せっかく月にちなんだ女性の行動や発言があったのに、そこまで生かされていない感じがして残念だった。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
サブタイトルの「Y」(「Yの悲劇❜88」)を、メインのタイトルにした方がしっくり来るのでは?と思ったで

月光ゲーム 有栖川有栖(学生アリス) まとめ


ネコ缶の評価

有栖川有栖の記念すべきデビュー作。
そして「江神次郎」のデビュー作でもある。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
有栖氏よりも、部長・江神がかっこよくてファンになること間違いなし!

文章の随所に、作者の文学に対する知性を感じさせるユーモアがちりばめられており、クスリと笑わせてくれること間違いなしの1冊。

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