有栖川有栖・国名シリーズ第10段。
駆け足で国名シリーズを紹介してきたが、とりあえずはこれが(今のところ)最後。
また出版されることを願いつつ、ネコ缶こう言いたい。
では国名シリーズ最新版(いまのところ)「カナダ金貨の謎」いってみよ!
Contents
有栖川有栖・作家アリス(国名シリーズ第10段)「カナダ金貨の謎」有栖川有栖 あらすじ
カナダ金貨の謎は短編集。この話が入っている。
船長が死んだ夜
エア・キャット
カナダ金貨の謎
あるトリックの蹉跌
トロッコの行方
一つ一つ詳しくみていこう。
船長が死んだ夜
いつもキャプテンハットをかぶっている、元船乗りの小郡晴雄。
そんな、陸に上がった船長が、ナイフで刺されて死んでいた。
晴雄はなかなかのイケメンで、村の女性から親しまれており、当然トラブルもあった。
容疑者は、トラブルのあった人間から絞り出されたが、どうも決め手に欠ける。
犯人は人妻とその夫か?幼馴染の女性か?
なぜか剥がされた、何の変哲もないポスターが、謎を解くカギになる。
思わず、ジョージ・クルーニーを連想してしまったのは、ネコ缶だけやろか
エア・キャット
ネコを飼っているわけでもないのに、飼っているふりをしていが男性が殺された。
その事件の重要な手掛かりを、火村がたくさんの文庫本の中から選ぶ。
その文庫本を、火村が選んだのは偶然なのか?
カナダ金貨の謎
表題作。
丹次先輩の彼女・彩音が電話をしてきた。
言われた通り駆け付けるが、丹次先輩は死んでいた。絞殺されていたのだ。
嘆き動揺する彩音。
でも実は、丹次先輩を殺したのは、呼び出された太刀川だった!
綿密な殺人計画を立てたのに、彩音のせいで狂ってしまい、動揺する太刀川。
それでもなんとか、完全犯罪を目指して太刀川は対応していく・・。
よくできたアリバイトリック。
ネコ缶も最初は、太刀川の計画がどう狂ったのか、よくわからなかったが、最後に大納得。
先輩の彼女に横恋慕したとか、昔やった振り込め詐欺をもっと絡ませたほうが、動機としてはよかったのでは?
あるトリックの蹉跌
火村とアリスは、大学で席が隣同士になったこと、そして有栖が書いていた小説を火村が読んだことで、友人付き合いが始まる。
その時のエピソードを、詳しく書いたショートストーリー。
トロッコの行方
一人の女性が、歩道橋の階段から突き落とされて殺された。
彼女の店をオープンさせるために、お金を用意しようとした男がいた。
だが男の行為のおかげで、彼女は幾人かの怒りや恨みを買っていたのだ。
犯人は、その怒れる人物たちの中にいるのか?
トロッコ問題って何?
と思うかた(ネコ缶含む)のために解説。
トロッコ問題とは
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験。
線路を走っていた、トロッコの制御が不能になった。
このままでは、前方で作業中だった5人が、猛スピードのトロッコに轢き殺されてしまう。
あなたの目の前には、トロッコの進路を変える分岐器がある。
でもそれを動かしてしまうと、別線路で作業している1人をひき殺してしまう。
5人を助けるために1人を犠牲にするのか?あなたはどう行動するのか?
もちろん正解はないけれど、倫理学の議論をするのにもってこいなネタやね。
有栖川有栖・作家アリス(国名シリーズ第10段)「カナダ金貨の謎」有栖川有栖 感想
有栖川氏のミステリーを読んでいて、つくづく感じることがある。
それはこれ。
- 一番殺人の動機になりそうな、ドロドロした人間関係(男女関係含む)が全く描写されない
- 犯人の殺人動機が、妙にファンタジー
男女のドロドロだけでなく、社会の構造の矛盾、企業内のドロドロなども一切出てこない。
清張さんは時々、読了後に胸が悪くなるくらい描き切ってる。それはそれで好きやけどな。
もちろんドロドロしてないほうが、読むのが楽だったりもするのだが、ラストで「ええーっ」となることもよくある。
だが「カナダ金貨の謎」を読んで、有栖川氏がどうして、ドロドロした人間関係に触れないのか、謎が解けたような気がした。
謎が解けたのはこの1文である。
「現在の犯罪は、俺のココロには重すぎるんや。
知的で遊戯的で、ファンタスティックなミステリーが好きやから。」
(あるトリックの蹉跌より)
この1文を読んだ時、大いに納得した。
これが有栖川氏の書く、ミステリーの本質なのだろう。
どちらかと言うと「人間の本質を追及したい」ネコ缶は、アリスより火村の書いたミステリーを読んでみたいと思う。
有栖川有栖・作家アリス(国名シリーズ第10段)「カナダ金貨の謎」有栖川有栖 まとめ
ネコ缶評価
「引っ張った感」を感じるところもあるが、なかなか読み応えのある1冊。悪くない。
次はどの国になるのか?ちょっと楽しみだ。
有栖川有栖氏の国名シリーズの順番ってどうなってんの?と思う方はこちら⇒国名シリーズの順番とおもろさNO1はこれ!
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