象といえば、童謡「ぞうさん」とか、動物園の人気者とか、とかく「優しくてかわいい、穏やかな動物」というイメージだ。
でも海外では、象はことわざになるくらい「物覚えがよい動物」として認識されている。
そんな象をタイトルに使って、「12年前の事件をよく覚えている人のたとえ」にも使った作品が、今回ご紹介するこれ。
「象は忘れない」
今回は珍しく、オリヴァ夫人が、とある人から事件解決を依頼される所から物語は始まる。
そんな「象は忘れない」いってみよ!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ)「象は忘れない」あらすじ
昼食会に出たオリヴァ夫人の元に、見知らぬ夫人・ミセス・バートン・コックスがやってきてこう言った。
実はシリヤの両親が心中した事件ですけど、母親が父親を殺したのでしょうか?それとも父親が母親を殺したのでしょうか?
とても重要なことですから、私は知らないといけないのです!
ぜひあなたに、この疑問を解決していただきたいのです!
話が進まへんしな。
聞くところによると、ミセス・バートン・コックスの息子が、シリヤと結婚するので、ここを是非に聞いておきたいとのことだ。
納得がいかないまま、断り切れなかったオリヴァ夫人は、早速ポアロに相談。
不審に思いつつ、好奇心を抑えられない女性、オリヴァ夫人。
ポアロと一緒に、12年前の事件を捜査することに決める。
「象のように記憶力の良い」関係者たちへの聞き込みから、真実を見つけることはできるのか?
事件の真相は、聞くほどに昔にさかのぼっていく・・・・。
長かったポアロシリーズ、いよいよ大詰め!
アガサクリスティ(ポアロ)「象は忘れない」感想
読んでみると「5匹の子豚」に似ていると思った。
過去に起こった事件の解決を、依頼者から求められるというパターンだ。
このパターン、実はクリスティ作品の終盤に、意外とよくある。
「5匹の子豚」以外に「マギンディ夫人は死んだ」も、そのパターンに近い。
そして「ハロウィーンパーティ」は、依頼されて過去の事件を掘り起こすわけではない。
でも現在起こった事件の解決のためには、過去に起こった事件を解き明かす必要に迫られるので、似ているといえよう。
東野圭吾さんもよく使うパターンやし、有栖川有栖さんの「女王国の城」も11年前の事件が絡んでくる。
今の事件の解決のために、過去に起こった事件にさかのぼる・・・・
これ、ネコ缶勝手に「タイムマシンミステリー」って呼んでるわ。
今回の「象は忘れない」では、いまの世界で、事件は何も起こっていない。
もちろん誰も死んでない。
だれかが危ない目に合ってるわけでもなければ、無実の罪をかぶっているわけでもない。
とある女性が、息子の結婚相手の両親が起こした、12年前の心中事件の真相を調査してほしいっていう風変わりな依頼なのだ。
・・・と読者を含めみんなが思う。
・・・などという勘繰りを持ちつつ、ゆるゆるとみんなで過去にさかのぼっていくのだ。
今回のポアロやオリヴァ夫人の調査は、12年前の心中事件の関係者への聞き込みが大半を占める。
いや、調査が進むと、もっと前にさかのぼっていく。
って思うよな?
でもみんな聞いてみると、タイトル通り「象のように」いろいろ細かいことを覚えてるから、ちょっとびっくりするで!
今回はそんな「タイムマシンミステリー」な物語に、恋愛ものと同窓会的な要素がプラスされてる。
内容を詳しくみていこか。
見どころ1 同窓会のような雰囲気
ポアロデビューからここまでくると、登場人物もみんなお年。
前回の「ハロウィーン・パーティ」でも書いたが、「象は忘れない」でも、みなさん昔話をよくやってくれる。
「カナダ人の娘さんで、情熱と激情と気迫のかたまりのような人でした。母親が死刑を宣告された、ある殺人事件を調べに来たのです。」
(略)
「それで母親は無実だったのですか?」(ギャロウェイ)←スペンスの元同僚
「そうです、無実でした」(ポアロ)
「それがあなたには意外だったのですね?」(ギャロウェイ)
「解ったときにはそうは思いませんでした。(略)彼女が有罪であるはずがないことを示していましたから。」「象は忘れない」P103~104
これ、知ってる人はすぐにピンとくるけど、「5匹の子豚」のことやな!
この最後のセリフ、ポアロ、あの時そう思ってたんや~って、しみじみ思う。
まだあるで
「ほかにも1つやり方は違うが、やはり過去を掘り起こした事件がありましたな。」
スペンスが言った。
「パーティで、女の子が殺人の現場を見たと言った。あの事件ですよ。」
「あの時もやはり・・・なんといえばいいかな・・・前向きに進まないで、後ろ向きに進まなくてはならなかったのです。
さよう、全くその通りですよ。」「象は忘れない」104ページ
これは1つ前の作品「ハロウィーン・パーティ」。
こんな最近の事件のことも話してる!
5匹の子豚でも思ったけど、聞き込みだけで12年前の真実にたどり着くポアロは、やっぱりただものではないな!
ネコ缶のちょっぴり個人的なアンチ意見
今回はちょっと残念なところ(ネコ缶の超個人的意見)も述べよう。
まずは「象は忘れない」の、心中したシリヤの両親の経歴を書く。
シリアの母親・マーガレットは、姉のドロシアと双子だった。
そしてシリアの父親・アリステアは、最初はマーガレットの姉・ドロシアと恋人だった。
でも付き合ってしばらくすると、アリステアは、ドロシアの精神の危険さに気づき、妹のマーガレットに乗り換えて結婚した・・・。
ドロシーはその後、事件をいくつか起こし、精神病院に何度も入退院を繰り返すようになる。
ちょっとこれ、ネコ缶的にはNG
いや、双子と付き合って、姉妹に乗り換えたのがNGってわけじゃない(絶対OKってわけでもないが)
双子とか精神疾患の犯罪者(と超能力・幽霊など偶然要素が多いもの)を持ってきたら、ミステリーは面白さが減るというのがネコ缶の定義なんや。
ここでも書かせてもらった
なので浅見光彦シリーズは、時々やれやれと思ってる。
クリスティでは「ネコ缶の禁じ手」をやらないので安心していたが、最後の最後で使ってしまったか~とちょっと残念になった。
とはいえ愛の力を、クリスティ得意のきれいな形(ちょっとメロドラマチックだが)で書いてくれていたので、そこはまあ良し。
アガサクリスティ(ポアロ)「象は忘れない」まとめ
ネコ缶評価
- ちょっとタイトルに内容を寄せすぎなところ
- ネコ缶の禁じ手を使ってしまったところ
- 話の展開にちょっと強引さを感じる
「象は忘れない」のマイナスポイントはこの3つ。
ある意味この話のキーマンや。
ちなみに今回の事件を解くカギは「かつら」なのだが、「第三の女」でも結構かつらがポイントになっていた。
この時代にはもう、かつらを女性がしょちゅう使うようになっていたのかな~・・・と思うと興味深いで
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