過去と現在を対比させたり、現在の事件が過去の何かと結びついているという設定は、
ミステリーでは碇石。
今回ご紹介する「水車館の殺人」もそんな作品のひとつだ。
1985年9月28日、水車館で奇妙な事件が起こる。
それが、ちょうど1年たったその日に、解決される・・・という設定なのだ。
だがちょっと読んだら「ん?」と思うだろう。
過去と現在が、交代で書かれるのだ。
例えば1985年9月28日8時のことを書いたら、その次の章で1986年9月28日8時のことが書かれていく。
ちょっと目まぐるしいが、みていこう!
Contents
綾辻行人(館シリーズ)「水車館の殺人」 あらすじ
自分が運転する車で交通事故を起こし、車いすの生活をする藤沼紀一。
おまけにその事故のやけどで、顔や手足が焼けただれてしまい、仮面と手袋を手放せない。
そして世間から離れ、山の中に3つの水車がある豪邸「水車館」を作り、紀一は画家の親が書いた絵に囲まれ静かに暮らしていた。
そんなある日、奇妙な事件が立て続けに起こった。
毎年この日に、泊りがけで来る人がいるんや。
その日にこんなことが、立て続けに起こるねん!
- 家政婦がバルコニーから転落し、川に流され死亡
- 夜には、大事にしていた絵が盗まれる
- 泊り客の一人が行方不明
- 居候していた紀一の後輩が、バラバラにされ焼却炉で焼かれていた
殺人は行方不明の男(古川恒仁)の犯行だろうという事になり、1年。
毎年、絵を見に来るために泊まりに来る客たちの中に、今年は見慣れない男がいた。
彼の名は古川恒仁の友人、島田潔。
友人がやったとは思えない、1年前の事件の真相が知りたくてここに来たというのだが・・・・。
事件の真実は違うものなのか?
だとしたら、だれが真犯人だったのか?
建築家・中村青司の「水車館」の謎が幕を開ける!
綾辻行人(館シリーズ)「水車館の殺人」 感想
面白い。
前回の「十角館の殺人」も良かったが、今回も良くできていた。
どこに犬神家が入ってるのかは、この記事でもわかるよな!
見どころをみていこう。
「水車館の殺人」見どころ1 設定がとにかく奇妙。
出だしでも述べたが、とにかく書き方が変わっている。
物語のスタートから、こんな感じで韻を踏んでくれている。
第1章 現在 1986年9月28日 午前8時30分 藤沼紀一の寝室
いつものように私は目覚めた。
中庭に面した東向きの窓から、飴色のカーテンを通して明るい朝の陽ざしが忍び込んでいる。(略)
ごとん、ごとん・・・
建物の西側で回り続ける水車の響き、穏やかな朝である。「水車館の殺人」17ページ~18ページ
・・・そして今日は、台風が来るかもしれないという描写に移るのだが
なんと、この出だしの書き方は、第2章も全く同じ。
第2章 過去 1985年9月28日 午前8時30分 藤沼紀一の寝室
いつものように私は目覚めた。
中庭に面した東向きの窓から、飴色のカーテンを通して明るい朝の陽ざしが忍び込んでいる。(略)
ごとん、ごとん・・・
建物の西側で回り続ける水車の響き、穏やかな朝である。「水車館の殺人」31ページ~32ページ
こんな調子で物語はずーっと、過去と現在が交互に出てくる。
混乱しないように、日付も時間もしっかり書いてあるのが親切だ。
重要な証言が、過去・現在両方で書かれているから、頭がこんがらがらないよう、しっかりメモを取りながら読んでいくことをおススメする。
「水車館の殺人」見どころ2 建物の造りが凄い
「館」シリーズは、数あるミステリー小説の中で、群を抜いて個性的だ。
ミステリー小説で、主人公が同じシリーズはよくある。
ポアロしかり、ミス・マープルしかり、学生・作家アリスしかり、ほとんどの作家さんがやってる。
でも「建物をシリーズ化している」作家さんは、なかなかいないのではないか。
前回の「十角館の謎」でも出てきたが、中村青児という謎の建築家が建てた奇妙な建築物が、今回も出てくる。
そしてその奇妙な建物を舞台に、今回も事件が起こるのだ。
そこで読者はこう考えるだろう。
ああ、だから館シリーズっていうんや~。
次の建物は、どんな奇妙な造りになってるんやろ~。
ワクワクするよな!
水車館の殺人 見どころ3 島田潔氏・健在
建物だけでなく、探偵さんもちゃんと健在している。
館シリーズの名探偵は「島田潔」氏。
十角館の時は、他に活躍している人間がいたので、正直ちょっとお邪魔な感じがあった。
でも「水車館の殺人」は、とぼけた口調ながらも、しっかり名探偵役をこなしてくれている。
探偵島田は、あまりえらぶらない。
解らなかったら「どうなんだろうなあ~」ってとぼけるし、突っ込まれたらあっさり退却したり謝ったり。
と周りにも読者にも思わせるところが、ポアロではなく、コロンボや金田一っぽくていい。
ヒョウヒョウとしたとぼけた口調でも、ラストはしっかり事件を解決してるし、今後の活躍に期待できそうだ。
綾辻行人(館シリーズ)「水車館の謎」 まとめ
ネコ缶評価
館が主役の物語ならではのトリックが、ラストに出てくる。
このトリック、他のミステリーでは、ネコ缶絶対に許せなかった。
そんな「館」が主役のミステリー、次が期待できるで!
ちなみにミステリーのトリックは、これに似てた↓
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[…] その言葉通り、「十角館の殺人」は本土と島の交錯。 「水車館の殺人」では過去と現在の交錯だった。 「十角館の殺人」詳しくはこちらから 「水車館の殺人」詳しくはこちらから […]
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