アガサクリスティーと言えば、ミステリーの女王だ。
(何をいまさらだが)
本は1億冊以上売れたと言われている。
そして今も、もちろん売れ続けているし、これからも売れ続けるだろう。
でも、クリスティのミステリーは、こんな特徴もある。
恋愛ものとしても、かなりよくできている作品がある。
恋愛ものとしてもイイ作品の例を挙げてみよう。
「ホロー荘の殺人」
「満潮に乗って」
「杉の柩」
「ナイルに死す」

などなど、男女の間柄や、女性の心理、自立や葛藤をうまく描いた作品がとても多い。
ネコ缶、実はミステリーと恋愛を絡めるのは、あまり好きやない。
ネコ缶のミステリーポリシーはこちら
でもクリスティの場合は、下品でもないし、不必要な恋愛でもない。
そして何より、恋愛が書かれていても、ミステリーの質が超一級なことは間違いないからだ。
今回ご紹介するミステリーもそんな1冊だ。
「動く指」
早速どんな話か見ていこうか!
Contents
アガサクリスティ(ミス・マープル)「動く指」あらすじ

足の怪我の療養のために、リムストック村にやってきた、ジェリーとジョアナ兄妹。
暮らしにも慣れてきた時、妙な手紙が届く。
お前たち本当は、兄弟じゃないんだろう
などなど、あることないこと、卑猥なことを書き綴った、名前すら書いていない、活字を切り取って作った手紙だ。
村の人に聞いてみると、奇妙なことに誹謗中傷の手紙は、村中に届いているという。
手紙をもらった人は、なかなか警察に相談も出来ず、ただ我慢をし、手紙を捨てるだけだった。
ただ、村には奇妙な空気がだんだん流れ始める。
ひそひそ話があふれるそんな中、恐れていたことが起こる。
手紙の内容にショックを受けた、モナ・シミントンが自殺してしまうのだ!
ますます疑心暗鬼になる村の人たち。
もはや手紙は、いたずらでもなんでもなくなってしまった・・・。
そんな中、今度はシミントン家のメイド、アグネスが殺されてしまう。
アグネスは、おびえて不安そうにしていたらしいが、何かを知っていたのだろうか?
そして何より、手紙を書いていたのは一体誰なのか?
何のために書いていたのか?
牧師夫人が助けを求めたことにより、ミス・マープルがリムストックに調査に訪れる。
アガサクリスティ(ミス・マープル)「動く指」感想

うーむ・・・・。
これ、マープルものというよりはこれだ。
「ジェリー・バートンとミーガン・ハンターの恋物語」
マープル、トータルしても30ページも出てないんやなかろうか・・・。
とはいえ、よくできた話なので、見どころをみていこう。
「動く指」見どころ1 手紙が引き起こすミステリー

「動く指」のトリックを読んだ時、この作品を思い出した。
「ABC殺人事件」
殿堂入りについてはこちら⇒ネコ缶が選ぶ「クリスティおススメ神9(ナイン)」
「ABC殺人事件」は、超有名な連続殺人事件の物語だ。
「動く指」もこのABC殺人事件のトリックに近いものがある。
「煙幕」という言葉を、最初の方にジェリーが使うが、これがメガトン級のヒントだ。
何のために村中の人に、嫌がらせの手紙を出したのか?
その理由を知ったとき、人間心理を巧みに利用した、犯人の頭の良さにうなること請け合い!
「動く指」見どころ2 ジェリーとミーガンの物語

「動く指」の主役はズバリ、ジェリーとミーガンだ(決してマープルではない)。
この2人のロマンスのかたわらで、ミステリー(殺人)が起こってると言っても過言ではない。
ミーガンはこんな女の子だ。
ミーガンは身なりも構わないし(母親も注意しない)靴下にはいつも穴があいていた。
学校を出たが働きもせず、自転車を乗り回してぶらぶら暮らす日々だ。
かたやジェリーはこんな男性。
ミーガンは、今の時代に生きていたら「ネグレストされている」という事で、児童相談所などから指導が入ったかもしれない。
それくらい家では、いや村中からのけ者にされている。
特に継父などからはこんな扱いだ。
彼(継父)はミーガンを嫌っているのではなく、ほとんど眼中にないのだ。
それは犬に関心がない男が、自分の家で飼われている犬に対して示す反応に近かった。
けつまずいて初めてそれに気づき、怒鳴りつけたり、頭をなでてもらいたがってる時だけちょっとかわいがってやったりする。
彼の、継子に対するそのような無関心な態度・・・。
「動く指」 138~139ページ
ミーガンは、歴史も文法も苦手だが、数学が好きだし、シェイクスピアも自分なりの解釈をするくらい、賢いところもある。
ただ、周りが(両親が)ミーガンの長所に関心を持たない。
したがってミーガンも、自分を大事にできず、自分に自信が持てずにいるのだ。
家を出て、村を捨てて自立しようにも、時代的に難しいし。
ミーガンもちょっと不器用で、仕事がなかなか覚えられないってところもあるし・・・。
おまけに威圧的な、村の女ボスのエメ・グリフィスからはこんな風に言われてしまう。
あの子(ミーガン)ときたら、こっちが何をいっても、まるで意味が通じないような顔をしてぽかんと見つめているんだから・・・。
ああいう低能な子は嫌になりますよ。
「動く指」 127ページ 抜粋
差別やろう、この言いかた・・・。
でもよそから来た、ジェリー(と妹のジョアナ)だけは、ミーガンの良さを解ってやるのだ。
そしてラストで、ミーガンを一人の人間として、女性として輝かせてやる。
で、読者はみんなこう祈ってしまうだろう。
さあ一体、ラストはどうなるのか?
犯人が誰か、手紙を書いた目的は何なのかと同じくらい、恋の行方も楽しみにしておいてな!
アガサクリスティ(ミス・マープル)「動く指」 まとめ

ネコ缶評価
よくできた話だ。
マープルがほとんど出てこない・・・というのがちょっとだけマイナスなのだが、ミーガン&ジェリー(と妹のジョアナ)が、かわいくてまあいっか!と思う。
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