館シリーズもこれで8作目だ。
前回の「暗黒館の殺人」が❝エピソード0❞なら、今回ご紹介する「びっくり館の殺人」は❝館シリーズ番外編・子供向けバージョン❞といったところ。
番外編だからだろうか。
主役の江南孝明も、鹿谷門実も出てこない。
ページ数も、2500ページもあった暗黒館の10分の1位なので、早い人なら1日あれば読めてしまう。
文章も解りやすくて読みやすい。
ライトで読みやすいが・・・・
中身はちょっとえぐい。
好みがはっきり分かれるだろう。
ライトだが中身はハードな、館シリーズ番外編「びっくり館の殺人」、ご紹介します。
Contents
綾辻行人(館シリーズ)「びっくり館の殺人」あらすじ
永沢三知也は小学校6年生。
家庭の事情で、東京から関西のA※※市に引っ越してきた。
A※※市は、お屋敷の多い土地だったが、ひときわ目を引く建物があった。
古びた赤いレンガの塀、閉ざされたブロンズ格子の門。
表札もなく、雑草だらけの庭・・・。
そこは「びっくり館」と呼ばれるお屋敷で、幽霊が出るという噂まであった。
三知也は、ひょんなことから、びっくり館に住む、古屋敷俊生という少年と友達になる。
俊夫は三知也と同じ年だが、体が弱く学校にも行ってない。
このびっくり館に、祖父の龍平と家庭教師の新名、家政婦の関谷と、そして腹話術人形のリリカと一緒に住んでいるというのだ。
そんな複雑な背景を持つ俊夫は、三知也の友達・あおいも入れて、3人で遊ぶようになる。
名前の由来になったという、びっくり箱がたくさん仕掛けられた部屋も見せてもらい、友情を深めていく3人。
そんなクリスマスの夜、俊夫の祖父・龍平が殺されるという事件が起こる。
龍平は、人形がたくさん置かれた部屋で、何者かに刺殺されていたが、なんとその部屋は密室だった・・・・。
俊夫はその時、別の部屋で寝ていたし、お手伝いの関谷さんはいなかった。
モチロン自殺でもない。
犯人は一体誰だったのか?
そして龍平が見せた、恐ろしい腹話術の意味は?
俊夫の書いた「help us」とはいったい?
綾辻行人(館シリーズ)「びっくり館の殺人」感想
物語の構成は悪くない。
まずは大人になった三知也を登場させ、迷路館の殺人からびっくり館へといざなう。
そして次に、17年前のびっくり館で起こった殺人を出し、驚く読者をスタート地点までもっていき、物語は始まる。
そしてそのまま謎解きへと続くのだ。
このつくりは「構成には凝ります」という、綾辻氏ならではと思わせる。
びっくり館の殺人 ネコ缶の超個人的感想
内容は一応、子供向け・・・いう事になっているのかな?
だが、ネコ缶は母親として、息子にこの本を読ませたいかと言われたら・・・
ちょっとためらうだろう。
登場人物の複雑な家庭事情は、仕方ない面もある。
が、近親相姦や虐待をにおわせる描写や、話のすべてにただようホラーな雰囲気は、子供によっては、かなりショックなのではないだろうか。
特に、主人公の祖父・古屋敷龍平が、腹話術の人形で寸劇をするところは本当に恐ろしいし、大人の私でもゾッとする。
子供向けのミステリーホラーといえば、江戸川乱歩の書く「少年探偵団」を思う人もいるかもしれない。
「少年探偵団」は、確かに怖い面もある。
でも「絵空事」「フィクション」だという事は、子供でも分かるだろうし、ラストも悲惨なことになったことはない。
作者も「子供がワクワクすること」を目的に書いていることが解る。
だが「びっくり館の殺人」はそのあたりの容赦がないのだ。
ネコ缶は、元々ホラーや、子供が犠牲になるものがあまり好きではない。
虐待や近親相姦などであればなおさらだ。
館シリーズは、1作目の「十角館の殺人」から考えると、ホラー要素がだんだん強くなってきてるが、なんとか読んできた。
でも「びっくり館の殺人」は、ちょっとネコ缶の好みから完全に外れている。
気にならない人であれば、読みやすいし、短いのでいいのではないだろうか。
ただやはり、読了後は後味が悪いかもしれないので、要注意だ。
びっくり館の殺人 唯一の救い
光が無いような言い方をしているが、唯一の救いがある。
それは、主人公三知也のお父さんだ。
三知也のお兄さんが、「クラスメイトを道連れにして自殺」というショッキングな事があっても、気丈にふるまう。
「正義」と「父親としての感情」で葛藤もあったと思うが、こんな時でも感情に流されないのはすごいの一言。
そして気がふれてしまった妻(三知也の母)と別居をするという事になっても、やさぐれずに、弁護士にならんと勉強し、三知也にも必死に優しくふるまってくれる。
そしてお父さんはアメリカ留学をし、必死で頑張ってアメリカで優秀な弁護士として認められるのだ。
このお父さんの存在は、狂気あふれる作品で、ホッと一息つける貴重な場面だ。
綾辻行人(館シリーズ)「びっくり館の殺人」まとめ
ネコ缶評価(10段階で)
よくできた話だと思うが、完全に好みが分かれる作品だと思う。
「びっくり館の殺人」を外しても、館シリーズは解る。
なので「子供が主体のホラー小説」が平気な人であればおススメする。
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