家族の一人が例えば殺人罪で逮捕され、獄中で死んだとする。
で、何年後かにアリバイを立証してくれる人が現れ、無実だったと解った場合・・・
あなたはどう思うだろうか。
いろいろ言いたいことはあるだろう。
そして様々な感情は起こるだろうが、普通はこう思うのではないか
ところが今回、ご紹介する「無実はさいなむ」は、そうではなかったのだ。
無実とわかったとたん、家族に微妙な空気が走る。
そして家族がギクシャクしだし、ついに第2第3の殺人事件まで起こったのだ!
どうしてそんなことになってしまったのか?
詳しくみていこう!
Contents
無実はさいなむ(アガサクリスティ) あらすじ
2年前、慈善家の老婦人、レイチェル・アージルが殺された。
逮捕されたのは、お金に困っていた養子のジャッコ。
札付きのワルで、いくつもの軽犯罪を重ねていた男だ。
投獄中にジャッコは病死し、混乱していたアージル家も、この頃はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
ところがある日、探検家のアーサー・キャルガリという人物が、アージル家を訪問。
こんなことを言った。
つまり彼にはアリバイがあり、無罪なのです!
2年もたって言いに来たのは、事故と探検に行っていたためという。
非難されることは覚悟していたが、いくばくかの安堵や感謝はあるだろう・・・・というキャルガリの予想とはうらはらに、なぜか嬉しそうではないアージル家。
という非難さえされるしまつ。
なぜアージル家は、ジャッコの無罪を喜ばないのか?
戸惑い、ギクシャクしだすアージル家で、ついに起こった第2・第3の殺人。
アージル夫人を殺した真犯人は、そして第2第3の殺人事件の犯人は、一体誰なのか?
無実はさいなむ(アガサクリスティ) 感想
面白い。
一言で言ってそれだ。
じわじわくる面白さがある。
ルパンのような密室トリックや、派手な殺人事件、国を巻き込んでの革命・・・
なんてものは一切出てこない。
家族の冤罪をテーマにした、静かに進む物語なのだが、強烈な面白さがある。
ちなみに「冤罪」がテーマであれば、クリスティではこういったものがある。
他にはこれ
などなど。
冤罪はミステリーのネタになりやすいテーマなのは確かだ。
でも「無実はさいなむ」は、無実の人間をどう救うかというより、こっちをメインに書いてある。
「人間の業」
様々な人間の内面、特に被害者のレイチェル・アージルの業の深さを、痛い位に書いてくれている。
今回はレイチェルの業を中心に、様々な人間の裏をかいていこう。
「無実はさいなむ」面白ポイント 人間の業が余すところなく書かれている
レイチェル・アージルは、自分が子供を産めなかった分、貧しい子たちを養子にして、愛情を注いでいた。
それだけだと美談なのだが、レイチェル・アージルの場合は度を越していた。
さて、アージル夫人の場合は母性本能が非常に強かった一方、子供を産むという肉体的満足が得られなかった。
(略)
いくら貰い子をしても満足することがない。
感心は四六時中、子供に向かってる。ご主人はもう問題ではなくなった・・・。
(略)
子供が本当に必要だったのは、「ごく自然な悪意のない放任」という事だった。
「無実はさいなむ」133ページ
今でもいるよなあ・・・。
明けても暮れても子供の事ばっかりで、干渉しすぎてるお母さん・・・。
気持ちは解るが、一緒に居ると次第に息苦しくなってくるのだ。
そして子供たちは、彼女の好意とはうらはらに、そこまでの感謝をしていない。
むしろ逃げたがっている様子さえあるのだ。
その理由をこんな風にクリスティは書いている。
アージル夫人は人間的な弱さというものを決して容赦しなかった。
(略)
人間一人ひとりがみんな違う事、反応の仕方も特質も、さまざまであることがついに解らなかった。
(略)
時がたつにつれて、レイチェルは独裁者に変貌していった。
常に一番正しいのはレイチェルなのだ。
「無実はさいなむ」155ページ~159ページ
クリスティの人間(女性)観察力や、洞察力には毎回舌を巻く。
同じ母親として、そんな風に子供に接していないか思わず考えた。
間違ってはいないが、独善的になる人は確実にこの世にいる。
女性の場合、子供に関することや、家庭内であればそうなりやすい。
それは古今東西の真実だろうが、本当にエグイくらい容赦なく書かれているのだ。
他にも、夫を完全に自分の中に取り込んでしまって、ネコをかわいがるように愛する女性メアリや、若い男性の口車にまんまと載せられた、女性の悔しさもリアルに描かれている。
こうした曲がった母性、歪んだ家族を書かせると、クリスティは本当にうまい。
他にもクリスティは、歪んだ家族を描いている。
強烈なまでの個性を持った親たちが描かれていて、ゾッとするくらいだ。
「無実はさいなむ」は、謎解きと同時に、クリスティの「人間にたいする洞察力」をじっくり味わってほしい。
無実はさいなむ(アガサクリスティ) まとめ
ネコ缶評価
最初に出てきた、キャルガリなる人物が探偵役をやってくれるのかと思いきや、途中でフィリップ(アージル夫人の養子・メアリの夫)が、探偵役をやっている。
そこが少々ややこしかった。
そして、冤罪だったジャッコが、なぜもっと無実を訴えなかったのか?なぜ粛々と刑を受け入れたのかも気になる。
とはいえ、それが小さなことに感じるくらい、今回はキャラが立っている。
「無実はさいなむ」は、それメインで読んでいこ!
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