女性の心理描写に定評のあるクリスティだ。
さぞかし面白いのでは
・・・という事で、ミステリーには関係ないけど、ネコ缶さっそく読んでみた。
そのクリスティの恋愛小説は全部で6冊ある。
- 愛の旋律
- 未完の肖像
- 春にして君を離れ
- 暗い抱擁
- 娘は娘
- 愛の重さ
今回ご紹介するこちらは、メアリ・ウエストマコットとしては、初の作品だ。
恋愛だけではなく、芸術や天才との愛というテーマもあり、600ページを超す大作となっている。
「そして誰も殺されなかった」クリスティ作品、早速いってみよ!
アガサクリスティ「愛の旋律」あらすじ
ヴァ―ノン・デイアは、アポッツ・ビュイサンという由緒あるお屋敷で、何不自由なく育っ。
空想好きなヴァ―ノンの友達はこの3人。
ユダヤ人の大金持ちの息子・セバスチャンと、従妹の大人びたジョー。
そしておしとやかで泣き虫のネル・・・。
彼らはそれぞれの事情を抱えつつ、少年時代を共に過ごす。
そして成長したヴァ―ノンは、美しく成長したネルと婚約するが・・・。
ジェーンのオペラを見た瞬間から、ヴァ―ノンは突如音楽に目覚めてしまう。
そしてついに、安定した仕事も投げうってしまったのだ。
人が変わったように音楽に打ち込み、ジェーンに惹かれていくヴァ―ノンに、戸惑い不安になるネル・・・。
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一方セバスチャンは、ビジネスで大成功をおさめながらも、ジョーへの想いは叶えられない。
しかしジョーは、セバスチャンの気持ちはそっちのけ。
反逆者の精神で、ならず者の男ばかりを追いかけて破滅してしまう。
そんな中始まった戦争。
幼い時からの友人4人は、否応なく巻き込まれてしまう・・・。
そしてついに届いた悲報。
「ヴァ―ノンは戦死・・・」
4人の人生と恋はどうなってしまうのか?
そしてヴァ―ノンの音楽の才能は花開くのか?
愛と芸術、天才とは何なのか?
クリスティが送る、一大長編。
アガサクリスティ「愛の旋律」感想(ネタバレ注意)
クリスティらしく、人物の(特に女性の)心理描写が細やかに書かれている。
「愛の旋律」主題は「ヴァ―ノンを中心とした2人の女性(ネル・ジェーン)」だ。
天才ヴァ―ノンを愛した2人の苦悩が、「愛の旋律」の主題かもしれない。
詳しくみていこう。
天才と愛し合うのは難しい?
クリスティは「愛の旋律」で、これを書いているように思う。
「天才と愛し合う(結婚する)ということ」の難しさ
ヴァ―ノンは天才だが、音楽にすべてを賭けており、他の事は全く頓着しない。
そしてこう信じ切っている。
そこがネルを不安にさせるんやけどな・・・。
じゃあネルも、ヴァ―ノンを辞めればいいのに、そこまでの勇気がないときた。
古今東西を問わず、何かにすべてを賭けている男性と、安定した家庭を望む女性ほどうまくいかない愛はない。
天才ヴァ―ノンを支えることができたのは、同じくオペラの天才・ジェーンだ。
でもそんなジェーンにしたって、ヴァ―ノンの若く美しい婚約者・ネルへの嫉妬がすさまじい。
本当はジェーンも、一人の女性として幸せな結婚がしたかったんだろうな・・・と思わせてしまう。
ジェーンもヴァ―ノンと同じく、天才オペラ歌手だから、穏やかな幸せが叶わなかったのかもしれない。
幸せな結婚が出来なかったのは、ヴァ―ノンだけではないのだ。
天才と結婚するのは、ほんっと難しい。
ちなみに「愛の旋律」というタイトルだが、英語のタイトルはこれ。
「Giant’s Bread=巨人の糧」
天才を支え、愛するには、自分が糧を与えないといけない
・・・ってことなんかもしれへんなあ・・・。
だとしたら天才と付き合い、幸せにしてもらう事は無理なのかもしれない。
では次に、他の登場人物の抱える愛情をみていこう。
セバスチャンとジョー
恋愛はヴァ―ノンだけではなく、ヴァ―ノンの友人、セバスチャンとジョーにもある。
ジョーは、最初のうちはジェーンのように、自立心ある逞しい女性なのかと誰もが思う。
だが読み進めていくうちにこう思うだろう。
自分自身の芯がないのに、ただ慣例や習慣に反発しているだけの女性
いわゆる「ツッパってるだけの女性」だ。
そしてやはり、そんな女性お決まりのパターン「破滅的人生」を送る。
だがセバスチャンは、そんなジョーを終始見守る。
彼女のさせたいようにさせ、特に干渉もしないが、本当に困ったときは手をさしのべてやる。
このセバスチャンという人物は、この物語で唯一ブレないし、取り乱すこともなく行動してくれる。
彼の存在が無ければ「愛の旋律」は相当キツイ。
ちなみにセバスチャンは、ジョーだけでなく、ジェーンにも寛容に接しているし、ヴァ―ノンに対しても非常に愛ある対応をしている。
その中でもヴァ―ノンに対する愛は深い。
ラストまで読んで、また最初のプロローグを読めばハッとするだろう。
セバスチャンの愛はこう思うで「『愛の旋律』中、愛はここにだけあった」。
アガサクリスティ「愛の旋律」 まとめ
ネコ缶評価
ヴァ―ノン=天才という感じがあまりしなくて、ただの依存心の強いダメ男にしか見えなかったのが残念。
前半のヴァ―ノン幼少期は、もう少し削っても良かったかも。
とはいえ登場人物は個性が豊かで、細かな心理描写もさすがクリスティ。
次回作に期待!
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