アガサクリスティは、ミステリーだけでなく、メアリ・ウエストマコット名義で恋愛小説を書いている。
この6冊がそうだ。
- 愛の旋律
- 未完の肖像
- 春にして君を離れ
- 暗い抱擁
- 娘は娘
- 愛の重さ
今回ご紹介する「未完の肖像」も、そんなクリスティの恋愛ものの1冊。
シーリアという女性を主人公に、幼いころから家庭を持った後までの、一大スペクタクル小説になっている。
ちなみに「愛の旋律」も似たような構成やで
内容が「クリスティ自身の自伝?」と言われているこの作品を、詳しくみていこう。
Contents
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「未完の肖像」あらすじ
内気で想像力豊かなシーリアは、愛情深い母親のもと、何不自由ない子供時代を過ごしていた。
父親が死んだ後は、貧しい生活を強いられるが、それでも母親とけなげに過ごすシーリア。
やがて美しく成長したシーリアには、求婚してくる男性が幾人か現れる。
その中でシーリアがどうしようもなく惹かれたのは、ちょっと強引ところがある軍人ダーモット。
2人は急速に惹かれあい、電撃的に結婚した。
戦時中ではあったが、楽しく暮らす2人。
やがて女の子・ジュディーも生まれ、2人の生活は盤石なものになったかに見えた。
だが強引で超現実的なダーモットと、内気で空想しがちなシーモアは最初から価値観が違い過ぎた。
そして娘のジュディーも、ダーモットにそっくりで、母のシーモアとは全く気が合わない。
次第に夫婦・母娘はすれ違いはじめ、頼りにしていた母の死で、一気にシーモアはバランスを崩してしまう・・・・。
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「未完の肖像」感想
クリスティの人生を知っている人は、すぐこのことに気づくのではないだろうか。
アマゾン、読書メーターの感想でも、そう言う人は多かった。
ネコ缶も言われてみれば・・・と気づいたので、どのあたりが似ているのか、サラッと紹介していこう!
「未完の肖像見どころ」1 シーリアはクリスティ自身?
クリスティとシーリアは、この辺りが似ている。
- 育った環境が酷似
- 母親の死と失踪
- 夫の気質と破局ここにテキストを入力
ひも解いていこう
クリスティはシーリア①
父親や兄弟とそこまで親密ではなく、もっぱら母親と親しかった事。
母親が学校へ行かせず、直接勉強を教えた事、スペルミスがとても多かったこと。
一家がフランスに行った際に、ちょこっと芸術を教える学校に通ったこと・・・・。
この辺りシーリアとクリスティ、ほとんど同じなのだ。
そしてシーリアは、裕福な子供時代を過ごしていた。
しかし父親が死んでからは、思ったよりお金が残っておらず、貧しい暮らしを強いられる。
弁護士たちは今になって、わずかなお金しか残っていないと言い出したのだ。
「とても質素な生活をしなければならないでしょうよ・・」「未完の肖像」 P170
一方クリスティ家は、父親が亡くなってから、なんと破産するのだ。
クリスティはシーリア②
シーリアは母親と、とても仲良しだった。
そんな頼りにしていた母が死んだとき、シーリアはバランスを崩す。
母親がいなくなったのだ・・・
シーリアの世界の根底が崩れた・・・
「未完の肖像」P455
これ、クリスティも全く同じ。
母親が亡くなった後クリスティは失踪してるし、シーリアも精神的に不安定になり、家を抜け出してる。
クリスティも、そうやったのかもしれへんな。
お母さんの死が引き金になって、失踪したのかもな・・・。
クリスティはシーリア③
とどめはクリスティの夫(最初の)アーチボルトと、シーリアの夫ダーモットが酷似してること。
で、シーリアもクリスティも、そんな夫と離婚。
ダーモットは離婚後に愛人と結婚しているが、クリスティの元夫・アーチボルトも、離婚後に愛人と結婚した。
また、ダーモットはゴルフが大好き。
シーリアよりも、週末は友達とゴルフに行くようになってしまう。
(シーリアはゴルフあんまり好きじゃなかった)
やがてダーモットは、もっぱらゴルフを楽しみにするようになった。
(略)一か月後にはダルトン・ヒースの会員になるつもりだと言った。「未完の肖像」P401~403
「またかいな」と思うけど、アーチボルトもゴルフ好きで、クリスティはゴルフをしなかったとか・・・・。
これはもう、ロマンチックな恋愛小説というより、やっぱクリスティの自伝やな!
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「未完の肖像」まとめ
ネコ缶評価
クリスティの自伝と考えると興味深いものがあるが、一つの恋愛小説としてとらえると・・・・
どうも共感できないところが多い。
違うからこそ惹かれるのは解る。
ダーモットが、子供っぽいワガママさのある、ひどい奴という事も解る。
でももう少し、シーリアも自分の世界をもっとしっかり持って、楽しく過ごしたら良かったのにな~と思うのだ。
クリスティの自伝を、面白く読みたい人におススメかな。
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