沢山愛したら、相手の重荷になる・・・・。
これは古今東西よく言われることだ。
源氏物語の六条の御息所が光源氏を愛しすぎて、生霊になってしまったことも有名。
21世紀の今にしたって、こうした手合いの事は、男女に限らず親子の間柄でもよくある。
今回、その究極のテーマを取り上げたのがこれ。
「愛の重さ」
親子ではなく、姉妹という間柄で起こる愛。
そして男女、夫婦・・・。
愛しすぎて、バランスを崩した人たちの作品をみていこう!
Contents
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「愛の重さ」 あらすじ
ローラは、両親にあまりかわいがられていない娘だった。
両親の関心は、明るくて活発な兄のチャールズだけに向いており、大人しくて内向的なローラを持て余し気味・・・。
そんなある日、チャールズは幼くして病気で死んでしまう。
そこでローラは考えた。
ところがローラの願望は打ち砕かれた。
しばらくすると、妹のシャーリーが誕生したのだ。
密かに妹の死を願うローラ。
だがある日、家が火事になったとき、ローラは命がけでシャーリーを救う。
そこからローラは、シャーリーを心から愛し、かわいがるようになったのだ。
火事から3年後、両親が事故死してからは、まるで母親のように自分の人生を後回しにしてシャーリーの面倒を見るローラ・・・。
姉妹が大人になった会う日、シャーリーの目の前に、一人の魅力的な男性・ヘンリーが現れた。
どう見ても信用できないこの男に、シャーリーは強く惹かれてしまい、結婚する。
それはシャーリーの悲劇の始まりになった・・・。
ローラとシャーリーを通して、見えてくる愛とは何なのか?
人を幸せにする愛とは何なのか?
メアリ・ウエストマコット最後の作品!
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「愛の重さ」 感想
物語は4部構成になっている。
1部 ローラから見た話
2部 シャーリーから見た話
3部 ルウェリンから見た話
4部 まとめ
1部から2部までは一気に読める。
解りやすく、スピード感ある展開で、ローラとシャーリーの人柄や周りの人たちの事もよくわかる。
ところが3部から話は一気に変わる。
今まで、全く出てこなかった人物の視点に変わるのだ。
そして4部で、広がった話の総まとめ・・・みたいになっている。
話の展開が解ったところで、詳しく中身をみていこう。
「愛の重さ」 貫かれるテーマ
途中で違う話になったのかと思う位、話の流れが途中で変化しているが、貫かれているのはこれではないかとネコ缶は思う。
「愛の重さ」のテーマは、「本当の愛は、重いとは感じない」ということ。
そしてそれが出来る人は、愛された経験があり、自分の人生がしっかり充実していることが大前提だ。
本当の愛は絶対に重くない。
むしろ相手に負担をかけへんよな。
で、自分の人生が空っぽだと、必要以上に相手の人生に関係しようとすんねん。
今でもよくあるよな。
賢明で、シャーリーに多大な犠牲を払ってくれているローラ(と、2番目の夫リチャード)に愛されていながら
・・・・シャーリーはなぜか病んでいく。
やはりその愛は、シャーリーにとって重荷だったのではないか。
ローラはまず自分の人生を、何とかするべきだったのだと思う。
自分が一方的に犠牲になる愛情は、絶対に相手を苦しめる。
(親子であっても、男女であっても)
相手に多大な犠牲を払わせて苦しまない人は、自己評価の低い人・何らかの憎しみを持った人であろう。
考えるとすぐわかる。
というのが最高だ。
私はあなたの幸せのために、すべて捨てます
というのは、やっぱり苦しくなってくる。
これが「相手に対しての重荷になる愛」なのではないか。
そしてそれが出来るのは、本当に誰かに愛されたことのある人だ。
ラスト、とても示唆に富んだ一文が出てくる
突然、ほとんど無意識に彼女の肩は心持ち下がった。
あたかも荷が、ごく軽いながらも一つの荷が、今その方の上にそっと置かれたように。
生まれて初めて、ローラ・フランクリンは愛の荷の重さの意味を理解したのだった。
「愛の重さ」P407
肩にそっと置かれているような重さ。
決して人をつぶしたりしない。
それが本当の「愛の重さ」なのではないだろうか。
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「愛の重さ」
ネコ缶評価
ルウェリンとローラの出会いが、あまりに神がかり過ぎてちょっとうーん。
「伝道師」だから仕方ないのかな・・・。
重くなりがちな話だけど、唯一の救いはボールドックの存在。
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