物語の登場人物は、年を取らないのが普通だ。
カツオ君はいつまでも小学生だし、のび太君は50年前からジャイアンにいじめられている。
クレヨンしんちゃんも、中学生になる気配は一向にない。
でもアガサクリスティの人気者夫婦、トニー&タペンスは確実に年を取っている。
1922年に「秘密機関」でデビューしたとき、この2人は20歳そこそこだった。
でも1941年「NかMか」では中年夫婦になっており、今回ご紹介する「運命の裏木戸」(1973年)では70歳を過ぎているのだ。
そんなトニタぺが老夫婦になったときの物語、シリーズの最終回をみていこう。
Contents
アガサクリスティ(トミー&タペンス)「運命の裏木戸」あらすじ

元気にスパイ活動をしていたトニーとタペンスももう70過ぎ。
静かに余生を暮らそうと、田舎の家に引っ越してきた。
そこで、前に住んでいた人が残していった本に、書かれたメッセージを見たタペンスは驚く。
これを書いたのは、アレクザンダー・パーキンソンという少年。
だがその少年はもう死んでいるし、この事件(?)が一体いつ起こったのかもわからない。
のんびり余生を送ろうと思っていたタペンス。
だが、このことを知り、俄然やる気が出る。
片っ端からいろいろな人に聞き込みをし、情報を仕入れるが、どうやら何者かがタペンスの命を狙っているらしい・・・。
オシドリ夫婦のトニタぺシリーズの完結編!
アガサクリスティ(トミー&タペンス)「運命の裏木戸」感想

超マニア向けの作品。
これまでのトニタぺ作品を読んだ人にしかわからないエピソードが満載で、マニアをにやりとさせてくれる作品なのだ。
「象は忘れない」とか、クリスティの最晩年作品には多いな
でもミステリー&サスペンスとしては今一つかも
出だしは良い。
引っ越してきた家で、意味深長なメッセージが本から見つかる。
そしていつものように、いろいろ嗅ぎまわるタペンスを、誰かが狙う・・・。
・・・んやけど、いつまでたっても何も起こらないし、登場人物が増えるだけでまとまりがない。
ラストも解決したのかどうなのか、よくわからないまま大団円的な終わりになる。
でも「親指のうずき」は、とてもよくできていた。
なので、ネコ缶はこう思う
・「運命の裏木戸」は、トニタぺ(と、アルバート)の会話を楽しむために読むこと
・今まで出てきたキャラや作品がチョコチョコでてくるので、それを楽しみにのんびり読むこと
「運命の裏木戸」のポイントをみていこう
「運命の裏木戸」楽しむポイント1 「秘密機関」を懐かしむ

トニタぺが結婚する前に、「青年冒険家商会」なるものを作っていた。
「青年冒険家商会」とは?詳しくはこちら
そこを懐かしんでいるくだりが、何か所かある。
「時はめぐりめぐってか、昔、2人でジェーン・フィン事件を調べたりしたものだったね」
と、トミーは言った。「運命の裏木戸」P73
「(略)私たちが冒険していたころ、謎のブラウン氏を追い回していたころに?」
「(略)それはもう昔々の話よ、トミー。
私たち、自分の事を『青年冒険家商会』なんて呼んでいたわね」「運命の裏木戸」P164
きっとクリスティ自身も、「秘密機関」を書いていた若い頃を、懐かしんでいるんやろうな~って思わせるよな!
「運命の裏木戸」楽しむポイント2 「NかMか」を懐かしむ

「秘密機関」のくだりは、2~3か所で触れていた。
だがなんといっても、たくさん触れていたのは「NかMか」だ。
ネコ缶が調べただけでも10か所あった。
「無憂荘を突然訪れてみた日のことは忘れられんな(略)ブレッキンソップ夫人とかに、なりすましていたんだからね」
「運命の裏木戸」P137
「あの人は昔から、つい深入りするほうだからな。
「NかMか」の時も、土壇場で危うく命拾いしたことがあったじゃないか」「運命の裏木戸」P155
「奥さんの事なら聞いてますよ。
「MかNか」じゃありませんでしたかね?いや、「NかMか」だったかな?「運命の裏木戸」P197
こんな感じで作品タイトルの「NかMか」がバンバン出てくる。
こんなに広く知られていていいのやろうか・・(笑)
それ以外にもこんな事も書いてある
「奥さんはこの前の戦争の時、スパイだか何だかを捕まえた人じゃないですか?(略)
童謡と関係のあることで」「その通りよ。があがあガチョウさん、っていうのだったわ。
「運命の裏木戸」P324
このエピソードは、ごく限られた人しか知らないはず。
知ってる人(子供)がいるのって結構すごいな。
「運命の裏木戸」楽しむポイント3 養女ベティを偲ぶ

「NかMか」で、トニタぺが養女にした女の子がいた。
その子がどうなったかを、気にしている人も多いだろう。
「運命の裏木戸」は、その子の事もちゃんと書いてあった。
「養女のベティだが、あの娘は東アフリカに行ったんだろう。頼りはあるかい?」
「ええ、調査に夢中になっているわ。
アフリカ人の家庭にくちばしを突っ込んだり、それについて論文をまとめたりするのに」「運命の裏木戸」P132
「ベティの事ですか?
ええ、大学で立派な成績をおさめて、今はアフリカで現地人の生活をーなんだかそんなことを調査していますの。」「運命の裏木戸」P466
あのベティ、一体何の仕事してるんやろうなあ・・。
出来れば子育てしてるトニタぺを見たかったな!
アガサクリスティ(トミー&タペンス)「運命の裏木戸」まとめ

ネコ缶評価
「運命の裏木戸」は、トニタぺファンの人が、その後の彼らを知るのにお勧めな作品だ。
ちなみにこの後出版された「カーテン」と「スリーピング・マーダー」でクリスティは亡くなる。
でもこの2冊は、クリスティが若い頃書いて、寝かせておいた作品。
トミー&タペンスを詳しく知りたい方はこちら⇒トミタぺの順番とおススメの1冊はこれ!
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