アガサクリスティ

アガサクリスティ(短編)「ヘラクレスの冒険」あらすじ、感想、ネタバレまとめ

今更だが、ポアロのファーストネームは「エルキュール」だ。

つづりはこう書く

⇒Hercule

これを英語読みすると、なんと「ヘラクレス」になるのだ。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
つづりは「Hercules」な。
フランス語はHを発音せーへんから、「エルキュール」になるんやろうな。 

そんな‟トリビア”な名前と、ヘラクレスの神話(エウリュステウスがヘラクレスに命じた12の難題の解決)を掛け合わせたタイトルをもつ作品が、今回ご紹介するこちら

「ヘラクレスの冒険」

ヘラクレスの冒険
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ヘラクレスよろしく、ポアロが12の難題解決にあたっていくのだ。

早速みていこう!

アガサクリスティ「ヘラクレスの冒険」 あらすじ&感想

「ヘラクレスの冒険」は、この12の作品からできている

  • ※ことの起こり
  • ネメアのライオン
  • ★★レルネーのヒドラ
  • ★アルカディアの鹿
  • エルマントスのイノシシ
  • ★アウゲイアス王の大牛舎
  • ★スチュムパロスの鳥
  • クレタ島の雄牛
  • ★ディオメーデスの馬
  • ヒッポリュテの帯
  • ★ゲリュオンの牛たち
  • ヘルぺリスたちのリンゴ
  • ケルベロスの捕獲

※★はネコ缶の好きな話
※「ことの起こり」は、ポアロがなぜ、12の難題を解決しようと思うに至ったかが書かれたもの。
内容は省きました。

ヘラクレスって、ゼウスとアルクメネの間にできた子なんやけど・・・まあ解りやすく言ったらダブル不倫の子。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
でもってヘラクレスの正妻・ヘラにメチャクチャ嫌われて、いじめ抜かれるんやなあ~、これが。

興味のある方は、これを機にヘラクレスを調べてみてもいいかもしれへん。

じゃあ話みていこか!

「ヘラクレスの冒険」 ネメアのライオン

ポアロは、サー・ジョゼフ・ホギーから事件の依頼を受けた。

早速行ってみると、なんとその内容はこれ

「飼い犬を誘拐した犯人を捜してほしい」

ちょうどそのころ、サー・ジョゼフ・ホギン氏の友人、サムエルソンの処でも、同じような手口で飼い犬が誘拐されており・・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
ドラマ「相棒」の、右京さんが押し付けてられそうな案件(笑)

ヘラクレス12の難題を受けるという、大義名分があるとはいえ、ポアロが受けてることに苦笑い。

動物の誘拐事件とはいえ、結構話はしっかりしてる。
ここの登場人物をよく覚えておこう!後から出てくるで~

相棒ってこれやで!↓

「ヘラクレスの冒険」 レルネーのヒドラ

オールドフィールドがポアロの処に相談に来た。

妻が病死してから、「妻殺し」の噂をされて困ってるとのことなのだ。

ネルラ―の首のように、切っても切っても後から出てくる「噂話」。

・・・だが、その噂は本当に「噂」なのだろうか?

ポアロは聞き込みを始めるが、真相はいかに?

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
人間心理に長けたクリスティらしい話。
女性のコワさを丁寧に書いている。

噂話はミス・マープルが得意そうな案件だが、彼女はこちらで活躍している。

「動く指」詳しくはこちら

「ヘラクレスの冒険」 アルカディアの鹿

ポアロが車の故障で立ち寄ったブラックスワン館。
彼はそこで、アルカディアの羊飼いのような美青年・テッドと会った。

彼はポアロにこんな相談をする

「若い女性を探してほしい」

近くの別荘に来た、ロシアのバレリーナのメイド・ニータと恋に落ちたテッド。

2週間後に来ると約束したのに、彼女は来なかったというのだ。

ポアロは、悲しむテッドの依頼をうけ、ヨーロッパじゅうを探すが・・・。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
とても綺麗な物語。
ラストの淡々とした会話は「ナイルに死す」のラストに近い。

ポアロの深さが解ってグッとくる。

「ヘラクレスの冒険」 エルマントスのイノシシ

ケーブルカーに乗り込み、レ・サヴィヌへ向かったポアロ。
その途中、こんな手紙をもらう。

「サリー事件のマラスコーが、その一味とロシェ・ネージュで落ち合うらしい。
出来れば、そのマラスコーを生け捕りにしてほしい

サリー事件はポアロもよく知っており、犯人のマラスコーは有名な犯罪者だった。

しかしなぜ、こんな雪山に彼が来るのだろうか?

いぶかしみつつも、手紙の通りにしようと決心するポアロ。

だがポアロは泊まったホテルで、3人の暴漢に襲われて・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
雪深い山荘と犯罪、そして通信手段を断たれるという設定は、ミステリーの定番中の定番。

この短編でも、きっちり基本(?)を抑えている。

内容はサスペンス、最後にあっとおどろくどんでん返し

「ヘラクレスの冒険」 アウゲイアス王の大牛舎

ポアロの元に、サー・ジョージ・コンウェイ内務大臣と、エドワード・フェリア首相が訪れ、こんなことを言った。

「前首相ジョン・ハメットが、地位を利用して巨万の富を蓄えたことを、ゴシップ雑誌に掲載されそうだ」

そしてそれは事実でもあるので、なんとかしてもみ消してほしいとのこと。

ポアロがとった驚きの秘策とは?

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
もしかしたら、クリスティ流の皮肉なのかもしれへんが、事実なんかいっ!と突っ込んでしまいたくなる。

解決の仕方は、人間心理をよくわかってるポアロ(クリスティ)らしい。

日本の政治家も、ポアロに頼みたい人は多いやろうなあ。

「ヘラクレスの冒険」 スチュムパロスの鳥

ハロルド・ウェアリングは休暇を取っていた。

そこで1組の母娘と出会い、長い休暇の間で親しくなり、こんな話を聞く。

娘のエルジーは、暴力的な夫から逃げ出してここにいるのだという。

同情し、ますますエルジーと親しくなるハロルド。

そんなある日、エルジーの夫がここまで追いかけてくるという事が起こる。

エルジーを自分の部屋にかくまったハロルドだが、エルジーがなんと思い余って夫を殺してしまい・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
昼メロのような展開。

でも男女ネタで考えると、不偏と言える真実が書かれている。

関係ないが、不気味な鳥を思わせる女性は、楠〇絵里子がどうしても脳裏によぎる

「ヘラクレスの冒険」 クレタ島の雄牛

ポアロの元に若い女性・ダイアナが訪ねてきた。
彼女は真剣な顔でこういった。

「婚約した相手・ヒューが急に婚約破棄を言い出してきたのです。
彼は自分が狂ってしまったからだと・・」

ダイアナは、もちろんそんなことを信じていない。
そしてなんとかしてほしいと懇願する。

早速ヒューの元に行ってみたポアロ。

すると彼の周りで、夜中に羊が惨殺されるという事件があり・・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「ひでェ奴やなあ、オイ」と言いたくなるような人物が続出。

とりあえずヒューが何ともなくて良かったけど、ラストはちょっと後味ワルイ

「ヘラクレスの冒険」 ディオメーデスの馬

マイケル・スタンダート医師から緊急連絡があり、駆け付けたポアロ。

そこは怪しげなパーティが行われていた現場で、コカインが使われていた形跡もあった。

そこにいた若い娘、シーラ・グラントが、世間の目にさらされないようにしてほしいとの依頼だった。

マイケル医師の依頼を受けたポアロ。

さっそくシーラ・グラントの家に行ってみると・・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
遺産相続や宝石泥棒がメインの、クリスティ作品の中では珍しい麻薬ネタの作品。

もしかしたら当時(1947年)イギリスでは蔓延していたのかもしれない。

シーラ・グラントの境遇にぎょっとするが、実際にあったのかもと思うと怖い。

「ヘラクレスの冒険」 ヒッポリュテの帯

ウィニーは、ミス・ポープ学院に入学するために列車でパリへと向かった。

だがパリに到着する直前、彼女が行方不明になっていることが解る。

誘拐か?失踪か?

この時期に、ルーベンスの絵画が盗まれていたことと、何か関係があるのだろうか?

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「鳩の中の猫」を思い出させるミス・ポープ。
個人的にルーベンスの未発表の作品なら、私も見てみたいものだと思う。

ラスト、女学生にもみくちゃにされるポアロはかわいい

「鳩の中の猫」詳しくはこちら

「ヘラクレスの冒険」 ゲリュオンの牛たち

ミス・カーナビィはポアロの処にこんな相談をもちかけた。

「友人が怪しげな宗教・羊飼いの信徒に入ってる。
ハマってしまった友人は、自分が死んだら遺産をそこに残すとまで言ってる」

実はそんな女性は珍しくなく、他にも3人が財産を教団に残し、立て続けに死んでいるという。

怪しんだポアロは、ミス・カーナビィを「羊飼いの信徒」に、偵察のために入会させるが・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
前半部分を読んで「おや」と思うだろう。

第1話に出てきたミス・カーナビィがまた登場するのだ。

同じ本の中で、2回出るゲストは珍しい。
やりやすいキャラだったのか。
クリスティの薬学の知識が炸裂した作品。

「ヘラクレスの冒険」 ヘルぺリスたちのリンゴ

エマリー・パワーという美術蒐集家がポアロの元に来てこう言った。

「ボルジア家の、金の酒杯を取り戻してもらいたい」

3万ポンドで競り落とした金の酒杯が、エマリーの手に入る前に盗まれてしまったのだ。

その酒杯でふるまわれた酒を飲んだ人間は、死んだといういわくありげな酒杯。

ポアロは取り戻すことができるのか?

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
最初が少々ややこしい。
シンプルに盗難事件にしてほしいと思うが、最後とリンクしているので丁寧に読んでおこう。

ボルジア家に興味を持っているネコ缶。そんな酒杯があるなら見てみたいものだと思う

ボルジア家って?という方はこちらをどうぞ。
ネコ缶おすすめ

チューザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷
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「ヘラクレスの冒険」 ケルベロスの捕獲

ポアロが崇拝し、愛する女性・ヴェラ・ロサコフ夫人。

彼女と偶然再会したポアロは、彼女が経営するというバー「地獄」へ行ってみる。

贅を尽くしたつくりで大繁盛している「地獄」。

だがそこでは麻薬の密売がなされていると聞き、悩むポアロ。

愛するロサコフ夫人が、密売にかかわっているのだろうか?

だが「地獄」にジャップ刑事の一斉捜査が入ることになり・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
映画のように始まる出だし。

出来ればこのまま、ポアロのラブストーリーになってほしかった。
(名探偵には憧れの女性がつきものやな。アイリーン・アドラーとか。)

しかしこの話の展開は、もう今と同じ。
ポアロも満員電車に揺られてるし、麻薬の密売がバーで行われてるしな。

ヴェラ・ロサコフ夫人が登場したのはこの作品
⇒「ビッグ4」詳しくはこちら

「ヘラクレスの冒険」 まとめ

ヘラクレスの冒険
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ネコ缶評価

ポアロの短編は「ポアロ登場」もあるが、それよりは本格的な内容になっている。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
この2冊の間には、25年の月日が流れてるしな。
ポアロを取り巻く状況も、大分変わってるな。

ヘイスティングズは残念ながら登場せーへんけど、ジャップは出てくれるで!

「ポアロ登場」詳しくはこちら

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