ホテル暮らし・・・と聞くと、あなたは何を思い浮かべるだろう。
などと思い浮かべるだろうか。
今回ご紹介する「鍵のかかった男」は、そんな人もうらやむホテル暮らしをしていた男が主人公。
だが、彼は殺されてしまうのだ!
多額の貯金はあったものの、不思議なことに犯人はそれに一切手を付けていない。
そして何より、彼の過去やホテル暮らしの理由を誰も知らない・・・。
詳しくみていこう!
Contents
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「鍵のかかった男」 あらすじ
作家業界の大御所・影浦浪子から「相談がある」と持ち掛けられたアリス。
何事かといぶかしみつつ、聞いてみるとこんな内容だった。
彼はそのホテルに5年暮らしており、私が大阪に行ったときに、よくご一緒しました。
警察は自殺で処理したが、私には彼がどうしても自殺をするとは思えないのです!
火村さんという人と一緒に、真相を調べてもらえないでしょうか?
その上、この梨田と言う人物、一体何者なのかも、皆目わからないというのだ。
5年間もホテル暮らしをしているから裕福で、家族は当然いない。
だが友人や知り合いも、全く訪ねてこないとのこと。
影浦浪子は、そういった謎めいた所にも興味を持ち、事件の真相と一緒に梨田の身の上も調べて欲しいという。
大先輩の頼みを断り切れなかったアリス。
だが火村は入試の時期で、一緒の行動は期待できない。
アリスは単独で銀星ホテルに乗り込み、捜査を開始するが、なんと梨田は死ぬ前に強力な睡眠薬を飲んでいたことが判明。
そのうえ過去に、犯罪歴もあることが解る。
徐々に明らかになっていく梨田の人となり。
アリスは真相にたどり着くことができるのか?
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「鍵のかかった男」 感想
面白かった。
梨田という、「過去に鍵かかかったような男の過去」が徐々に明らかになっていくことと、「梨田殺しの真相はいかに?」の2本立てで話が進んでいく。
この2点に注目して紹介していこう。
「鍵のかかった男」 見どころ 梨田稔を取り巻く環境と過去
話の8割は、この梨田という人間解明に割かれている。
正直言って、「梨田ナニモン?」だけでも十分面白く、ミステリー度も強い。
なのでネコ缶みたいなミステリーマニアは、これだけでも満足できるだろう。
今回は「梨田ナニモン?」を、アリスが孤軍奮闘で解明していくのだが、ターニングポイントが3つある。
この3つが分岐点となり、まさしく「固く差し込まれた鍵が、ゆっくりと回り始める」のだ。
途中で「阪神淡路大震災」などもポイントで出てくるが、この災害もうまく使っていると思う。
「鍵のかかった男」 見どころ 殺害トリック
こちらは後半、火村がアリスに加担してから一気に進みだす。
推理ポイントをまとめておこう。
まずはホテルの従業員と客だ。
外部からの侵入は考えられないため、必然的にこの中の誰かが犯人という事になる。
だが梨田に恨みを持つような程、深いかかわりを持つような人はいない・・・。
そして死亡状況はこれ。
ここで大事なのはやっぱり「睡眠薬」の存在。
自殺する人間が、睡眠薬を飲んで「首を吊る」のか?
しかも包みはどこにやった?
犯人の見当は、全くつかないまま物語は進んでいく。
が、火村が加担してから、床とズボンに付いていたチョコレートのシミを発見。
ここから一気に真相に進むのだ。
今ブログを読まれているみなさんは、今のうちから考えておこな!
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「鍵のかかった男」 まとめ
ネコ缶評価
満点あげても良かった。
数少ない作家アリスシリーズ長編の中でも群を抜いて面白い。
だがネコ缶の心配通り、犯人の殺害動機がちょっと納得できなかった。
とはいえ、梨田氏の過去が徐々に解っていく展開はとても良かった。
そして梨田が、銀星ホテルに住み込んでいたかの理由が判明したときは感動もの。
読んでも損はなし!