前回、珠玉のミステリーを見つけたと書いた。
今回はその待望の続編である。
前回同様、謎が謎を呼ぶ上々のミステリ-。
読めば読むほど引き込まれていくだろう。
そして今回も「メインテーマは殺人」同様、元デカ・ホーソーンが有能さを見せつけつつ、好き勝ってにふるまい、ストーリーにユーモアを添えてくれる。
早速詳しい内容を見ていこう。
Contents
アンソニー・ホロヴィッツ「その裁きは死」あらすじ

離婚専門の弁護士、リチャード・プライスが何者かにワインボトルで殴り殺された。
そして現場の壁には、ペンキで「182」の文字が・・・。
早速捜査に乗り出した、ホーソーンとアンソニー・ホロヴィッツ。
事件の何日か前に、依頼人の元妻、アキラ・アンノがレストランで彼にこんな暴言を吐いていた。
しかもこのセリフ、ワインを彼の頭にかけながらの発言・・・。
これは事件と関係してるのだろうか?
さらに聞き込みを進めていくと、リチャード・プライスは10年前に洞窟事故を起こしていた。
おまけにリチャードは、担当した依頼人の、不正疑惑を突き止めようともしていた・・・・。
これらの事は、リチャードが殺されたことと何か関係があるのだろうか?
そして事件の前日、洞窟事故があった日に、一緒に探検に行った仲間が、列車事故で死亡していた・・・。
次々を浮かび上がる疑惑。
増える一方の容疑者たち
犯人は一体誰なのか?
そしてますます深まるホーソーンという人物の謎・・・。
アンソニー・ホロヴィッツの奮闘がまた始まる。
アンソニー・ホロヴィッツ「その裁きは死」感想

今回も前回同様、本格的なミステリーで大満足だった。
本格ものが好きな人であれば、絶対に満足できる内容だ。
見所をご紹介していこう!
みどころ1 見事な謎の設定&3段どんでん返し

読み始めるとわかるのだが、まさしくこれ。
読めば読むほど謎が深まっていく
徐々に増えていく登場人物(容疑者)
次々に明るみに出る疑惑
掘り返されていく過去の事件
そしてまた1つ「死」が増える・・・・・
でもアンソニー・ホロヴィッツは、これが芸術的なまでにうまい。
犯人は当然登場人物の中にいるのだが、最後の最後まで皆目わからないだろう。
そして「その裁きは死」のラストは、見事な3段どんでん返しが来る。
でも、ちょっと当たり前すぎて、ものたりひんかな・・・。
・・・あれ?まだページあるけど・・・?
・・・あっ、あれはそういう理由やったんや!キーッ‼
読了後は、ちょっとボー然とすること請け合いだ。
「あれ」とは何かって?
大ヒント。リチャードが犯人らしき人物を、招き入れた時の妙な発言やで!
みどころ2 ホーソーンという人物の謎

前回から書いているが、結局この作品でも彼の正体はわからずじまい。
全くもって謎のままなのである。
今回、彼の新たなエピソードが加わったので、ご紹介していこう
障害がある子を使って、アンソニー・ホロヴィッツのことを調べている?
今回、難病で車いすに乗っているケヴィンという青年が出て来る。
しかもホーソーンは、彼にこんな言葉をかけている。
「ありがとう、ミスター・ホーソーン」
「こちらこそ、ケヴィン。あんたがいなけりゃさすがにこれは無理だったよ、相棒」
「その裁きは死」p80
ホーソーンは彼に何を頼んでいるのか?
あのホーソーンが、部屋に招き入れるくらい親しいのは何故なのか?
のちのち解るが、どうもケヴィンは、アンソニー・ホロヴィッツの事を、かなりあくどい方法で調べているようなのだ。
ホーソーンがアンソニー・ホロヴィッツの事を異様に知っているのは、この子のせいなのか?
この謎は、今回解けずじまいだった。ちぇ。
ホーソーン偽名疑惑
不思議そうにこちらを見ている男に、私は気が付いた(略)
だが、その男が目を止めたのはホーソーンの方だった。
「ビリー!(略)マイクだよ、マイク・カーライルだ。」
「その裁きは死」 p217
こんな感じで、ホーソーンがかつての同僚と偶然出会うシーンがある。
だがその男は、ホーソーンの事を「ビリー」と呼んでいるのだ。
ちなみにホーソーンは、ダニエル・ホーソーンと名乗っている。
ビリーと呼ばれる筋合いは全くないのだ。
こうなってくると名前までが怪しい。
これも今回謎はとけずじまい。
回を重ねるごとに謎が深まるヤツ、それがホーソーンなのである。
みどころ3 すでに感じるすさまじい構成力

こんなこと、マンガや小説で感じないだろうか
- 何気なく書いた作品が、思いのほか売れてしまい、思ってもみなかった続編を書くはめになってしまった
- 終わろうかと思っていたのに、好評で終われないから仕方なく話を引き延ばす・・・
これをやってしまうと、作者が苦しんで書いてる事がなんとなく解る。
そのうえ、話の無理なつじつま合わせも見えてしまうのだ。
クリスティがポアロを渋々書いていたのは有名な話やな。
綾辻行人さんの館シリーズもそう思う
アンソニー・ホロヴィッツは、ドラマの脚本家。
そのせいか、このシリーズは●作まで書くというところまで、きっちり決めた上で本を書いているのだ。
だから1作読み切りとはいえ、何かがつながっていくような楽しみがあるのだ。
事件はそのつど解決していくが、ホーソーンという人物の全容は明らかになっていない。
これはシリーズの最後に明らかになるんだろうな・・・という期待を持たせてくれる。
これはまるで、ドラマをみているような楽しみ。
作家兼脚本家が、本を書くとこんな面白さがあるのだと見せてくれた、アンソニー・ホロヴィッツ。
次の作品も期待大やな!
アンソニー・ホロヴィッツ「その裁きは死」 まとめ

ネコ缶評価
ハイレベルな作品。
緻密に組まれた謎、納得の動機、取りこぼしのない伏線。
もともとこの人、ホラーっ気は無いし、作品に関係のない恋愛沙汰を出さない。
幼児を悲惨な目にあわせもしない。
気になった作品以外の作家エピソードも、今回はぐぐっと減少。
という訳で★×10!
次の作品も楽しみやな!
アンソニー・ホロヴィッツの作品をもっと読みたい方はこちら
・奇妙な2人組はまだまだ行く!⇒「ダニエル・ホーソーン」シリーズはこちらから
・作中作で2度おいしい物語⇒「アティカス・ピュント」シリーズはこちらから
・コナン・ドイルが再び現れた?⇒「ホームズ」シリーズはこちらから