ミステリーに犯人が書いてなかったら・・・・あなたはどうするだろうか。
確かにミステリー小説は、ラストで名探偵なり名刑事がきっぱりこう言うのがセオリー。
・・・・だが今回ご紹介する「どちらかが彼女を殺した」は、犯人がどこにも書いていない作品なのだ。
そんなミステリーあるの?
・・・と言いたくなるだろうが、「どちらかが彼女を殺した」ではアリなのだ。
詳しくみていこう!
Contents
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「どちらかが彼女を殺した」 あらすじ

思いがけない出会いがあり、恋人ができた園子。
その男の名前は佃潤一。
画家を目指していた青年で、なかなかのイケメン。
そのうえ裕福な家の御曹司でもあった。
潤一の両親にも紹介してもらえ、幸福の絶頂にいた園子。
かねてからの約束通り、親友の佳世子に自慢の彼氏・潤一を紹介した。
だがその日から潤一の態度が一変する。
なんと潤一は、佳世子に心代わりをしてしまったのだ。
ショックを受けて取り乱す園子。
そしてしばらくたったある日、彼女はなんと死体で発見されてしまう。
第一発見者は、園子の兄の康正。
園子の電話の様子がおかしいことを心配し、マンションに訪ねてきたのだった。
警察官でもある康正は、一目で園子の死が自殺でないことを見抜く。
証拠品を隠し、捜査に来た刑事には妹は自殺だと言い、康正は自分で犯人を見つけて復讐しようと決心する。
康正の様子を見守りつつ、自らも自殺を疑い捜査に乗り出す加賀刑事・・・。
先に真犯人にたどり着くのは加賀か?康正か?
そして犯人は、元カレの潤一か?親友の佳世子か?
あなたは、加賀や康正と真犯人にたどり着けるだろうか?
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「どちらかが彼女を殺した」 感想

なんといっても「犯人は○○」と、どこにも記載されていないことが珍しい作品。
人によっては混乱するだろう。
ではどうやって犯人を暴くのか?
そこを詳しくみていこう。
「どちらかが彼女を殺した」見どころ1 とても珍しい構成
犯人の名前がどこにも記載されていないと書いたが、裏表紙に袋とじがついている。
そこに解説と推理の手引きがあるのだ。
この解説をしてくれるのは、ミステリー評論家の西上心太さん。
懇切丁寧に対話形式で解説してくれているのだ。
だが!
ここでもハッキリと「犯人は○○」とは書かれていない。
ここに書いてある解説を元に、じっくりメモを取りつつ考えれば解る・・・という事なのだ。
解決のヒントは「利き手」
園子は左利きだ。
容疑者の佳世子と潤一の利き手はどうなのか?
これが最大のカギだ。
注意して読もうな!
ネコ、文庫本で読んだけど、結局よくわからんままやった!
キーッ!
「どちらかが彼女を殺した」見どころ2 康正と恭一郎のバトル&友情

意外かもしれないが、「どちらかが彼女を殺した」の主役は康正だ。
妹思いの兄貴・康正は、単独で捜査を進めていくのだが、さすが専門家。
かなりハイスピードで真実に迫るのだ。
特に、現場の髪の毛の押収の仕方は本格的。
中盤の大きな展開の元になるんやけど、さすが警察官とうなる。
ダイニングキッチンの床からは、髪の毛十数本が見つかった・・・ビニール袋に入れた。
「どちらかが彼女を殺した」p55~56
その時コートの襟に、髪の毛が一本ついているのが目に留まった。
彼はさりげなく、それを指先で摘み取った
「どちらかが彼女を殺した」p118
髪の毛やほこりが、びっしりついた粘着紙が捨てられていた。
(略)康正はごみ箱に手を伸ばして粘着紙を取ると、素早くスラックスのポケットに入れた「どちらかが彼女を殺した」p153~154
一方、加賀も負けてはいない。
持ち前の冷静さと観察力で、園子は自殺ではないと早くから気づいている。
しかも康正が復讐しようと考えている事をも見破っているのだ。
そして加賀は犯人を追い込むだけでなく、康正をも追い込んでいく。
この康正と加賀刑事のせめぎあいが「どちらかが彼女を殺した」の最大の見どころや。
でもこの2人は、似たもの同士ではないかとネコ缶は思う。
2人とも曲がったことが嫌いな熱血漢。
だがその熱さを隠し、表面は冷静にふるまっている。
加賀にしても、康正の悔しくて悲しい気持ちはよく理解していただろう。
終盤、2人で飲むシーンにこんなエピソードがある
「和泉さん、あなたはすごい人だ。
あなたのとっさの判断力、推理力それから覚悟と執念には心から敬服します(略)
だけど復讐に使うべきではない。」
p267~268
この後、加賀は康正の正義感あふれるエピソードに触れ、店を出る。
「いい店でしょう。また御一緒できるといいのですが」
この言葉の裏には、過ちを犯さないでくれと言う願いが込められているようだった。
p269
加賀は本当に康正を尊敬し、復讐をやめさせようとしているのだ。
畑は違えども、同じ刑事で似た者同士。
こんな出会いでなければ、良いコンビになれたやろな!
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「どちらかが彼女を殺した」 まとめ

ネコ缶評価
本編の中で真犯人が語られないという、新鮮な1冊だった。
だが、ラストの第6章がかなりごちゃごちゃしていたのと、文庫本の難易度がかなり高いのがやはりマイナス。
ネコ缶のように、真犯人が結局よく解らないままの人も多かったのではないだろうか。
とはいえ、少ない登場人物の話を飽きさせることなく、ぐいぐい惹きつけてしまうパワーはさすが。
康正と加賀刑事のからみも、素晴らしかったし、映像で見たかったで!
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