年が明けてから長々と書いてきた、加賀恭一郎シリーズのラストは「祈りの幕が下りる時」や。
舞台演出家・浅居博美を通して、家族の絆が描かれている。

どの作品を読んでも、文句なしに面白い加賀恭一郎シリーズ。
ネコ缶命名・3部作もこれが最終回や(今のところ)。
新作が出てたような気がしたけど?
でもこれは、加賀のイトコ・松宮が主役。
スピンオフ企画みたいなもんなんやで
というわけで、加賀恭一郎シリーズのフィナーレをさっそくみていこう!
Contents
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「祈りの幕が下りる時」 あらすじ

仙台にフラリと表れた一人の女性。
ツテも何もなく、ほとんど着の身着のままのように飛び込んできたその女性はこう言った。
彼女の名前は、田島百合子。
幸い宮本康子という女性のスナックで拾ってもらえ、働き始めたが・・・
10年後、家族も作らず、多くを語らないまま死んでしまう。
遺骨の引き取り、家財道具など、どうしようと考えていた康子。
そんなとき、百合子が唯一親しくしていた、「ワタベ」という男性はこういった。
遺族の連絡先でも知っているのかと、ワタベに任せた康子。
しばらくして現れた「百合子の息子」は、なんと加賀恭一郎だった・・・!
この出来事から10年後・・・・。
東京のとあるアパートで、1人の女性の絞殺死体が見つかる。
彼女は、滋賀県のハウスクリーニング会社勤務の、押谷道子という中年女性だった。
滋賀の老人ホームに、ふらりとやってきた老女が、同級生の母親に似ているという事で、確認のために上京してきたとのこと。
だが上京後の道子の足取りが、なかなかつかめない。
唯一の手がかりは、押谷道子が死ぬ直前行っていた明治座。
老女の娘にちがいないと、舞台の演出家・浅居博美に会ったが、5分ほどで帰っている
この再会は、何か意味があったのだろうか?
そして無理やり連れ込まれた様子もなく、顔見知りでもない男のマンションでなぜ彼女が殺されていたのか?
滋賀、東京、仙台をかけて、封印されていた壮大で悲しい物語が動き出す・・・・。
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「祈りの幕が下りる時」 感想

すごい内容。
加賀恭一郎シリーズの(いったん)ラストを飾るだけある。
ミステリーとしての読み物だけではない。
これまで書かれてきた、加賀恭一郎の家族問題の決着もつけている。
そして加賀家以外の、浅居家の抱えた複雑な過去もからんでいるが、そちらの家族の闇も加賀恭一郎は暴いていくのや。
「祈りの幕が下りる時」のテーマは「親子の絆」だ。
特に浅居家の絆の強さは、涙無くしては読めない。
でも「祈りの幕が下りる時」は、母親からの物語になってるで!
「祈りの幕が下りるとき」は、時系列が少々解りにくいので、整理しながらみていこう。
「祈りの幕が下りる時」 加賀家のエピソード

1冊の本の中に、26年の加賀家の年月が入っているので、整理しながら見ていこう。
1・・百合子・失踪
恭一郎が12歳ころ。
家族・親族の中で孤立して、メンタルを病んだ百合子は失踪してしまう・・・。
↓10年後
2・・百合子、ワタベという男と深い仲になっている
あまりここでは出てこないが、この「ワタベ」っていう名前、絶対に覚えといてな!
超重要人物やで!
↓またまた6年後
3・・百合子、死亡
加賀恭一郎が遺骨や荷物の回収に登場。
28歳ころ。
もう警察官になってる。
母をよく知るという「ワタベ」に加賀は会いたがったが、見つからなかった。
だが「ワタベ」は、日本橋によく行っていたという事を恭一郎は知る
↓またまた10年後
4・・押谷道子殺人事件
ここからが「祈りの幕が下りる時」の物語本番。
加賀恭一郎、38歳くらいやな。
この事件をきっかけに、剣道の取材を通して、ちょっとだけ顔見知りだった、浅居博美と加賀恭一郎は徹底的に向き合っていくのだ・・・。
「祈りの幕が下りる時」は、加賀家と浅居家が複雑にリンクしている。
浅居家のいきさつは、どこまでも暗い展開だ(あまり書けないが)。
「罪の声」を思い出させる。
浅居家の結末は哀しいものなったが、むしろこれで良かったのかも・・・とすら思える。
なぜなら、どうしようもないくらい悲惨な家族の中に、確実な絆を見ることが出来たからだろう
そして加賀が暴いた浅居家の闇も、暴いたことが救いになるのだ。
ラストは涙なくしては読めないが、霧が晴れたような気がするで!
「新参者」からのつながり

「赤い指」で登場し、「麒麟の翼」でも出てた看護師の金森登紀子。
この女性がまたまた登場してくれる。
今回は捜査に協力もし、加賀恭一郎の仕事に対する真摯さに惹かれる場面もある。
加賀と相手のやり取りがあまりに緊迫したものだったので、途中で息苦しくなった。
この人はいつもこんな事をやり取りしているのかと思って加賀の横顔を伺い、恐ろしい人だと思うと同時に敬服した。
「祈りの幕が下りる時」p374
二人とも尊敬しあってるところがあるから、いいカップルになりそうやな!
この作品で、加賀恭一郎の過去の決着が着いた。
12作目からは、加賀恭一郎の家庭が描かれるかもな!
東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「祈りの幕が下りる時」 まとめ

ネコ缶評価
悲惨な話だが、家族の絆を徹底的に描いていて感動も深い。
ただ、「30年も前の同級生の親」など、見分けられるのだろうか?という疑問を少々感じる。
事件の発端の殺害方法も、少々無理があるのでは・・・
そこだけマイナスだが、それはささいな事だ。
ラストで、加賀も本庁に帰れるという事になる。
自分の家庭問題すべてが解決して、加賀も日本橋に来た甲斐があったやろう。
加賀恭一郎シリーズ、とりあえずは一段落。
次からはどんな展開になるか楽しみやな!
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