作家さんたちが目指す賞の、最高峰はなんといってもこれ
芥川賞&直木賞
毎年新聞にも載るし、ニュースにもなってるよな~。
直木賞は、毎年様々なジャンルの作品が受賞しているが、時々ミステリー小説が取ることがある。
その134回直木賞受賞ミステリーが、今回ご紹介するこちら
「容疑者Xの献身」
トリック&謎解きもいいのだが、それだけではもちろん終わらない。
ミステリーながら、深い愛情もたっぷり感じさせる内容なのだ。
早速見ていこう!
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「容疑者Xの献身」あらすじ
花岡靖子は持ち帰り弁当屋で働くシングルマザー。
働きながら、一人娘を懸命に育てている。
そこへ別れた(クズ)夫・富樫慎二がお金の無心をしに来た。
勤め先に迷惑をかけることをおそれ、とりあえず自宅に来てもらう事にした靖子。
だが案の定話はこじれ、ケンカになってしまう。
そこへ娘の美里も帰って来て、3人でもみあいのケンカとなり・・・
靖子と美里は、はずみで富樫を殺してしまう!
動転する母子の元に、玄関でこんな声がした。
物音がしたもので・・・
隣に住む、石神という高校の数学教師だった。
靖子の働く弁当屋の常連でもある。
何とかごまかそうとしたが、結局殺人がバレてしまった靖子。
警察に行こうとする靖子に、石神はこう言った。
でもそのつもりがないのなら、何かお手伝いできることがあるんじゃないかと思いまして
娘の美里だけは、警察から守りたい靖子。
迷った挙句、ついに石神の言葉にこう言った。
ここから石神主導の元、花岡母子の警察(湯川&草薙)との攻防戦が始まった・・・・。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「容疑者Xの献身」感想
ネコ缶、東野圭吾さんを読んだのは「容疑者Xの献身」が最初だ。
・・・あれから8年、読み返してみてもやっぱり面白い。
「容疑者Xの献身」の内容は「コロンボ式」。
つまり最初から犯人は解ってる。
それを名探偵や名刑事が、いかに追い詰めていくか・・・という流れや。
ただ「容疑者Xの献身」はトリックの妙だけではなく、大きな愛が作品の中にいくつもちりばめられている。
それがあるからこそ、ミステリーにとどまらない作品になり、直木賞受賞につながったのだろう。
ではその愛を見ていこう。
「容疑者Xの献身」にある愛
「容疑者Xの献身」にはこれだけの愛がある。
1 石神の靖子に対する愛情
これは「容疑者Xの献身」のメインテーマ。
愛する靖子のため、下手をしたら人生を棒に振るようなことをやってのける石神。
ポイントはこれだ。
石神と靖子は、恋人でも夫婦でもないし、友人ですらもないということ
あくまでお隣さん。
石神の一方的な恋心である。
そんな存在の人物が、犯罪でもある殺人隠蔽を手伝いをしてくれるのは嬉しいと言えば嬉しい。
が、これを言い出さないか不安にならないだろうか。
石神の考えたトリックの謎、逃げ切れるかどうかの攻防もハラハラするが、石神と靖子の成り行きにもハラハラする。
これも「容疑者Xの献身」を、面白くしている大きなポイントだ。
「容疑者Xの献身」というタイトルの意味も、ラストで大納得するで!
ついでに、なんで表紙が赤いバラなのかもな!
靖子と美里にみる親子の愛情
靖子が犯罪隠ぺいに手を染めたのは、1にも2にも美里のためだ。
いろいろ迷惑をかけた美里だけは守りたい・・・
この一心。この母心。
決して自分の保身のためではない。
何より富樫を殺したのも、強盗とかお金目的ではない。
あくまで家庭を守るためだ。
そして美里もそう。
犯罪隠ぺいに加担したのも、気の毒な母親を刑務所に入れないためだ。
石神と湯川の敬愛
湯川と石神は同じ大学の同級生だ。
そしてこの2人の間にも深い愛がある。
物理学者(湯川)vs数学者(石神)と道を分けているが、お互いの才能を深く認め尊重し合っている。
残念ながら(当たり前だが)湯川は石神の犯罪に気づく。
そしてやはり、石神も湯川にバレていると気づく。
そんなことになっても、お互いに尊重し合うスタンスは変わらないのだ。
昨今の「ただつながっていないと不安」などという、軽い友情とは程遠い
ラスト3行で、湯川の石神に対する、深い敬愛を改めて感じるだろう。
靖子と工藤にある男女の愛情
工藤は靖子の元お客さんだ。
道ならぬ恋になりかけたこともあったが、工藤は自分の妻や、靖子のためにいったん身を引く。
そして何も知らない工藤は、旦那が変死したと聞いて、心配と愛情で靖子に最接近するのだ。
しかもそのタイミングは、自分の身の回りもきれいになったからときてる。
そして工藤はとても紳士的。
靖子に無理強いはしないし、娘の美里の事もキチンと気遣う。
靖子は石神を気にしながらも、工藤に惹かれていくのをどうすることも出来ない・・・。
工藤は「どうしようもないやるせなさ」を最高に演出してくれるキャラだ。
物語的には、絶対この2人は結ばれないであろうというのは解るので、余計に切ない。
殺人はいけない。
そしてそれを隠蔽するのも、モチロンいけない。
でも登場人物は皆が皆、誰かを思いやっている。
すべてが誰かをかばっての事だったのに、事態は最悪の展開になってしまうのだ。
それがこの作品の底に流れる深み、「やるせなさ」だ。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「容疑者Xの献身」まとめ
ネコ缶評価
文句なしの直木賞作品・・とはいえ何も欠点が無いとは言えない。
石神がここまで靖子に惚れ込んだきっかけが、ほとんど書かれていないのだ。
靖子も、石神にそこまでさせるような魅力が書かれていない。
うーん、そこまでやるかな・・・この程度のきっかけで・・・?
という感じなのや。
とはいえ、あえてこれを書かなかったことで「祈りの幕が下りる時」的な暗さ&重さがないのは事実。
深いけど、何回でも読める作品に仕上がっているのだ。
靖子の魅力を書かなかったことで、石神一人にスポットを当てることができたともいえる。
いろいろ書いたが・・・・
「容疑者Xの献身」は読んで損なし!
ぜひどうぞ!
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