以前、東野圭吾氏はタイトルの付け方がうまいと書いた。
タイトルだけでもかっこいけど、内容とうまくマッチしてるのが多いんや!
今回ご紹介する「聖女の救済」も、そのうちの1つに入るだろう。
「聖女の救済」はネコ缶が考える「東野圭吾ベスト10」「ガリレオシリーズベスト3」にも入る作品。
詳しくみていこう。
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「聖女の救済」あらすじ
綾音は打ちのめされていた。
夫の義孝からこう告げられたのだ。
綾音に何か非があったわけでは決してない。
ただ子供が出来なかっただけなのだ。
結婚して1年、子供が出来なかったら別れる・・・これは義孝と結婚したとき、彼から言い渡された約束だった。
でも綾音は心のどこかで、結婚生活を営んでいるうちに、この発言を撤回してくれるのでは・・・という期待はしていた。
だが、その期待はむなしいものになる。
おまけに義孝は、綾音の運営するパッチワーク教室の生徒・宏美に手を出してもいたのだ!
綾音はひそかに夫を殺す決心をする。
だが夫には笑顔でこう告げた。
でも家を出ていく前に、北海道の実家へ帰っていい?
父の具合が悪いの。
快く妻を送り出す義孝。
だが義孝は、その2日後に毒殺死体で発見される。
綾音はどうやって夫を殺害したのだろうか?
何一つ証拠が見つけられず、困り果てる捜査一課。
ガリレオはどうやって真実を暴くのか?
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「聖女の救済」感想
殺されたはずの被害者に、全く同情できない作品は多いが、これもその一つ。
それほどまでに、義孝という男は女性の敵なのだ。
戦国時代でもあるまいに、女=子供を産む道具としか見ていないのだ。
こんな人間いるのかと思うが、有栖川有栖氏の「乱鴉の島」でも、自分の遺伝子を残すことに異様なまでに執着する男が出てくる。
「自分が優秀だと思いあがっている男」というのは、得てしてこういうことを考えるのかもしれない。
ではさっそく内容をみていこう。
「聖女の救済」見どころ1 ラストの展開がすごすぎ
内容はいわゆる「コロンボ式」。
犯人は最初から解っている。
動機やトリックなんかは、ひたすら読み進めながら考えなあかんのや。
そしてこうも言える
東野圭吾さんの話にしては、「話があまり広がっていかない」作品。
事件も1回しか起こらないし、主要な登場人物もかなり少ない。
頼みの綱・湯川センセイの実験や推理も、今回はうまくいかないことが多く、物語の中盤で少々退屈してしまう人もいるかもしれない。
だがラストは、信じられない展開を見ることになる。
犯人の考えた殺人トリックは前作「容疑者Xの献身」の石神を思わせるような、緻密かつ周到さだ。
丁寧に練られた計画、殺人が起こった後の毒物の回収、刑事とのやり取りのシナリオ・・・
どれもこれも、手芸好きな普通の女性が考えたとは思えないようなレベル。
衝撃のラストはこれだけでなく、タイトルの「聖女の救済」の意味もしっかりと解らせてくれる。
ちなみに「聖女の救済」の展開は、名作「オリエント急行殺人事件」をも思わせる。
「オリエント急行殺人事件」も、映像なら良いのだが、本だと途中で中だるみする作品。
だが「オリエント~」も「聖女の救済」同様、その中だるみもびっくりな衝撃のラストが待ち構えているのだ。
「聖女の救済」見どころ2 草薙の淡い恋
「聖女の救済」の、大きなポイントはこれだ。
普通の恋なら別にヨシ。
若い独身男性なのだから、がんばってね~と応援したくなるところだが、相手がいけなかった。
殺人犯の綾音なのだから。
まずいことにその恋が原因で、内海薫や湯川とも少々険悪な雰囲気になってしまう。
その結果、こんな分裂を生む。
それぞれが決定打を欠きながらも、ひたすらに自分の信じた道を突き進んでいくのだ。
この流れは「1986年 有楽町3億円事件」をホーフツとさせる。
有楽町事件の前に起こった、1968年の3億円事件は、未解決に終わっている。
その反省をバネに、有楽町3億円事件は「指紋班」と「物的証拠&状況証拠班」が、対立しながらそれぞれの道を行き、犯人を追うのだ。
そして「聖女の救済」も「有楽町3億円事件」と、全く同じようなラストを迎える。
だがそれは、草薙の恋の終わりを告げることでもあったのだ・・・。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「聖女の救済」まとめ
ネコ缶評価
少しの中だるみ感はいいとして、「こんな奴本当にいるのか」とすら思わせる被害者の義孝。
そのクズ感を盛りすぎなところが、少々鼻につく。
殺害トリックは壮大だが、無理があると言えなくもない。
それがマイナス0.5。
とはいえ、この度肝を抜くトリックや、話の構成は「それがどうした!」とそれらを払拭するくらい面白いのだ。
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