ガリレオシリーズの湯川センセイは、大の子供嫌いだ。
ところが今回ご紹介する「真夏の方程式」は、その子供嫌いの湯川センセイが11歳の少年と心を通わせるという作品なのだ。

もちろんそれだけやなくて、ちゃんと(?)事件も起こるで!
早速みていこう
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「真夏の方程式」あらすじ

5年生の少年・恭平は両親が共働きで多忙。
そのため伯母・川畑節子の家で、夏休みを過ごすことになった。
伯母の家は昔ながらの旅館「緑岩荘」。
美しい玻璃ヶ浦を臨む、絶好のロケーションだ。
恭平は、そこの旅館で偶然湯川と出会う。
玻璃ヶ浦近辺はさびれた町だったが、デスメックという会社が海でレアメタルが取れる可能性を発見。
海底発掘を反対する住民と対立していた。
湯川はそのデスメックに頼まれて、話し合いの協力の為ここに来たのだった。
風変わりだが、子供扱いしない湯川になつく恭平。
湯川もそんな恭平に、理科や算数の楽しさを教えてやるようになる。
そんなある日、事件が起こる。
緑岩荘に泊まりに来ていた別の客・塚原正次が海で死体で見つかったのだ。
酔った挙句の水難事故・・・という事で片付きそうになったが、管理官の多々羅から待ったがかかる。
塚原は定年したものの、元警視庁・捜査一課の刑事。
という事で、調べて欲しいということだったのだ。
すると塚原は自分が逮捕した「仙波」という人物が住んでいた家を、探しに玻璃ヶ浦まで来ていたことが判明。
それだけでなく塚原は、一酸化炭素中毒で死亡して、その後海に捨てられたことが判明した。
塚原は何のためにここに来て、誰に殺されたのか?
そして玻璃ヶ浦の開発はどうなるのか?
封印していた、川畑家の過去の事件が静かに動き出す・・・
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「真夏の方程式」感想

夏休みの海辺を舞台にした作品。
湯川センセイが、恭平と浜辺でロケットの打ち上げ実験をしている描写などは、「真夏の方程式」一番の見どころだと思う。
「菊次郎の夏」はこちら↓

だがそんなさわやかな夏は一変。
緑岩荘で殺人事件が起こり、恭平が巻き込まれていくのだ。
内容をみていこう。
「真夏の方程式」3つの柱

「真夏の方程式」は、東野作品にしては少々解りにくいが、この3つの内容で出来ている。
整理していこう。
①湯川と恭平のふれあい
理科の楽しさ、算数の原理だけでなく、実験を通して学ぶ大切な事、真理・・・などを、湯川センセイが恭平に対して一生懸命教えている。
それだけでなく、物語後半は、事件に巻き込まれている恭平を必死でかばう様子も見られる。
クールな湯川で子供嫌いな湯川センセイの、これまで見られなかった一面だ。
恭平に対してだけでなく、ラスト近くになるとヒューマン・湯川が再びさく裂。
詳しくは書けないが、「真夏の方程式」は、クールな湯川のイメージをガラッと変えさせる1冊だ。
②謎の人物「塚原正次」のねらいは?
これはなかなか解らない。
いち刑事の領域をはるかに超えているのだが、その理由がはっきりしない。
それだけでなく、練炭・密室などどこにもない場所で一酸化炭素中毒を起こしているのか?
この真相が解った際には胸が痛む。
③川畑家の秘密
読み進めていくうちに読者はこう感じるだろう。
何か過去があるような、しかもその過去を封印したようなことが感じられるのだ。
これも宿泊客の湯川が(今回は一人で)解き明かしていく。
・・・と、こんな感じの3本柱で物語は進んでいくのだ。
②③の事件、全く別物だが最後にはつながる。
(東野圭吾さんの話にはよくある)
箇条書きにするとすっきりするのだが、草薙&内海ペア以外の警察関係者が大勢動くので少々ややこしく感じる。
この3つが主題なので、そこを外さず読んでいこう。
「真夏の方程式」がいまひとつと思う理由①

ネコ缶は時々こう思う。
で、今回の「真夏の方程式」は少々それに当てはまるのだ。
「真夏の方程式」の底に流れるメインテーマは、「子供のした犯罪を、親がやむにやまれず隠ぺい」という事。
同じような設定は、加賀恭一郎シリーズの「赤い指」「祈りの幕が下りる時」で見事に描かれていた。
「赤い指」詳しくはこちら
「祈りの幕が下りる時」詳しくはこちら
ガリレオシリーズでも「容疑者Xの献身」が当てはまる。
それらの作品と違い、「真夏の方程式」の決定的な痛手は、子供を犯罪の中心に巻き込んだこと。
ネコ缶のミステリータブー3原則に反する。
⇒ネコ缶のミステリータブー3原則はこちら
「赤い指」のように、子供自らが何らかの不満があって自らが犯罪をしたのではない。
何も知らない間に犯罪に加担させられたのだ。
これはネコ缶、親として読むのがキツイ。
しかもそのことに、恭平がうすうす気づいているのもキツイ。
湯川が彼なりに精一杯の対応をしている事で救われるが・・・・
「真夏の方程式」は、フィクションであってもネコ缶にとっては少々後味が悪かった。
「真夏の方程式」がいまひとつと思う理由②

もう1つこれが言える。
特にラストが、少々作者に都合よく動きすぎてやしないかと思う。
玻璃警察と草薙が別れて動いている事なども、話がをややこしくさせている。
デスメックの開発云々も、急に終わってるしなあ。
湯川のヒューマンドラマをメインにして「新参者」みたいに多角的な方向から詳しく書いていく・・・みたいにしても良かったのではと思う。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「真夏の方程式」まとめ

ネコ缶評価
「真夏の方程式」は、そこまでまずい作品ではない。
でも他の素晴らしい東野圭吾作品を、いくつも知っているネコ缶は、今一つに感じるのだ。
子供嫌いの湯川センセイが、恭平に一生懸命になっている様子はとても良かった。
湯川センセイの意外な一面を見られるところが良い作品・・・ということにしよう。
・ガリレオシリーズがもっと読みたい!方はこちら⇒天才物理学者・湯川の「ガリレオシリーズ」はこちら
・東野圭吾の魅力的なキャラが知りたいかたはこちら⇒「ガリレオ」だけじゃない東野圭吾のキャラ「加賀恭一郎シリーズ!