「宿敵」という言葉がある。
永遠のライバルと言おうか、善に対する悪、白魔術と黒魔術みたいに、徹底的に対立している関係の事だ。
昔の少年漫画のヒーローものでは必ずこれがあったし、ミステリーなんかでもある。
今回ご紹介する「モリアーティ」とは、世界一有名な名探偵の宿敵の名前だ。

前回の「絹の家」も少々後味の悪い展開だったが、「モリアーティ」もある意味負けていない。
ちょっと覚悟して読んでいこう。
Contents
アンソニー・ホロヴィッツ(ホームズシリーズ)「モリアーティ」あらすじ

ライヘンバッハの滝に、ホームズとモリアーティが決闘の末に落ちてしまった。
そのしばらく後に、1人の男の死体が上がる。
死体を収容したスイス警察は色めき立つ
この身元不明の死体を調べたのは、スコットランドヤードのアルセルニー・ジョーンズ警部。
そしてアメリカから来た、ピンカートン探偵社のフレデリック・チェイスだった。
当時アメリカにも悪の総本山がいた。
彼の名前は、クラレンス・デヴァルー。
クラレンス・デヴァルーはその時、ヨーロッパのモリアーティと手を組もうとしていたのだ。
そこでフレデリックは、部下のジョナサンをスパイとして送り込む。
そしてこんな知らせを受け、駆け付けたのだ。
で、モリアーティとは死体との対面・・・という事になるんや。
フレデリックが来たことは、無駄足かと思われた。
だが会合にくるという、クラレンス・デヴァルーだけは逮捕したい・・・!
目的を同じくするジョーンズ警部と、フレデリックは手を組み、クラレンス・デヴァルー逮捕にむけて動き出した。
シャーロック・ホームズ財団も認める続編第2段!
アンソニー・ホロヴィッツ(ホームズシリーズ)「モリアーティ」感想

私のように、ちゃんとホームズを読んでいない人のために少々説明しておこう。
モリアーティ豆知識
- 元数学教授の大悪党
- ロンドンの犯罪を牛耳り、大小どんな事件にも一枚嚙んでいる
- おそろしく賢い男で、決して尻尾をつかませない
- 部下を多数持ち、自分の手を汚さない
- ホームズと決闘になり、ライヘンバッハの滝から落ち行方不明
これがいわずと知れた、この作品の前段階。
そして「モリアーティ」は、その直後から始まるという筋書きだ。
「絹の家」と違い、ホームズ&ワトスンコンビは出てこない。
その代わり、ジョーンズ&フレデリックが彼ら同様、コンビを組んでくれる。
352ページという、まあまあな長編だが、中身は恐ろしく濃い。
そしてラストは・・・・びっくり仰天な結末が待ち構えている。
詳しく中身をみていこう
アンソニー・ホロヴィッツお得意のメンクリミステリー

「絹の家」でも述べたが、アンソニー・ホロヴィッツの作品はとにかくこれだ
メンクリ型
「その裁きは死」詳しくはこちら
「メインテーマは殺人」詳しくはこちら
今回の「モリアーティ」でもそれは感じた。
すごい勢いで、話の中身や主人公たちの活動する場所が展開していくのだ。
主な出来事だけでも書いておこう。
- スイスでモリアーティらしき男の死体発見&ジョーンズとフレデリックの出会い
- クラレンス・ラヴェルの側近の自宅を発見&大量殺人
- クラレンス側近その2のアジトガサ入れ
- クラレンスの手下に会う
- ジョーンズ宅へ&スコットランドヤード爆破
- アメリカ大使館へ
- ジョーンズ&フレデリック、つかまる
- 真相解明
最後まで来た時、やっぱりこう思うだろう
この疑問は、目まぐるしい展開に忘れがちになるが、よーく覚えておこな!
かなり重要な疑問やで!
おやじたちの冒険譚

ホームズシリーズが好きな人は、ホームズの知性だけでなく、ワトスンとのコンビ愛も好きなのではないだろうか。
今回は残念ながら、ホームズやワトスンは出ない。
だが、その役柄を担うキャラがちゃんと登場する。
アルセルニー・ジョーンズ警部と、フレデリック・チェイス調査員だ。
アルセルニーは、ホームズに心酔していたという設定のせいか、ホームズのように優れた観察眼と冷静さを見せてくれる。
そして彼を支えるフレデリックがワトスン役だ。
2人とも40歳を超えているが、命がけで(これマジ)悪を倒そうと協力し、駆け回るのだ。
だが、途中でこう思う人もいるだろう
ネコ缶もそう思った。
滝から落ちても死んでなかったっていうのは、有名な話やしな・・・。
さてこの結末はどうだったのか?
アルセルニーはホームズなのか?
オジサンたちの友情を描きつつも、そこはかとない不安をなぜか感じる作品。
ラストまで読んだ時に、タイトルがモリアーティになっている事の意味を知るだろう。
アンソニー・ホロヴィッツ(ホームズシリーズ)「モリアーティ」 まとめ

ネコ缶評価
「モリアーティ」は、とにかく人が死ぬ。
バッタバッタと殺されていき、残酷な殺され方をしてる人も多いのだ。
この作品の主役(?)アルセルニー・ジョーンズ警部の描かれ方も、少々気の毒。
アンソニー・ホロヴィッツらしく、よく描けているのは認める。
だがこれなのだ。
ラストが超哀しい。
そのうえ、悪の栄えすら予感させてしまう。
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