ガリレオシリーズは短編が多い。
これまでも短編は「探偵ガリレオ」「予知夢」「ガリレオの苦悩」と3作紹介してきた
「探偵ガリレオ」詳しくはこちら
「予知夢」詳しくはこちら
「ガリレオの苦悩」詳しくはこちら
今回ご紹介する「虚像の道化師」は短編4作目だ。
この作品は4作目にして、ガリレオシリーズ短編の最高峰ではないかと思う。
詳しくみていこう
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「虚像の道化師」あらすじ&感想
「虚像の道化師」はこの7編からなる。
- 幻惑す(まどわす)
- 透視す(みとおす)
- 心聴る(きこえる)
- 曲球る(まがる)
- 念波る(おくる)
- 偽装る(よそおう)
- 演技る(えんじる)
この独特のタイトルも健在。
全作60~70ページだが、中身は今までのどの作品よりも濃い。
では中身をみていこう。
幻惑す(まどわす)あらすじ&感想
最近勢いをつけてきた、新興宗教団体「クアイの会」。
そこが週刊トライの取材を受けることになった。
だがちょうどその折、教団幹部の第5部長が、教団費を使い込んでいるという噂がたつ。
教祖・連崎がその第5部長に「心を浄化する儀式」をするので、トライはその儀式をを取材するという事に。
だがその儀式の最中、第5部長が苦しみだし、逃げるように窓から飛び降りてしまう!
この儀式は一体何なのか?
なにかトリックでもあるのだろうか?
第5部長は、良心の呵責に耐えかねての自殺・・・という事で片付きそうだったが・・・・。
カリスマ性を持つ人(持たされる人)と、お金儲けをたくらむ人、救いを求める人がいる限り、「クアイの会」みたいなのは無くならないんだろうなあ・・・。
透視す(みとおす)あらすじ&感想
ホステスのアイは、透視能力があるともっぱらの評判だ。
彼女が用意した黒い封筒に何かを入れ、彼女が数珠で拝めば中身がたちまち解るというもの。
草薙に連れてこられ、その技を見た湯川も驚く。
だがそんなある日、アイは他殺死体で見つかる。
彼女は真面目で、客ともめたことも無ければ、付き合っている男性がいるわけでもなかった。
彼女の特殊能力に、何か関係があるのだろうか・・・?
でも4作目は、ここにアイの抱えていた家族関係をからませて、ふくらみのある作品になっている。
「虚像の道化師」が一味違う短編と思うのは、こういうとこやな
心聴る(きこえる)あらすじ&感想
耳鳴りに悩まされていた脇坂睦美。
休日に家にいる時は何もないので、精神的なものが原因かと思っていた。
だが同じころ、彼女の上司がベランダから飛び降り自殺をしたり、同じ会社の加山という男もが幻聴に悩まされたりしていた。
上司は不倫相手が自殺したので、良心の呵責に耐えかねての自殺かと思われた。
だがその上司も、幻聴に悩まされていたような節がある。
幻聴はノイローゼによるものと決めつけようとする北原刑事に対し、科学で原因を証明しようとする湯川。
軍配はどちらにあがる?
草薙の同期、北原の屈折した内面も書かれていて、どっちかと言うとそっちがメインな話。
「ガリレオの苦悩(攪乱す)」詳しくはこちら
曲球る(まがる)あらすじ&感想
戦力外通告をされたプロ野球投手の柳沢。
彼の妻・妙子がある日他殺死体で見つかる。
犯人は早く見つかったが、妙子の車にあったプレゼントの箱の謎が解けない。
妻は殺される前、誰と会っていたのか?
そして湯川は、柳沢の球の衰えの原因と改善点を科学で証明して見せる。
すべてが明らかになった時、見えてきたものは・・・・。
少々詰め込みすぎな点も感じるが、ラストはさわやかに終わる。
夫婦の愛情を書いた、ハートウォーミングな話。
念波る(おくる)あらすじ&感想
春奈は、一緒に住んでいる叔母・藤子にそう言った。
疑問に思いつつも、双子の春奈・若菜の不思議なつながりを知る藤子は言われた通りにする。
するとやはり若菜は何者かに襲われて、瀕死の重傷を負っているところだった。
そして春奈はこうも言った
その男が若菜を殺したんです!
双子のテレパシーを、捜査に役立てることはできるのか?
湯川が脳滋派で実験をしてみると・・・。
湯川がテレパシーに興味を持ったのは意外な気がしたが、ラストでその理由に納得。
(でももっと深く実験してみて欲しかった気もする)
偽装る(よそおう)あらすじ&感想
大学時代の同級生の結婚式の為に、山奥のホテルに来た湯川と草薙。
だが2次会の前にこんな知らせが届く。
その夫婦は、作詞家で有名な竹脇桂。
そして彼らの娘は、湯川たちに傘を貸してくれた親切な女性だった。
だが彼女の証言には、少々妙なところがあり・・・。
科学と犯人の動機、人間の心情などが上手くマッチしている。
救いのない話かと思いきや、ラストに希望があり一安心。
演技る(えんじる)あらすじ&感想
「青狐」という劇団員敦子は、団長駒井を小道具のナイフで刺し殺す。
そしてその後は、急いで偽装工作のために団員たちに会ったり、電話をする。
偽装工作もうまくいったように思ったが、敦子が駒井の元カノだという事を警察がかぎつける。
敦子は逃げおおせるのか?
だがネコ缶は、全く犯人に共感できひんなあ・・・。
(ネコ缶、究極のリアリストだからだろうか)
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「虚像の道化師」まとめ
ネコ缶評価
今の所(2022年4月)ガリレオシリーズの短編ではこれが一番面白い。
科学偏重(科学知識がまずありきで、そこに事件をくっつけたような感じ)からオカルトに傾いたが、今回はグッと中庸になり、心理描写も丁寧になっている。
長編を入れると、ガリレオシリーズは一時内海ばかりで草薙が全く活躍していない時もあった。
だが「虚像の道化師」は草薙がメインに復活している。
(こっちの方がなんとなくいい)
ガリレオシリーズの、流れが決まったように思える一冊だ。
それが心配やなあ・・・。
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