ガリレオシリーズ

東野圭吾(ガリレオシリーズ)「禁断の魔術」あらすじ・感想・ネタバレまとめ

科学者・湯川センセイの、確固たる信念はこれだ。

科学を悪に使ってはいけない

マッドサイエンティストという言葉がある。

最高の科学技術を司ることができる人間は、その技術で非人道的なことも可能にしてしまう・・・ということだ。

そして悲しいことに本人だけではなく、その技術を使った他人が悪用してしまう・・・事もある。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
これ、ノーベルもアインシュタインも悩んでたよなあ・・・

その湯川(と、誠実な科学者の)信念が、見事に昇華された作品が今回ご紹介するこちらだ。

「禁断の魔術」

禁断の魔術
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詳しくみていこう。

東野圭吾(ガリレオシリーズ)「禁断の魔術」あらすじ

フリーライター・長岡が何者かに殺された。

長岡は最近、スーパー・テクノポリスという開発問題を極秘で取材しており、その件で何かあったのかと思われた。

時を同じくして、湯川の後輩・古芝が、せっかく合格した帝都大学を姉が死んだという理由で中退。

古芝は高校時代に、湯川に「レールガン」という装置を教えてもらったことがあり、その時からの付き合いだった。

その後古芝は、町の工場で働き始める。

持ち前の優秀さで、熱心に仕事を覚えたが、突如失踪。

古芝はどこに行ったのだろうか?
そしてなぜか、湯川に教えてもらって作ったレールガンも、高校から無くなっていた。

長岡の事件に何か関係があるのだろうか?
そして、スーパーテクノポリスはどうなるのだろうか?

すべてのピースが合わさった時、明らかになる哀しい真相とは・・・

東野圭吾(ガリレオシリーズ)「禁断の魔術」感想

「禁断の魔術」は、もともとは「猛射つ(うつ)」という短編だった。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
それを加筆して「禁断の魔術」にしたんやって。

ここには「レールガン」という、素人には全く解らないが、ド派手な科学装置が出てくる。

これは膨らませがいがあったろう。そして人気の作品だったに違いない。

では詳しい内容をみていこう。

メインテーマは湯川(真面目な科学者)の信念

話は大きく3つの柱からなる。

  • スーパー・テクノポリス計画と、それにまつわるいざこざ
  • フリーライター・長岡殺人事件
  • 湯川と古芝のかかわり

話の進め方は、パズルの1ピースを1つ1つ埋めていくかのような感じ。

話もポンポン飛んでいるし、突発的なエピソードも入ってくる。

 
 
・・・これ、話にどうかかわってくるの? 

と、最初は首をかしげることも多いかもしれない。

だがそれがラストに、1つの絵として完成するのだ。

その時なるほど~と思うだろう。

 

さて、この3つの柱で一番のメインはなんといっても3番目。

湯川と古芝のかかわりだ。

年の離れた2人の友情を通して、これを訴えている。

「科学者としての在り方」

これは「ガリレオの苦悩・攪乱す(みだす)・操縦る(あやつる)」でも再三訴えられてきた。

「ガリレオの苦悩」詳しくはこちら

そして「禁断の魔術」でも、湯川や古芝の父(この人も科学者)が何度も強く訴えている。

科学技術は(略)良いことだけに使われるわけではない。

要は扱う人間の心次第。

邪悪な人間の手にかかれば「禁断の魔術」になる。

科学者は常にそのことを忘れてはならない

「禁断の魔術」p178

また、古芝の父も科学者だったが、こんな事を言っている。

地雷は核兵器と並んで、科学者が作った最低最悪の代物である。

科学技術によって人間を傷つけたり、生命を脅かしたりすることは許されない。

「禁断の魔術」p289~290

そしてダメ押しのこの一言だ。

「科学を制する者は世界を制す」

「禁断の魔術」p291

ここまで読んでくださった方にはすぐピンとくるだろうが、もちろん裏の意味も多分にある。

だが決して堕ちないで欲しい、優れた科学者は優れた人間性を持ってほしい・・・

という、湯川と古芝の父(そしておそらく、東野圭吾をはじめとする誠実な科学者)の願いなのだろう。

これがおそらく「禁断の魔術」最大のテーマなのだ。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
ちなみに、アンソニー・ホロヴィッツの作品は「面クリ型」と書いたが、東野圭吾さんは「パズル型」だ。

「面クリ型」は12回終了のドラマを連想させるし、「パズル型」は映画にもってこいだろう。

東野作品が映画化されやすい理由が解るな。(最初から狙ってるのかもやけど)

アンソニー・ホロヴィッツの作品詳しくはこちら

マニアな楽しみもある

ガリレオシリーズも、早8作目。

作品が増えてくると、こんな楽しみもある。

 
 
あ、これ○○の作品のことじゃない? 
 
 
この人・・・○○にも出てなかった? 

そう、こういうことが起こるのだ。

「以前の作品に出てきた何かを、登場人物が言う」
「以前の作品の登場人物が出てくる」

モチロン解らなくてもなんら問題はない。
ただの隠れキャラ的な存在だ。

今回は2か所発見した。

以前人の頭が燃え上がる事件があって、それを先生がレーザー光線を使ったものだと見抜いたって・・・

「禁断の魔術」p74

↑これ「探偵ガリレオ」の「燃焼る(もえる)」の話よな。

「探偵ガリレオ」詳しくはこちら

また、「真夏の方程式」で出てきた、この人も登場。

机を挟んで向き合ている相手は、今回の事件の実質的な責任者である、管理官の多々良だ。

p140

自然と開発の共存、殺人事件を舞台にして、科学の重要性を話に据えたのは「真夏の方程式」もそうやったな。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
仕上がりは「禁断の魔術」の方が上やな~。

「真夏の方程式」詳しくはこちら

ちなみに、終盤への盛り上げ方は「使命と魂のリミット」に似てる。

使命と魂のリミット
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皆さんも探してみてな~。

東野圭吾(ガリレオシリーズ)「禁断の魔術」まとめ

禁断の魔術
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ネコ缶評価

長岡殺人事件も開発問題も、メインテーマを盛り上げるための小道具のように思える。

それくらい湯川の訴えが強いのだ。

そのために少々終わり方が尻切れトンボになったり、場面展開がありすぎて目まぐるしいほどだった。

勧善懲悪ではなく、ハッピーエンドでもないが、最悪の事態は避けられた・・・というところが妙にリアル。

でもなんだか、ミステリーというより「魂を揺さぶられる」作品だったと思う。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
気の毒な少年2人(古芝君と恭平君)のその後をぜひ描いてほしいものだ・・・・と、息子を持つネコ缶は思う。
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