前回のガリレオシリーズ「禁断の魔術」で、湯川はアメリカに行ったところで終わった。
今回ご紹介する「沈黙のパレード」はその4年後。
湯川はアメリカから帰国し、草薙は出世しているという設定だ
そしてなんと、湯川は「教授」に出世しているのだ。
早速内容をみていこう。
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「沈黙のパレード」あらすじ
定食屋「なみきや」の看板娘・佐織は歌のうまい女の子。
佐織は歌手デビューも目前に控えていたのに、なぜか突然失踪してしまう・・・。
そこから3年がたったある日、静岡県のごみ屋敷が火事に。
よくある独居老人の、火の不始末かと思いきや、なんとそこから佐織の死体が見つかる!
もちろんそのごみ屋敷は、佐織とは縁もゆかりもない所。
一体なぜ?
捜査は難航するかと思われたが、なみきやの常連、蓮沼という男が容疑者として浮かぶ。
だが蓮沼は警察におびえることもなく、のらりくらりと供述をかわし、ガンとして沈黙を守る。
そしてこの男は、違う意味で不審な人物だった。
蓮沼は23年前、少女誘拐で草薙が逮捕した男。
それだけでなく、沈黙を通し証拠不十分で不起訴となった男だったのだ!
蓮沼はまた同じ手口を繰り返しているのか?
そしてまた、証拠不十分での釈放をねらっているのだろうか・・・・
同じ過ちを繰り返すまいと草薙が画策していた時、驚きの事件が起こる
なんと商店街のパレード当日、蓮沼が殺されたのだ!
湯川准教授が「教授」になって初めての事件。
草薙や内海はどう立ち向かうのか?
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「沈黙のパレード」感想
読み進めていくうちに、ミステリーマニアならこう思うのではないだろうか
大雑把にいうと、過去の事件を恨みに思う大勢の人間が、復讐のために集結するという設定。
「オリエント急行殺人事件」ではラストで一気にトリックが明かされ、読者の度肝を抜くが、「沈黙のパレード」は中盤でそれが解ってくる。
もちろんそのトリックに気づくのは湯川。
おなじみ科学の知識で、警察をも、うならせる気づきを見せてくれる。
・・・だが「沈黙のパレード」は、ネコ缶にとっては残念な点が3つある。
今回はそこを書いていくことにする。
「沈黙のパレード」ここが残念だった
ネコ缶は今回、「沈黙のパレード」でこの3つの点が残念だったと思う。
- 設定に無理やり感
- キャラ設定がブレ気味
- ラストのどんでん返しが少々「?」
どういうことか、ざっと説明しよう。
1 設定に無理やり感
申し訳ないが、こう思う。
両親は解るが、その友人も加担・・・というのはさすがに無理がないだろうか。
歌の師匠も、期待していた弟子が殺されたからと言って、殺人に加担するだろうか。
たとえ犯人が極悪非道な人間でも、殺人なんて少々の事では出来るもんではない。
出来るんは両親や恋人・夫婦くらいではないのか。
なんだか皆、正義感に自己陶酔しているのでは・・とすら感じてしまう。
この辺りに非常に違和感を感じた。
2 キャラ設定がブレ気味
今回、湯川のキャラ設定が少々ブレ気味。
クールな湯川が、完全に人情的なふるまいをしている。
ラストで湯川が「なみきや」に行ったり、真犯人の所に行き話をするのは、完全に「物理学者キャラ」を逸脱している。
3 ラストのどんでん返しが少々「?」
大どんでん返しは、ミステリーファンにとっては嬉しい設定
・・・なんやけど、少々意味が解らなかった。
最後の最後で、犯人が供述を翻した理由がつかみきれないのだ。
これはネコ缶だけかもしれへんけどな。
どんでん返しが「?」になってしまうと台無しになるよな・・・。
残念なことになる主な理由はこれ
この3つの残念ポイントの根底に流れているのは、これなのではないだろうか。
「映画化を見越した(意識しすぎた)作品になっている」
ガリレオシリーズはベストセラーだし、映画で湯川を演じるのは、大人気の福山雅治だ。
映画化すれば東野作品のファンや、福山ファンも見に来てくれる・・・大きな興行収入が見込める・・・。
もうその匂いが、作品の中にプンプンしているのだ。
(「真夏の方程式」でもそんなイメージがあった)
だから映画化しやすいように「沈黙のパレード」を作ったのではないか・・・という気が否めないのだ。
ラストで湯川が超人情的な動きをしているのは、福山雅治の出番を作っているようにも見える。
残念ながらネコ缶は、全く福山雅治を良いと思わない(珍しがられるが事実)
何より、昔からの東野圭吾さんの作品ファンなのだ。
なのでこういった作品作りをされると、とても残念なのだ。
マニア受けするシーンもあり
ミニ小噺を少々しておこう。
ガリレオシリーズは今回で9作目。
シリーズ9作目ともなると、過去の事件について登場人物が話してくれることも多くなってくる。
マニア受けするシーンを、2か所ご紹介しておこう。
「・・・君が捜査の話をしに来るときは、いつも厄介な問題がくっついていたからだ。
突然人間の頭が燃え上がった(1)とか、怪しげな宗教家が念力で人を突き落とした(2)とか・・・」
「沈黙のパレード」p83
(1)は『探偵ガリレオ』「燃焼る(もえる)」で、(2)は『虚像の道化師』の「幻惑す(まどわす)」やな!
「・・・愛する女性のために、すべての罪を背負おうとした男がいたんです。
でも僕が真相を暴いたため、その女性は良心の呵責に耐えきれなくなり、結果的に彼の献身は水泡に帰してしまいました・・・」
「沈黙のパレード」p463
これは名作「容疑者Xの献身」やな!
加賀刑事シリーズにもチョコチョコ出てくる、このマニア受けするエピソード。
またご紹介しよう。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「沈黙のパレード」まとめ
ネコ缶評価
東野圭吾作品を初めて読む人や、ミステリーをあまり読まない人には面白いと思えるだろう。
でもガリレオシリーズの他の名作、東野圭吾の他の名作を読んだことのある人や、ミステリーをよく知っている人には少々難あり。
そんな印象を受ける作品だった。
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