加賀恭一郎シリーズ

東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「希望の糸」あらすじ・感想・ネタバレまとめ

ネコ缶は結構「スピンオフ企画」なるものが好きだ。

いつも目立たないわき役さんたちが、主役を務めたりするのは意外性があって良い。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「この人も主役やれて、さぞ嬉しかろ」って、応援したくなるしな。

なので今回ご紹介する「希望の糸」もワクワクしながら読ませてもらった。

加賀恭一郎のイトコ、松宮脩平なる人物が今回の主役。

まだまだ若く、甘さの抜けない彼がどう動くのか?

早速みていこう

東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「希望の糸」あらすじ

金沢の老舗旅館「たつ芳」のオーナー・芳原真次の死期が近づいてきた。

覚悟を決めた一人娘の亜矢子は、弁護士から預かった真次の遺言書を開く。

そこには財産目録などが書かれていたが、最後に知らない人物の名前が記入されていた。

「松宮脩平」

亜矢子は当然ながらこの人物を全く知らず、度肝を抜かれる。

これは一体誰の事なのか・・・?
真次は一体・・・?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一方、金沢の事など全く知らない松宮脩平。

いつものように殺人事件の捜査に当たっていた。

小さな喫茶店を営む51歳の女性・花塚弥生が何者かに刺殺されていたのだ。

金銭を盗まれていない上、恨んでいる人物も皆目いないことから捜査は難航。

だが最近になって、弥生がジムやエステに通い始めた事を突き止めた松宮は、誰か恋人ができたのでは・・・と考え出す。

その時、1人の男性客が捜査線上に浮かぶ。

汐見行伸という男性で、足しげく店に通い、弥生ともよく話し込んでいたという。

目星をつけた松宮は、汐見を調べていくうちに、自分の出生の秘密にも突き当たることになり・・・。

家族の問題を書かせたらピカイチの東野圭吾。
「祈りの幕が下りる時」から6年ぶりの筆が冴える!

東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「希望の糸」感想

シリーズの主役・加賀恭一郎は、複雑な家庭の事情を抱えており、その事情は常に作品の底を深く流れていた。

恭一郎の事情が解決したのが「祈りの幕が下りる時」。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
起こった事件(かなりの難事件だった)と加賀の家庭問題をうまく絡ませて、感動的かつ、見事なフィナーレになってたよな。

「祈りの幕が下りる時」詳しくはこちら

一方、恭一郎のイトコ、今回の主人公でもある松宮脩平も、実は複雑な家庭で育ったという面では負けていない。

この内容に触れる前に、ちょっと松宮脩平の家庭を復習しておこう。

松宮脩平の家庭ってどんな感じ?

恭一郎の場合は、母親が失踪し、残された父と息子が険悪な中になっているという設定だった。

松宮脩平の場合はこうだ。

脩平の母・克子は一度「松宮」という男と結婚したが死別。

その後克子は一人の男と恋に落ち、脩平を身ごもる。

だがその男には家庭があったため、脩平の父は死んだことにし、克子はシングルマザーになる・・・・

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
その松宮克子・脩平を陰で支えていたのが恭一郎の父・隆正。

克子のお兄さんが隆正なんやな。

恭一郎と違い、脩平と克子の仲は良好。
伯父の隆正(恭一郎の父)にも感謝していた。

そして脩平と隆正の仲の良さは「赤い指」でも詳しく書かれていた

「赤い指」詳しくはこちら

脩平は、隆正のおかげなのか、見ぬ父を特に焦がれたりもしない。

だが今回の遺言書の登場は、克子が(松宮家が)封印していたパンドラの箱を開けてしまった。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
遺言書が家族のパンドラの箱を開けるって、よくあるパターン。

「女系家族」とか「犬神家の一族」とかな ・・。

遺言書を書いたのは芳原真次。
客観的に考えれば、この人が松宮脩平の父親に違いない。

だがなぜか克子の口は重く、すんなり認めようともしなければ否定もしない。

そして、妙な所が一杯ある・・・・。

これが殺人事件と並行して流れる、脩平の家庭の問題なんや。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
家庭の問題解決を通してみられる、松宮脩平の成長も見ものやで

4つの家庭の絡み合い

さて殺人事件の方なのだが、作品の中には4つの家庭が出てくる。

そして各家庭で悩みを抱えていたり、気づかないながらも複雑に絡みあっている。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
まさにハードカバーの絵のように、絡み合った糸みたいになってるのや

混乱しないようにざっと説明しよう。

汐見家

行伸(父)と萌奈(娘)の2人暮らし(母親は死亡)
14年前、地震で2人子供を亡くす
その後、人工授精でを経て授かったのが萌奈
行伸は花塚弥生と懇意だった?

芳原家

当主・芳原真次が松宮の父?
真次の妻は事故で障害を抱えてしまい、真次は介護
長い介護期間を経て、真次の妻は死亡・・・
花塚家

花塚弥生は今回の事件の被害者
元夫の綿貫哲也とは、不妊治療の末、子供が出来なかったため離婚
弥生はなぜか最近、哲也と連絡を取っている・・・
綿貫家

哲也は被害者弥生の元夫
現在は多由子と言う女性と同棲(入籍はしていない、子供もいない)

そして松宮家・・・やな

もちろん松宮家は事件には関係ないが、芳原家とは密接にかかわっている。

登場する4つの家庭に表立った共通点はない。

だがこの4家族は「子供うんぬん」の問題を抱えている(いた)。

子供が欲しくても出来なかった、不妊治療をしたが失敗した、子供を授かったのにうまくいかない・・・などなど様々だ。

そして今回の殺人事件のきっかけも、その子供関係なのだ。

ネコ缶は一児の母だが、子供を持つことにそこまで執着していなかったので、子供を持つことにこだわりすぎている登場人物たちには共感できないところはある。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
だが「子供から見た親」の視点も繊細に書かれてて、そこはおおいに共感やな。

殺人事件のトリックなどは、さほど難しくなく、いたってシンプルな事件。

「希望の糸」のメインテーマは「家族とはなんなのか」「親子とは」「血のつながりと家族」・・・など、家族問題に間違いない

そしてラストで(いつものように)タイトルに納得だ。

今回、加賀恭一郎はあまり登場しない。

だが要の部分ではしっかりキメてくれるし、この加賀恭一郎イズムは脩平に引き継がれている。

刑事と言うのは、真相を解明すればいいというのではない。

取調室ではなく、本人たちによって引き出されるべき真実もある。

その見極めに頭を悩ませるのがいい刑事だ

「希望の糸」

これ、「赤い指」でも書かれてたような気がするよな。

「赤い指」詳しくはこちら

加賀イズムを見事に体得した松宮。
今後に期待大やな。

東野圭吾(加賀恭一郎シリーズ)「希望の糸」まとめ

ネコ缶評価

共感できたり、感動する場面はたくさんある。
が、少々これが鼻に付いたのは事実。

「ありえないような偶然が起こりすぎ」
「きれいに片付き過ぎ(みんないい人すぎ)」

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
↑これは「沈黙のパレード」でも感じた

「沈黙のパレード」詳しくはこちら

特に恭一郎の動きで犯人がアッと言う間に自白したというのは
「おいおいおいおい・・・」
とネコ缶でもさすがに思った。

殺人の謎解きと、家族の問題解決は「祈りの幕が下りる時」の方が断然上。

比較すると、少々パワー不足かもしれない。

とはいえ松宮君の頑張りは立派。
「祈りの幕が下りる時」と比較しなければ、十分楽しめる。
「祈りの幕が下りる時」詳しくはこちら

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