ガリレオシリーズも長いもので、かれこれ20年以上続いているそうだ。
大人気シリーズゆえに、こう思う人も多いのだろうか
そんなファンの人が喜びそうな内容が、今回ご紹介する「透明な螺旋」だ。
ほとんど知らされていなかった、湯川の意外な生い立ちが明らかになる。
これは湯川センセイファンなら、嬉しいことかもしれない。
だがネコ缶はこうも思うのだ。
この「透明な螺旋」を書くことで、少々失ったものがある気がする。
どういうことなのか?早速見ていこう。
Contents
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「透明な螺旋」あらすじ
母を亡くした島内園香は、1人の男性に夢中になり同棲するまでになる。
彼の名前は上辻亮太。
映像関係の仕事をしていて、友人と起業したばかりだという事だった。
しばらくは幸せな暮らしをしていたが、涼太がフリーランスで仕事をするようになってから園香の様子がおかしくなっていく。
亮太は実は仕事をしていなかっただけでなく、DVの疑いがあったのだ。
そんなある日、園香は友人と二人で仕事を休んで京都旅行に行くことになった。
だが帰宅すると上辻亮太がいない。
心配する園香だったが、なんと上辻は遠く離れた南房総沖で死体で見つかる。
動機のある園香は疑われたが、京都旅行という絶対のアリバイがあった。
にもかかわらず、その園香がなぜか突然失踪してしまう・・・・。
園香と一緒に行動しているのは、昔から母と一緒にお世話になっていた「絵本作家のナエさん」ではないかと思われた。
そしてその人物は、なぜか湯川とかかわりを持つ人物でもあった・・・。
湯川の両親も登場する、今までにない作品。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「透明な螺旋」感想
ファン待望の10作目という事で、かなり期待をしていたネコ缶。
しかし今回は拍子抜けをすることになった。
それは何故なのか?
そこを重点的にみていこうと思う。
なんと科学の知識は全く出ません
ガリレオシリーズと言えば、湯川センセイの科学の知識を駆使した謎解きだ。
「透明な螺旋」・・・このタイトルでネコ缶はピンときた。
きっと遺伝子の事だな・・・。
多分親子関係がテーマやろな・・・。
などとノホホンと考えていたのだが・・・・・
読めども読めども、湯川センセイの科学の知識を披露するシーンが出てこないのだ。
と、思いつつページを繰ること3時間。
とうとう読み終えてしまったが、結局最後まで湯川センセイが知識を披露することはなかった。
なんと、フツーのミステリーだったのである。
「螺旋」というタイトルらしく、血縁者の因果はめぐるよどこまでも・・・的な話の内容ではあった。
でも湯川センセイが、フツ―の探偵役しかやってないのである。
・・・ガリレオシリーズ始まって以来ではないだろうか。これ。
今回のメインはあくまで「人間・湯川」。
これが大きなテーマなのだ。
なので今回に限って、湯川の科学を期待して読むのは失望するので危険。
普通のミステリーと思って読もう。
残念・・・。
最近のガリレオシリーズに思う事
東野圭吾のミステリーシリーズに、「加賀恭一郎シリーズ」と言うのがある。
主人公の恭一郎は、母親が失踪し、父親との間に確執を抱えているという設定だ。
その設定は全作品の底を静かに流れており、話に深みをもたらしている。
そしてその恭一郎のイトコに、松宮脩平という人物がいる。
彼は坊ちゃん気質の明るい男だが、父親は家庭のある人物だった。
なのでシングルマザーとなった母に育てられたのだ。
そんな彼らの家族問題を明らかにしたのが「祈りの幕が下りる時」(加賀恭一郎)と「希望の糸」(松宮脩平)だ。
「祈りの幕が下りる時」詳しくはこちら
「希望の糸」詳しくはこちら
この2冊が好評だったのだろうか。
「透明な螺旋」は、「この路線でガリレオもいってやろう」と思って書かれたとしか思えないのだ。
「透明な螺旋」の帯を見て驚いた。
「シリーズ最大の秘密が明かされる」
「ガリレオの真実」
などという活字が躍っていたのである。
ネコ缶、あまり湯川センセイのバックボーンに疑問を持ったことが無かった。
そしてガリレオシリーズの設定上も、そこまで湯川を謎の人物にはしていなかったはずだ。
この帯は、あおり過ぎではないだろうか・・・。
以前「沈黙のパレード」で「最近のガリレオシリーズは、映画化ありきで話を作りすぎている気がする」と書いた。
「映画会社が主導で『こんな話にして下さい』みたいに言われてる気がする」とか。
残念ながら今回もそんな感じが多分にした。
率直に言って、「真夏の方程式」あたりから少々長編はパワーダウンしている。
(「禁断の魔術」で少々盛り返しはしたが)
「真夏の方程式」詳しくはこちら
「禁断の魔術」詳しくはこちら
キャラが濃い人物を主人公にしてしまうと、後々苦しくなる・・・と言うのは、ポアロで有名な話。
不景気な出版業界と邦画業界にとって、ベストセラー作家の東野圭吾氏は救世主なのだろう。
それは解るのだが・・・・今後のガリレオシリーズが危ぶまれる。
今回もありました、マニア受け場面
ラストに、マニア受けホッコリ場面を紹介しておこう。
ネコ缶はこれが結構好きだ
「こういう店に来るのは何年ぶりかと考えていた。
(略)透視のできるホステスがいるという店だ」「透明な螺旋」p185
これは「虚像の道化師」の「透視す(みとおす」のことよな。
「レールガン事件は私にとって一生の思い出です」
「透明な螺旋」p106
これは前々回の「禁断の魔術」やな!
→「禁断の魔術」詳しくはこちら
こういうシーンがあると、マニアには嬉しい限り。
これからもこんなエピソードは書いていって欲しい。
東野圭吾(ガリレオシリーズ)「透明な螺旋」まとめ
ネコ缶評価
普通に面白いミステリー。
DV男・上辻亮太の描写はかなりリアルで、綿密な取材がうかがえる。
世代を超えて繰り返される、似たような過ち・境遇もよく聞く話だ。
だが湯川が科学の知識を披露することはないので、やっぱりこう思うのだ。
これは無理に「ガリレオシリーズ」にしなくても良いのではないだろうか。
「沈黙のパレード」同様、「ガリレオシリーズ」の映画が好きな人が、予習のために読むのがいいと思う。
・ガリレオシリーズがもっと読みたい!方はこちら⇒天才物理学者・湯川の「ガリレオシリーズ」はこちら
・東野圭吾の魅力的なキャラが知りたいかたはこちら⇒「ガリレオ」だけじゃない東野圭吾のキャラ「加賀恭一郎シリーズ!