メモを取りながら読み進めていかないと、内容についていけないミステリーがある。
このところネコ缶が熱中している、フロストシリーズもそのうちの1つ。
事件が多発する上、その事件同士の絡み合いもあるのでメモ(もはや表)が欠かせない。
今回ご紹介する「冬のフロスト」も、A4の紙を6枚つなぎ合わせたもので話を追いかけながら読んだ。
それだけストーリーが込み入ってるのだ。
さて、まとめた表はA4用紙6枚分の内容「冬のフロスト」見ていこう!
Contents
R.D.ウィングフィールド「冬のフロスト」あらすじ
子供が行方不明になる事件が発生した。
デントン署では人手不足の中、必死で捜索しているが、早2か月。
いまだに手がかり1つ見つかっていない。
そんな中、娼婦に財布を盗られたとデントン署に駆け込んできた男がいた。
娼館に一緒に行ってみると、なんとそこにはさっき相手をしてくれた娼婦・ロリータの死体があった。
実は娼婦が殺害される事件はこれだけではない。
少し前にはリンダという娼婦が被害にあっているのだ。
そしてその後も、娼婦の被害者は続出していく・・・。
続出する行方不明の子どもと、殺害・乱暴される娼婦。
宝石を枕カバーに入れて盗む「怪盗枕カバー」に、家の庭から白骨死体が出たという届け出。
今日もデントン署は人手不足の中、多くの事件を抱えて大混乱。
今回フロストの部下を務めるのは「ウェールズのお芋君」ことモーガン。
お芋君は、何をやらせても失敗ばかりで、混乱するデントン署がますますパニックになる始末・・・。
嫌味なエリート部下を振り回してきたフロストが、今度は部下のしりぬぐいに追われる毎日。
大人気フロストシリーズ第5弾!
R.D.ウィングフィールド「冬のフロスト」感想
もう5作目なので、すっかりお約束になっているが、今回の「冬のフロスト」も複数の事件が同時進行で絡み合いながら進んでいく。
起こる事件を書いていこう。
- ヴィッキー・スチュアート行方不明事件
- ビーティ暴行(?)事件
- 怪盗「枕カバー」と呼ばれる窃盗
- 娼婦(ロリータ・バーサ・チェリー・セアラ)障害&殺害事件
- コンビニ強盗事件
- 家の庭から白骨が出た事件
- トニー・スコット行方不明事件
- ジェニー・ブルーアー行方不明事件
- ヘレン・ストーク殺害事件
- コンウェイ宝飾店強盗事件
- その他
今回もたくさんの事件が起こりるが、すべてが同時に発生するわけではない。
上巻で無事に解決する話もあるが、下巻で新たに発生する事件もある。
また、一瞬だけ出てくる事件なんていうのもあるが、主に①④⑧の事件が柱となって話は進む。
今回も上下合わせて900ページ以上あるけど、スイスイ読めるのはこのメリハリの利いた内容のおかげやな。
①④⑧の事件はかなり複雑で、一筋縄ではいかない。
途中で第一の容疑者が自殺して行き詰まったりするし、フロストご自慢のカンもハズレがち。
また、連続して起こる娼婦障害&殺害事件などは、同一犯の犯行でもない。
その都度フロストは地団駄を踏むが、執拗に追いかけていくのが見どころだ。
「冬のフロスト」今回の相方は・・・・
デントン署に、若くて真面目なエリート部下が異動でやってきてフロストに振り回される・・・・
これがフロストシリーズの基本の流れだ。
でも今回は違う。
フロストよりもダメダメな男がやってきて、思う存分失敗を繰り返してくれるのだ。
フロストを悩ませる新人刑事の名前はモーガン。
フロストの事を「親父さん(おやっさん)」と呼び、配属されたばかりという言い訳も通じないほどいろいろやらかしてくれる。
モーガンのやらかしを、ざっとご紹介しよう。
- ゴロツキのレイトンの妻に、知らなかったとはいえ手を出してしまう
- 皆に頼まれたサッカーの試合録画は放送局を間違える
- バード・グラッドストンが死体に触れるのを、ぼさっとしていて見逃した
- 会議にはいつも遅刻
- カレンダーの日付に無頓着で、フロストに迷惑をかける
- 飲酒運転で事故
などなど・・・。
事件に大きく関係するものから、全く関係ないものまで幅広い。
きっと陰で女性問題を抱えているに違いないで・・・
だがモーガンは意外なことに、これが得意だ。
モーガン刑事は何をやらせても役に立たない男だったが、ことガソリン代の領収書をでっちあげることにおいては、右に出る者のいない技量の持ち主だった
「冬のフロスト」上 p54
ある意味これが出来るから、フロストもフォローしてるんかもしれんな・・・・。
普通こういうキャラは、ラストに何か大どんでん返しで活躍してくれるのだが、モーガンは最後まであまり活躍しないままだ。
書くと壮大なネタバレになるので省くが、下巻のクライマックスで、モーガンはウルトラでかい失態を犯す。
これはフロストの進退問題&人命にもかかわりそうな失敗なのだ。
「フロスト気質」でも似たような展開があったが、こっちの方がピンチ。
さてこのトラブルをフロスト&デントン署がどう乗り切るのか?
これが「冬のフロスト」クライマックスの最大の盛り上がりだ。
ちなみに前回初登場のリズ・モード刑事も再登場するが、訳あって今回はあまり活躍していない。残念。
「冬のフロスト」彼の良いところが炸裂
フロストは、いまさら言うまでもないが失敗が多い。
特に前回の「フロスト気質」ではかなりの失敗を犯してしまったが、今回は量ではなくて質。
もんのスゴイ危険な失敗をおかしてしまうのだ
でもフロストは隠ぺいをしたりしないし、マレットに対しても正々堂々とこう言う。
「責任は私が取ります」
「俺もモーガンと同罪だよ」と、バートンに言った。「いや、作戦の責任者はこの俺だから、その分おれの方が罪は重い。殴りたきゃ俺を殴れ」(略)
「泥は俺がのこらずひっかぶる」
「冬のフロスト」p378~p379
これだけではない。
「全責任を、おれにおっかぶせちまうって奥の手が、あるじゃないですか」
「冬のフロスト」p386
こんな感じで、最終章ではフロストの上司気質がバンバン炸裂するのだ。
「フロスト日和」で、フロストの魅力は「差別も区別もしない」ところだと述べた。
どんな悪党でもファーストネームで呼び、普段からこうした人たちと差別せず交流をしているんだろうなと思わせる節がいくつもあった。
でもフロスト最大の良いところは「保身に走らないところ」「いざとなったら全責任を負う覚悟を持っている事」ではないだろうか。
警部という役職だから、陣頭指揮をとらなければならない。
その結果失敗することも当然ある。
でもフロストはそんな時、絶対に部下を一方的に責めたりはしない。
キチンと「上司として部下の失態の責任を取る」姿勢を見せてくれるのだ。
超ワーカホリックで、部下も平気でこき使う、いつも同じ服を着ており清潔感ゼロ。
時間も期限も守れず、下品でだらしないことこの上ないフロスト。
でも女性含む部下たちは(そして読者も)決して彼の事を嫌いではない。
それは彼が上司が一番に持つべきものを、しっかりと持っているからに他ならない。
実際に上司になると苦労する人だろうが、ここまでしっかり責任感のある上司は珍しい。
だから、理不尽さに苦しむサラリーマンなどは、フロストに胸のすく思いがするのだろう。
R.D.ウィングフィールド「冬のフロスト」まとめ
ネコ缶評価
フロストシリーズ最高級に、様々な事件が複雑に絡み合っている。
この「最後は一体どうなるの?」のワクワクが、ラストまで飽きさせずに引っ張ってくれる原動力なことは間違いない。
ただ今回は、終わりが少々あっけない。
犯人も意外すぎなので、動機をぜひとも書いてほしかった。
そこが本当に残念だったのでマイナス1。
次でフロストシリーズは最後。
なんだか寂しいネコ缶なのであった・・・。
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