ネコ缶、今年(2022年)で早50歳。
あちこち頭も体もガタがきまくってる。
情けなくなることも多いが、その代わりこれも多い
「寛容になった」
若い頃のネコ缶なら、最近ハマっているフロストの良さが解らなかったかもしれない。
そのフロストシリーズだが、なんと今回ご紹介する「フロスト始末」で最終回なのだ。
作者のウィングフィールド氏はもう他界しているので、もうこのシリーズを読めない・・・(涙)。
寂しい限りだが、気を取り直して見ていこう!
Contents
R.D.ウィングフィールド「フロスト始末」あらすじ
今日もデントンでは事件が多発。
まずデントン・ウッドの森から、人間の足の一部が見つかったという通報が入る。
びしょ濡れになりながら捜査に行ったフロストの帰りを、未成年少女の強姦事件の知らせが襲う。
被害者のいる病院から帰ったフロストを待ち構えていたのは、セイディ・ローリングズという女性からの通報。
幼い息子がいなくなったという知らせだった・・・。
相変わらずのデントン署に、1人の男がレクストン署からデントン署に派遣されてくる。
彼の名前はジョン・スキナーという主任警部。
フロストよりも上の階級で、事件を取り仕切る責任者だった。
わざわざマレットが呼び寄せたというこの男。
実は、フロストをデントン署から追い出すために派遣されてきたのだった!
フロストがやらかしていた過去の失態を、余すところなく追及してくる冷酷なスキナー。
何十年も働いたデントン署を、フロストは追い出されてしまうのか?
大ピンチのフロスト。
だが事件は待ってくれない。
「ウェールズのお芋君」こと、モーガン刑事を引き連れて、今日もフロストは不休不眠で働きまくる・・・。
大人気のフロストシリーズ完結編。
R.D.ウィングフィールド「フロスト始末」感想
今回もご多分に漏れず、たくさんの事件が同時進行で進む。
「フロスト始末」はこれだけの事件が発生するのだ。
- 足の一部が発見される(その後何度か同じことが起こる)
- サリー・マーズデン強姦事件
- セイディ・ローリングス息子行方不明事件
- スーパーセイヴス恐喝事件
- デビ―・クラーク(と、BFのトム)行方不明事件
- ジャン・オブライエン行方不明事件
- ロニー・ロックスによる強盗事件
- アルバート・ルイスの「妻殺害事件」(狂言?)
- その他
今回は新しい検屍官とフロストの淡い恋もあるで
デントン署の人手不足も相変わらずで、フロストは今日も睡眠不足。
そして満足な食事もとれていない。
「フロスト気質」で出てきたスーパー・セイヴズがもう一度出てきて、あの暴君&モラハラな社長もパワー全開だ。
今回は事件⑤が、上下巻でかなりのウエイトを占めている。
その分、花火のような事件も多く、突然復活してあっさり解決してしまった・・・という印象を受けるものもある。
⑦「その他」の中には、今までにあまり書かれなかった、フロストの亡き妻とのエピソードの部分も。
「フロスト始末」を書いたころのウィングフィールドは奥さんに先立たれ、体調も良くない(これは遺作)。
なので、フロストに自分を重ね合わせていたのかもしれない。
いろいろある今回の「フロスト始末」で、なんといっても一番印象に残るのはこれ。
フロストを始末するためにデントン署に来た、ジョン・スキナーとフロストの対決
今回はこの「フロストVSスキナー」を中心にみていこう
「フロスト始末」見どころ フロストVSスキナー
いまさら言うまでもないが、フロストはかなり型破りな警察官だ。
読んでもらえれば解るが、大きなポイントはここ。
- 上司に全く敬意を払わないし、報告も連絡も相談もしない。
- 命令は無視するし、会議と検死解剖には必ず遅刻
- 服装はめちゃめちゃ(着替えているのか?)
- マナーにかなりの問題もある(すぐ煙草をくすねる)
- 一歩間違えたらセクハラな発言(モーガンにはパワハラな発言)
そんな訳でデントン署長のマレットは、いつも彼に悩まされていた。
が、権威主義者だが気の弱いマレットは、フロストを首にしたり異動を言い渡すことも出来ない。
そこでフロストに引導を渡すために現れたのがスキナー警部なのだ。
スキナーは基本的に権威主義・モラハラ気質でマレットに近い人間。
だがマレットには無いパワーと冷酷さがある。
そしてスキナーは、自分が頭を下げているマレット署長に対しても、実は心の底では敬意を払ってないのだ。
マレットが、上質の化粧張をほどこし(略)豪勢な署長執務室の維持経費を認められるのであれば、(略)
スキナーとしても(略)安っぽい内装に甘んじるつもりはないということだった「フロスト始末」上p206
スキナーは勧められた椅子をつかんで、デスクのマレットが座っている側に回り込み(略)おもむろに腰を下ろした。
おかげでマレットは、デスク中央の定位置からやや端のほうに追いやられる格好になった
「フロスト始末」上 p364
で、スキナーを呼んで良かったんか・・なんて悩むところもある
そしてスキナーは、マレットでもやらなかったような、徹底的な書類調査をする。
フロストの痛いところをガンガン突いて追い込むのだ。
「この領収書が発行されたガソリンスタンドは(略)2年前から営業していない!」(略)「このガソリンスタンドの領収書は、他にも5枚ある」
(略)「ひと月当たりおよそ40ポンドの不当な臨時収入を得ていることになる」
「フロスト始末」上p368~ p370
それだけでなく、マレットがリズ・モードに対して嫌がらせをしたように、スキナーは若手の女性刑事・ケイト・ホールビーに個人的な恨みでひどい仕事(誰もやりたがらない辛い仕事や超単純作業)を押し付けてくる。
「あのでぶちん大将だけど、どうしておまえさんの事をそこまでいびるんだ?」
(略)「私の父も警察官で、以前にスキナー主任警部と同じ署で勤務していたことがあります。(略)スキナー警部はいまだに父を恨んでいるんです」
フロスト気質上p452
そして最終的にスキナーは、フロストを異動させるところまであと一歩まで迫るのだ。
フロストは本当にデントン署を去らなければならないのか・・?
慣れ親しんだ仲間たちと離れて・・・・
読者ならだれでも解るが、フロストがイキイキ働けるのはデントンだからだ。
デントンに住むすべての人達と、普段から密にコミュニケーションをとっているフロスト。
容疑者となってしまった人、被疑者や被害者とも顔見知りだ。
フロストの良さは、デントンでしか発揮できない。
この対決は、下巻で、とある事件に3人(マレット・スキナー・フロスト)が、かかわったことで一気に解決する。
日本ならここでスキナーがフロストの良いところに気が付いて改心して・・・・となって大団円になるところだ。
だが、全くそうならない。
少々もやっとしたところが残る終わり方になるのだ(このあたり「ハッピーエンド至上主義」ではない、フロストシリーズならではやなあ・・・)
詳しく書くとネタバレになるので書けないが、この決着の付け方は賛否両論あるだろう。
R.D.ウィングフィールド「フロスト始末」まとめ
ネコ缶評価
やはりフロストVSスキナーの対決の終わり方が少々あっさりしすぎ。
そして今回は、かなりグロテスクな描写、解剖シーンも多い。
残酷な殺害もあり、こっち方面でも容赦なかった。
その分、「人間フロスト」の意外な面もたくさん見られたけどな。
これでフロストシリーズは終わりかと寂しくなったが、朗報!
イギリスではJ.グーバットと、H.サットンが、ジェームズ・ヘンリーという名前で、遺族の許可を得て若かりしころのフロストを書いているそうなのだ。
それと似たようなもんかな?
翻訳版が日本でも早く出ることを祈るで!
フロストシリーズをもっと読みたい方⇒一度読むとクセになるフロストシリーズはこちら