2019年

ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」このミステリーがすごい2019年度 あらすじ、感想、ネタバレまとめ

以前にも書いたが、ネコ缶は「このミステリーがすごい」を読んで、面白いミステリーを発掘している。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
当たり外れはあるけどな

前回書いた「自由研究には向かない殺人」は大当たり。
「自由研究には向かない殺人」詳しくはこちら

そいて今回ご紹介する「そしてミランダを殺す」も大当たりの作品だった。

そしてミランダを殺す
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前回の「自由研究にはむかない殺人」が「さわやか系ミステリーの大当たり」とすれば、「そしてミランダを殺す」はこう言える

「サイコパス系大当たり」

人がバンバン死んで辺りは血まみれ・・・
悪霊や霊が出てきて・・・

というのではなく、普通の人間が主人公。
主要登場人物はわずか4人。

なのに思わず背筋がゾッとするコワさがある。

どういうことなのか?
詳しくみていこう

ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」 あらすじ

実業家のテッドは、ある日空港で一人の女性と話をした。

彼女の名前はリリー。

美しく聡明な女性だった。

お酒や雰囲気もあり、テッドはつい自分の妻・ミランダが浮気をしている事を話してしまう。

そしてテッドはこうも言ってしまった。

テッド 
テッド 
妻を殺したい 

リリーに呆れられ、去られるかと思いきや、彼女は思いがけないことを言う。

リリー 
リリー 
そうすべきだと思う 

驚いたテッドは彼女の様子を見たが、それは全くジョークでないことが解る。

テッドとリリーは同じ飛行機の中で、ミランダを殺す話をする。

そしてその後の打ち合わせを経て、ミランダ殺害計画は稼働。

いよいよ完全犯罪実行の日になったが、思いがけない事件が起こってしまい・・・。

ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」 感想

登場人物は4人。
(後半1人増えるが、主に4人)

その4人立ち位置から見た話が、生い立ちなどを含めながら淡々とつづられている。

連続殺人や、密室、遺言公開、親族の争い・・・などの派手なことは全く起こらない。
なので退屈するかと思いきや、実質はこうだった。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
めっちゃ面白い

特に第2部。
思いがけない事件が起こってから、物語は一気にサスペンスになる。

思いがけない事件からの、高速を離れ下道を走るような展開。
おもわず読者は、ぐいぐい引き込まれていくだろう。

そして読者はおそらく、こうも思うはずだ。

 
 
リリー、逃げ切ってくれ 
 
 
このまま終わってほしい・・・ 

ハラハラドキドキしながら迎えるラスト。
無事に終了するかと思いきや・・・・

ラスト1行で、究極のどんでん返しが来る。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「ルビンの壺が割れた」のラストみたいやで。
いや、それ以上かな。 
ルビンの壺が割れた
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本を持ちながら、読者はしばしボー然とするだろう。

でもそこで、こういったことわざがフッと頭をよぎるのは、日本人のDNAなのかもしれない。

「天網恢恢疎にして漏らさず」
「自業自得」
「因果応報」・・・・

メガトン級衝撃を与えてくれるラスト1行。

このどんでん返しのために読んでも悔いはない!

「そしてミランダを殺す」みどころ わるいやつら

くどいようだが「そしてミランダを殺す」の登場人物は、たったの4人だ。

  • リリー
  • テッド
  • ミランダ
  • ブラッド

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
後半ここに刑事のキンボールが入るけどな

ネタバレになるのであまり詳しく書けないが、ミランダとリリー、この2人の女性はハッキリ言ってこうだ。

めっちゃ悪い奴(女)

ただタイプが違う。

ミランダは昔から小説に出てくる、いわゆる「悪い女」。

強欲で、贅沢好き。でも派手な美女で魅力的なもんだから、男の人が群がってくる。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
で、お金欲しさに罪を犯す。でも実行は男にやらせる・・・とかな

ただ少々ツメの甘いところもあり、そこからほころびることもある。

要するに、実に解りやすい悪女なのだ。

だがリリーは違う。

見た目も美しく清楚で知的。
いわゆる「虫も殺さない」という感じの女性だろう。

ミランダは「自分の欲を満たすために人を殺すことをいとわない」女性だが、リリーはこの哲学をもっている。

自分に対して悪いことをしたヤツを制裁するための人殺しをいとわない

そこに法律や良心は全く入っていない。

悪い人から逃げたり、「こんなのよくあること」として、その後気分転換を図るということは・・・ない。

何もそこまで・・と思うが、これがリリーのゆるぎない正義感。

法も良心も道徳も超えた、自分だけの秘密の正義感・・・。

だから背筋がゾッとするコワさがあるのだ。

物語の最初の方に、そのスピリッツは書かれており、これは最後まで貫かれる。

殺人というのは(略)悪いことじゃないと思ってる。

(略)少数の腐ったリンゴを、神の意志により少し早めに排除したところで、
どおってことないでしょう?(略)」

「そしてミランダを殺す」p43

思わず納得しそうになるくらい、サラッとそして堂々と言ってのけるリリー。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
似たようなことを言い、炎上した人、失脚した人は日本にもいるよなあ。 

リリーは紛れもない「サイコパス」なのだろう。

サイコパスは、一見とても魅力的に見えるというのを聞いたことがある。

それが本当なら、リリーも確かに男たちを(テッド・キンポール刑事)を魅了している。

市井に何気なく潜み、自分独自の正義感で人殺し鮮やかにやってのけ、何とも思わない人間・・・
それがもし身近にいたら・・・

リリーの行動や考え方にもゾッとするが、もし身近に・・という事にもゾッとする。

この2重の怖さが「そしてミランダを殺す」の面白さをささえているのだ。

テッドもブラッドも、それなりに悪いところがある。
ミランダもモチロン悪い。
でもこの3人の方がまだましよな・・・。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
むしろ気の毒に思えるで 

ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」 まとめ

そしてミランダを殺す
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ネコ缶評価

一気に読めた。
特に第2部からは止まらなくなったな。

クリスティの「終わりなき夜に生まれつく」を思せる淡々とした流れ(ラストで仰天するところも似ている)の中の、満載のサスペンス要素。

「終わりなき夜に生まれつく」詳しくはこちら

決して派手さはないけれど、ハラハラして飽きさせない。

読んで損の無い作品。
ラスト1行のために読むべし!

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
ピーター・スワンソンはまだほかにも書いているみたいなので、早速読んでみよ♪
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