最近、イギリスミステリーをよく読んでいたネコ缶。
今回もイギリスミステリーかな~・・・なんか面白そう・・・と、何気なく手に取ったのがこの本。
「裏切り」
ところがどっこい、これを書いたのはドイツ人女性。
ドイツ人女性が、イギリスを舞台に、イギリス人のミステリーを書いていのだ。
ふーむ、そうかと思いつつ読み進めていった感想はこれ。
「めっちゃ面白い」
ドイツ人による、イギリス人のイギリス舞台なミステリー、早速みていこう。
シャルロッテ・リンク「裏切り」あらすじ
名門スコットランド・ヤードの刑事、ケイト。
彼女はお世辞にも敏腕とはいえず、同僚とのコミユニケーションの取り方にも悩んでいる女性だった。
そんな彼女の心のよりどころは父のリチャード。
元優秀な刑事でもあるリチャードとは何でも話せて、ケイトにとってはとても頼もしい存在だった。
だがそのリチャードが何者かに惨殺される。
元警察官でもあり、金品に手が付けられていないことから、強い恨みを持つものの犯行とされた。
捜査が始まるが、犯人は一向に挙がらない。
その上、父親の秘密を知っていそうな女性までもが惨殺される。
業を煮やしたケイトは、独自で捜査を始めていく・・・。
時を同じくして、こんな小さなトラブルが少し離れたところで発生していた。
人里離れた農家で、休暇を取ろうとしていたジョナスとステラ、そして養子のサミー。
だがそこになぜか、サミーの生みの親のテリーとその恋人ニールが現れる
そして休暇は、次第に不穏なものになっていき・・・・。
ドイツで発売後3か月で、売り上げNo1になった衝撃作!
シャルロッテ・リンク「裏切り」感想
ヒタヒタと迫る、いわゆる「火曜サスペンス」的ミステリー。
2つの話が互いに描写されており、最終的に(軽く)結びついていくような構成になっている。
そのあたりを詳しくみていこう。
2部構成による話の流れ
さっきも述べたが、物語はこの2つの話が交差して進む。
- リチャード惨殺事件
連続殺人事件の発端
娘のケイト、スカボロー署のケイレブ、ロバート、ジェインらがこの事件を追う - クレイン家の苦悩
ジョナスとステラは不妊治療の末にサミーという養子をもらう。
生みの親のテリーと、その恋人のニールがなぜか執拗に付きまとう
読んでて気分が悪くなるで・・・
これだけだと、普通のミステリー。
べストセラーにもならなかっただろう。
だがこの「裏切り」の面白さは、実はミステリーだけでなくこれ。
登場人物らが、それぞれに深刻な問題を抱えていて、それが物語に深みと影を落としている。
例えばこんな感じだ。
アルコール中毒患者の心理描写が絶妙。
三者三様の悲しみと苦悩が実にリアル。
もう一人刑事(ロバート)がいるが、彼だけフツーの人で、なんだか影が薄い・・・。
一方、クレイン家も負けていない。
登場人物の苦悩の描写がもう完璧。
読んでいて辛くなる。
「裏切り」がベストセラーになったのは、ミステリーのトリックもさることながら、この心理描写や登場人物の抱える闇がリアルなところに他ならない。
「裏切り」に完璧なヒーロー・ヒロインは出てこない。
いや「優秀さ」を持つ名探偵・名刑事すら登場しない。
ヒロインのはずのケイトですら、全く魅力的に描かれていないほどだ。
「あ~、こういう人いるよね・・・」という登場人物たちが、地味にかつ必死に生きている所に親近感を持つのではないだろうか。
そしてラストは悲しいことに、決して大団円ではない。
犯人のいう「不公正」という一言は、ぐさりと胸にささる。
事件は一応の解決を見るが、各自の抱える問題は決して解決していない。
もっとひどくなっていくような予感すら感じさせる人物もいる。
そんな中、ケイトは父親との呪縛を逃れる。
そして自分の道を進もうとするところには、「裏切り」唯一の希望が持てる場所だ。
シャルロッテ・リンク「裏切り」まとめ
ネコ缶評価
とても面白かった「裏切り」だが、欠点が無いわけではない。
ラスト近くで、突然登場人物が浮上。
でもってそれが犯人なんやな~・・というのが丸わかりなのだ。
これは少々びっくり&がっくり
もう少し早く何らかの形で出しておいた方が、伏線として良かったと思うのだが。
後、ネコ缶が個人的に超苦手な「子供が犠牲になってる描写が多い」のも少々マイナス
(海外のミステリーには多い)
とはいえ、面白かったのは確実。
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