前回、「聞く読書」で「黒牢城」を読んだ(聞いた)話を書いた
目も疲れないし、マッサージ器を腰に当てたり、目を閉じてメグリズムをしながら読書が出来ることにすっかり味をしめたネコ缶。
またしてもオーディブルでこれを読んで(聞いて)みた
「六人の嘘つきな大学生」
「このミステリーがすごい」の2022年度8位の作品だ。
もちろん「このミス」以外でもいろいろ賞を取ってる。
賞をいくつも取るだけあって、これがまた結構面白く、一気に読み終えてしまった。
ではご紹介しよう!
「六人の嘘つきな大学生」あらすじ
新進気鋭のIT会社・スピラリンクスの最終面接には6人の大学生が残った。
彼らに与えられた最終面接の課題はこれだった。
「グループディスカッション」
ここで人事部の鴻上達章が、衝撃の一言を発する。
6人全員の採用もアリです!
色めく6人。
早速その日から最終面接の日まで、日を決めて集まり、課題について話し合いをすることに。
最初は面接を受けるライバルだったはずの6人。
だが不思議とチームワークが上手く回りだし、いつしかこんな思いを抱くようになる。
高揚感にあふれる6人。
だがそんな時、非常なメールが鴻上から届く。
6人の中で、一番スピラリンクスにふさわしい人物1名をみんなで選ぶこと
そしてその人を、弊社は必ず採用いたします。
唖然とする6人。
今までのチームワークや仲間意識は崩れだし、雰囲気は乱れていく。
そして迎えた当日。
6人が集まった会議室には、謎の封筒があった。
開けてみるとそこには、6人が過去にやらかした不祥事が赤裸々に描かれていて・・・・・。
採用される1人は誰なのか?
そしてこの封筒を置いた人物は誰なのか?
このミステリーがすごい2022年度国内ランキング入賞他、多数の賞を受賞した作品!
「六人の嘘つきな大学生」感想
「就職活動」と「面接」とを、ミステリーに昇華した珍しい作品。
こんな設定は初めてじゃないだろうか。
そこに流行のSNSエゴサーチ的なことも絡む。
実際に就職活動をしている学生たちは、かなり身近に感じるエピソードの多い作品なのではないだろうか。
話は内容的に、大きく2つに分かれる。
- 6人の出会い~面接終了まで
- それから8年後
※所々で面接参加者へのインタビューが挟まれ、物語の良いリフレッシュ剤になっている
それぞれを細かくみていこう。
1 6人の出会い~面接終了まで
1はハラハラするミステリー仕立て。
密室殺人に近いものも感じる。
そして男女6人の個性が上手くかみ合い、ライバルからチームへと変貌していく様子は、さわやかな青春ものをも思わせる。
だがそれが瓦解し、密室の会議室に入った後の緊張感や、秘密が暴露された後の様子、そして栄光の1つの椅子を争う様子は、人間の本質を描いていると言ってもいい。
面接の場で、醜い罪の暴き合いになるか・・・・と思いきや、主人公・波多野の必死の采配で流れは変わる。
下劣な封筒を用意したのは誰か?という謎解きに変容するのだ。
この辺りの悪事の暴かれ方や、限られた時間と空間で犯人を暴いていくさまは引き込まれる読者も多いだろう。
物語は主人公・波多野の目を借りて急ピッチで描かれ、犯人判明。
確かに犯人は解ったのだが・・・・。
なんともすっきりしない形で、驚愕の第一部のラストを迎える。
ここで終わってたら「ルビンの壺が割れた」みたいな、嫌~なミステリーだった。
それも物語的には、キレイにまとまっていていいかもしれない。
だが物語はまだまだ続く。
戸惑いつつも、救いを覚える読者も多いはずだ。
2 それから8年後
2は名探偵(といっても面殺参加者の1人)による謎解きだ。
設定は、世にも奇妙な面接から8年後。
晴れてスピラリンクス社員となった1人が、6人のうちの1人が死んだことがきっかけになり、面接で起こったこの2つの真実を探っていく。
- あの封筒を用意したのは「本当は」誰なのか?
- あの暴かれた悪事は、本当にあったことなのか?事情があったのでは?
素人探偵が難航しながらも、ジワジワ真実にたどり着くさまは、1部同様手に汗を握る。
それと同時にこれも見事に描かれている。
全体を通して、作者が言いたいことは2に要約されている感がある。
1はあくまでもその前振りだ。
まとめるとこれ
- 人は一面だけを見て、良い人とか悪い人の判断はしては危険なのではないか。
違う面から観たり、エピソードを最初から最後まで調べたうえでの判断をしないと、その人物をいい悪いは言えないのではないか - 100パーセントの良い人も、100パーセントの悪い人もいない
主要な6人のキャラだけではなく、チョイ役として出てきた人物でもこの設定は生かされている念の入れよう。
1冊の中で、2つのテーマを描き分けてあり、その手腕はお見事だ。
ネコ缶の超個人的な意見
ネコ缶の超個人的な意見だが、「就職活動」でここまで人が狂ってしまうのかと思う。
6人とも8年たった後に「あの時はどうかしていた」と我に返っているが、その原因はこうではないか。
22歳の段階で、「失敗したらもう人生は終わり」というものすごい焦り。
人生は100年のはずだ。
それなのに22歳で失敗したらもう終わりだったら悲しすぎる。
そして未来あるはずの若者が、そう固く信じているなら・・・なお悲しい。
ネコ缶は超3流大学な上、22歳のときは氷河期。
その上体を壊してまともな就職活動をしていない。
結果、いわゆる企業のオフィス仕事はおろか、まともな就職活動はしたことがない。
ハッキリいって正社員で働いたことなど、人生の5年ほどだ。
それでも今は結婚もし、それなりに豊かに暮らし、子供も出来て幸せだ。
就職活動でうまく上場企業に就職できても、幸せは約束してくれない。
会社はあくまで固定給をもらうところで、年金などは個人でなんとかするという事になれば、就職活動の異様さも少し収まるのではないかと思われる。
ネコ缶には息子が1人いる。
22歳で失敗しても決して人生は終わらない、挽回はできる
・・・と自分の人生を踏まえて、教えてやりたいと思う。
「六人の嘘つきな大学生」 まとめ
ネコ缶評価
かなり読みごたえはあるが、欠点がないでもない。
テーマが壮大になりすぎたせいか、肝心のトリック(封筒のトリック、最後のスミノフの写真を選んだ理由など)犯人の動機が少々ご都合主義。
そううまくいくだろうか?という感が否めない。
2も少々ごちゃごちゃしすぎの感がある。
とはいえ「就職活動」「グループディスカッション面接」という設定と、ミステリーを合わせるという技は斬新。
今後どんな作品を書いてくれるのか楽しみだ。
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