アガサクリスティの「ナイルに死す」は、婚約者を友人にとられたという設定から始まる物語だ。
「ナイルに死す」は、10点満点のよく出来た物語だが、今回、似たような設定の物語を紹介しよう。
それは「杉の柩」!
「杉の柩」も、婚約者が、ある日突然ほかの女性に一目ぼれをしてしまい、あっけなくお別れ・・となってしまう。
しかもその「彼氏を取った憎い女性(メアリイ)」が「彼氏を取られた女性(エリノア)」の作ったお昼ご飯を食べたら、なぜか死んでしまうのだ!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」 あらすじ
幼馴染でいとこ同士のロディーとエリノアは、結婚間近なカップル。
彼らは、ゆくゆくは大金持ちの叔母、ローラ・ウェルマンの財産を2人で引継ぎ、そのままその家で暮らすつもりをしていた。
だがロディーはなんと、叔母の家の門番の娘・メアリイに一目ぼれをしてしまうのだ!
悲しみをこらえて、婚約を解消するエリノア。
そしてちょうどそのころ、叔母も亡くなり、財産をエリノア1人で相続することになる・・・。
ドタバタのしばらく後、遺品の整理のために、叔母の家にやってきたエリノア。
そして、たまたまそこに来ていたメアリイと、看護婦のホプキンスに、エリノアはお昼をふるまう。
するとなぜか、メアリイだけが死んでしまったのだ!
逮捕、拘束されるエリノア。
だがなぜメアリイだけが死んでしまったのか?
本当にエリノアが毒を仕込んだのか?
疑惑は、叔母ローラ・ウェルマンの死亡にもつながっていく・・・。
アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」 感想
「杉の柩」もいい話だ。
女性なら、ついつい共感してしまうんやないかな。
見どころを書いていこう
「杉の柩」見どころ1 女性心理の描写のたくみさ
エリノアは、幼いころから深くロディーを愛していた。
だが、その気持ちをほとんど表に出さない。
なぜなら・・・
ロディ―は、気持ちを大っぴらに出す、あけすけな女性が嫌いだからだ。
ひどく、しつっこい女がいるね。
ほらイヌっころみたいに、ありったけの愛情を振りまいて歩いてるみたいな・・・。僕はそういうのは我慢ならないんだ。
「杉の柩」27ページ
なのでエリノアは、熱い気持ちを抑え、クールにふるまい、見事ロディーの心を捉えた。
だがエリノアは、ロディ―といても安らぎを得られず、苦しさ、せつなさばかりを感じるようになってしまう。
この辺りは、100年たった今でも、女性なら共感できるのではないだろうか。
いや、100年たった今どころか、源氏物語の六条の御息所なら、首がもげるくらいうなずいてくれるだろう。
そしてエリノアは、心変わりしたロディーを責めずに、気持ちを隠してこうも言う。
3か月ほどお一人で、新しい土地を見たり、新しいお友達を作ったりしていただきたいの。
あなたは今、メアリイ・ジェラードを恋していらっしゃるけれど、今はあの娘に近づく時じゃないの。
(略)3か月たった時に気持ちを決めたらいいのよ。
その時に本当に愛してるのか、一時の気まぐれなのか解るわ。それでも愛していると思ったら、メアリイに言えばいいのよ。
「杉の柩」112ページ
苦しいなあ・・エリノア・・・。
本当は3か月たって気持ちが変わらなければ、自分のところに戻ってほしいって言いたかったんじゃなかろか?
こんな理解あることを言っても、エリノアの心はこうなのだ。
この感情ゆえ、ヒステリックな奇行も目立つ。
この辺り、理性的な女性なら、痛いほど気持ちが解るだろう。
だが、ロディ―を奪った(ことになった)メアリイも決して悪い娘ではない。
目をかけてくれたローラ・ウェルマンのおかげで、門番の娘ながら、いい教育も受けさせてもらったが、それに甘えず自立しようと頑張っている。
けなげな良い娘さんなのだ。
勿論メアリイは、ロジャーにも決してなびいていないし、気持ちを利用する事もしていない。
ひたすら、自立したい!と職業学校に行ったりしてるのだ。
また、エリノア、メアリイだけでなく、ローラ・ウェルマンの悲しい恋も、同情・共感できるところが満載。
「杉の柩」見どころ2 毒薬のマニアックさ
アガサクリスティは元薬剤師のせいか、毒殺の薬の種類や使い方が、やたらマニアックなことがある。
スタイルズ荘の怪事件はこちら
三幕の殺人はこちら
もの言えぬ証人はこちら
今回もその「クリスティの毒薬の知識が光る」マニアックな作品なのだ。
「杉の柩」では、看護師のホプキンスがモルヒネを盗まれたということで、モルヒネがこの物語を駆け巡っている。
もちろん、メアリイの死因もモルヒネ。
だが、あっと驚くトリックに使われた薬は、別にまだあるのだ。
名前も効用も、おそらく誰も知らない薬が、杉の柩では超重要な役割を果たす。
アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」まとめ
ネコ缶評価
展開に問題はなく、初期の頃の作品と比べたら、流れるような感じでかなり読みやすい。
「杉の柩」は裁判の場面が多く出てくる。
真犯人も、裁判の証言の最中に判明するという珍しい展開。
ラストはどうなるのかとハラハラするが、最後はいつものように収まるところに収まる。
一安心やで。
それはそうと「もの言えぬ証人」以来、ヘイスティングスを見ていない。
どうしているのか?ちょっと心配だ。
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