遺産相続のトラブルといえば、ミステリーにはつきもの。
偏った遺産の配分にしたばっかりに、残された遺族たちが骨肉の争いを始める・・・。
よくある殺人事件の下地だ。
超有名なこれなんて、その先駆けなのではないだろうか?
また、遺産の配分だけでなく、隠し子がいたことも判明したら、もめごとはさらにヒートアップするのも世の習い。
今回ご紹介する「もの言えぬ証人」は、遺産の配分をめぐって、一族が水面下でジトっと争う・・・そんな話なのだ。
しかも、依頼の手紙を受け取ったポアロが赴いてみたところ、本人がすでに死亡していたといういわくつき。
さっそくいってみよう!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ) 「もの言えぬ証人」 あらすじ
ポアロはある日、老婦人エミリイ・アランデルから手紙を受け取った。
要約するとこのような内容であったため、ポアロはヘイスティングスとさっそくエミリイの元に駆け付けた。
だがなんと、エミリイは2か月前に亡くなったとのこと。
そして今はこんなうわさがたっていた。
だから、なんかもめてるらしいよ!
噂の通り、お金に困っている姪や甥たちが、ポアロにこんなことを懇願するしまつ。
付添婦のミニー・ロウスンに、大半を渡すという遺書を残したエミリイ。
その意図は何だったのか?
あの遅れた手紙は、誰が何のために出したのか?
そもそも、エミリイの死因は本当に病死だったのか?
遺産をもらえなかった姪と甥たちが、水面下で静かに動き出す・・・。
アガサクリスティ(ポアロ)「もの言えぬ証人」 感想
もの言えぬ証人は、トリックはもとより、親族たちの心理戦ともいうべき争いが面白い。
そこを詳しく述べていこう。
もの言えぬ証人 見どころ1 つかみがOK
ネコ缶、出だしからこう思った。
エミリイを取り巻く状況を、エミリイ目線で書かれているのだが、そのちょっと意地悪な行動や目線が、橋田寿賀子ドラマに出てくる老婦人みたいなのだ。
とくにエミリイの付添婦に対する態度は、「イケず」の一言。
「あ~こんな人いるよなあ」という感じで、一気に物語に入ってしまう。
この「つかみ」はかなりいい。
もの言えぬ証人 見どころ2 謎がどんどん深くなる
「もの言えぬ証人」は、付添婦9:メイドたち1で遺産を与えてしまったばかりに、お金に困った姪と甥が何やらよからぬことをたくらむというのが筋だ。
でも途中から、エミリイの死因(病死)もどうも疑わしくなってくる。
直系の姪と甥だけではなく、その恋人や配偶者の行動までもが怪しく感じて、しまいにはこんなことまで考える。
おまけに遺産を相続したミニーも、「頭が悪くてグズ。大した仕事はしていない」と皆はいうが、妙に賢いところも見える。
なので「グズの芝居をしていて、実はエミリイに、有利な遺書を書かせたのではないか」としまいに思ってしまう。
このアランデル家の「一見取り澄ました高貴な一族だけど、一皮むけば怪しいとこだらけ」みたいなところが、この物語を面白くしている。
そしてクリスティは、皆が大好きなこの流れを、容赦なく面白く書いてくれる。
「もの言えぬ証人」は、☆10点の作品に比べたら、トリックそのものは、少々見劣りがするような気がする。
でもこの「親族骨肉の争い」「遺産を巡ってのあらそい」はネコ缶ご飯が3杯だべられるくらい好きなテーマ。
このテーマが好きな人は、人物のやりとりだけで8割くらい楽しめるで!
「もの言えぬ証人」見どころ3 マニアックな毒
「もの言えぬ証人」の見どころ3つ目は「毒の種類」だ。
クリスティは、一時薬剤師の仕事をしていたことがあるせいか、毒殺の時はマニアばりに芸の細かいことをしてくれる。
スタイルズ荘の怪事件しかり、三幕の殺人しかり。
⇒スタイルズ荘の怪事件についてはこちら
⇒三幕の殺人についてはこちら
今回もその「芸の細かい毒殺」の中に入るだろう。
おそらく誰も、毒の種類を言い当てられないだろうし、その毒にこんな性質があったのかという事もほとんどの人は知らないだろう。
それほどまでに「もの言えぬ証人」の毒は際立っている。
昨今のミステリーで、出てきたのを見たことはない。
ハッキリ言って、謎解きより印象に残るくらいだ。
また、今回ポアロのポアロは、詐欺師なみの動きをしてくれる。
あちこちで身分を偽り、容疑者から話を聞き、紳士らしからぬ立ち聞きも何度もしている。
いつものポアロとは、ちょっと違う行動をしてくれるのも見どころだ。
アガサクリスティ(ポアロ)「もの言えぬ証人」まとめ
ネコ缶評価
もの言えぬ証人では、犬のボブが重要な役割をしている。
ボブの気持ちを、ヘイスティングスが代弁してやっているのだが、これがなかなか的を得ている。
名わき役・ヘイスティングスの意外な特技が解って楽しい(個人的に「シンデレラ」は元気なのか?が気になるところやな。)
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