ミステリーには碇石というか、パターンがある。
何らかの事件が起こる→死体が見つかる(事件と死体は1セットになることも)→捜査が始まる→犯人が見つかる→探偵・刑事の謎解き
・・・という感じだ。
これはもう100年前から変わらない。
ところが今回ご紹介する「第三の女」は、かなりの型破りなパターンだ。
なんと最初に「私は、人を殺したかもしれない」と言う女性が、ポアロ宅に来るというところから始まるのだ。
そんな謎のミステリー、「第三の女」みていこ!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ)「第三の女」あらすじ
ポアロが朝食を摂っているところに現れた、一人の若い女性。
なんとこんなことを言っているのだ。
結局その女性は、そのまま何も依頼せずに、逃げるように帰ってしまう。
そしてそのまま、彼女は行方不明に・・・。
ポアロは不思議に思い、オリヴァ夫人にいきさつを話すと、オリヴァ夫人はこういう。
興味を持ったオリヴァ夫人とポアロとで、調査を開始。
ノーマが、2人の女性とルームシェアをしているという、マンションに行ってみたり、ロンドン郊外のレスタリック家を訪問してみたりする。
そこではノーマがからんだ、これという大きな事件は見つからなかった。
だがノーマの周りでは、なぜか不思議な傷害事件があり、ナイフなどがノーマのタンスから出ていることが判明。
おまけにノーマは義母と折り合いが悪く、義母を毒殺しかけたという噂まで出てきたのだ。
自分でも解らない間に、何かをしているのではないか?
そんな疑問を、周りが持ち、不安になるみんな。
だが相変わらず事件もなく、死体も見当たらない。
一体どういうことなのか?
そしてノーマはどこへ行ったのか?
そんな中、とうとう本当に殺人事件が起こる。
そしてその現場には、ノーマが呆然と立っていて・・・・。
クリスティの分身とも思える、オリヴァ夫人とポアロが組んで、事件の調査に大奮闘!
アガサクリスティ(ポアロ)「第三の女」感想
ものすごく不思議な話。
なんせ犯人はいるのに、事件がないのだ。
奇妙に思いつつページをめくっていくと、ノーマの置かれている環境が、少しずつ解ってくる。
- 父親が愛人と駆け落ち、父親不在の間に母死亡
- ビジネスで成功して帰ってきた父は、再婚していた
- ノーマは新しい母親とそりが合わず、どうも義母に毒を盛ったらしい
- 素行の良くない若い男と結婚を考えているようだ・・・
そして未遂に終わっているが、ノーマはいくつかの障害事件をも、引き起こしているような感じがするのだ。
読者もつい、こう思ってしまう。
でもどれだけ探しても、ノーマが殺したらしき死体が見当たらない。
気をもみながら読み進めていくと、ようやく300ページを超えたあたりで(ほとんど最後の方)ようやく殺人事件が起こる。
その後ポアロの謎解きが始まるのだが、ここでようやく、ノーマが言っていた「殺したかもしれない」人物が解る。
それまではポアロの感情や内省が、かなり書かれる。
ここまでじっくりと、ポアロの内面を書くのは珍しいかもしれへん。
その分ちょっとスピード感には欠けるけど、じっくり読んでいってな。
犯人のトリックのヒントは「満潮に乗って」とちょっと似てるし、復習してや。
「満潮に乗って」はこちらから
じゃあちょっと、ほかの見どころ紹介していこか!
「第三の女」見どころ1 オリヴァ夫人大活躍
今回の見どころその1は、オリヴァ夫人がめちゃ活躍すること。
「開いたトランプ」以降、何かと登場しているオリヴァ夫人。
これまでにも、何度か作品に登場し、ポアロの良き友人として活躍してきた。
でも「第三の女」では、尾行はするわ、犯人に襲われて負傷するわで、ポアロよりも積極的に動き、ポアロに指示まで出し、結構無茶をしてくれる。
オリヴァ夫人、意外と肉体派やってんやな!
「第三の女」見どころ2 状況が現代にかなり近くなってくる
読んでいて気づくことが、人々の暮らしの変化だ。
大分現在の生活に近くなっている。
「第三の女」が書かれたのは1966年で、戦後も大分たったころだ。
もう貴族が豪邸で、召使をもって優雅に暮らしている・・・・という時代でもない。
(イギリスだから多少はあっただろうが、ポアロの拠点・ロンドンではもうそんなことはなくなっている)
登場人物の若い女性たちも、当たり前のように仕事を持ち、仲間とルームシェアをして暮らしている。
ノーマの彼氏・デイヴィットも、ビートルズを意識したようなファッションをしていたりもする。
もう一つ興味深いのは、2010年の今でも耳にするような名前の「麻薬」が出てくるところだ。
ファッションのように、都会の若者が麻薬を使っているような描写も出てきて、この辺りからも近代に来たなという感じがする。
そらポアロも嘆くで~。
アガサクリスティ(ポアロ)第三の女 まとめ
ネコ缶評価
ポアロシリーズには、「登場人物がラストで結婚しちゃう」という事がよくある。
今回もそのパターン。
「第三の女」は、ポアロの内面・感情の描写が多くて、なんだかモノクロの淡々とした映画を観ているような感じだった。
構成は良かったんやけど、内面を書きすぎたせいか、ちょっと重くなってしまったかな。
でもラストの結婚で、ちょっと明るい現実に戻される感じがあるで。
あ、ちなみに、ポアロとオリヴァ夫人が結婚するわけではないので、期待したらあかんで!
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