アガサクリスティは、過去に起こった事件を掘り起こしたり、現在の事件と絡めたりするのがうまい。
大成功したのが「5匹の子豚」
「マギンディ夫人は死んだ」も良かった。
これは何年か前の事件が、実は冤罪じゃないかって言いだしたのが始めやったな。
今回の「ハロウィーン・パーティ」も、過去の事件を掘り返して、成功している作品の1つだ。
「ハロウィーン・パーティ」は、ただ単に過去の事件を誰かが依頼して、ポアロが捜査の末解決・・・というのではない。
パーティの準備中、この一言を発した子・ジョイスがいた。
みんなは当然「どうせ嘘だ」と言って相手にしていなかった。
だがジョイスは、パーティが終わる頃に死体で発見されてしまうのだ・・・。
この事から「本当に殺人事件があったのでは?そして目撃者のジョイスが殺されたのでは?」という疑問が生じたのだ。
そこから過去へとポアロたちがさかのぼっていく・・・。
ちょっと変わった構成だが、詳しくみていこう!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ)「ハロウィーン・パーティ」 あらすじ
その時は人殺しって解らなかったんだけど、今は解るわ。
あれは人殺しよ!
ジョイス・レノルズはハロウィン・パーティの準備の時、こういった。
もともと虚言壁のあるジョイスの事、だれも本気にはしなかった。
だがパーティが終わったとき、なんと彼女は死体で発見される・・・。
リンゴ食い競争の桶の中で、溺死させられていたのだ!
パーティに参加していたオリヴァ夫人の相談で、ポアロが動き出すと、かつてその地区には4つの事件があった事が判明。
殺人事件もモチロン含まれており、どの事件も犯人はまだ挙がっていない。
興味を持ち、調査を続けるポアロ。
次第に、過去に起こった4つの事件が、徐々につながりを見せてくる。
そしてパーティの参加者のうちの誰かが、ある事件とかかわりがあることが判明しだした時、第2の事件が・・・。
かつての友人、スペンス刑事も登場!
アガサクリスティ(ポアロ)「ハロウィーン・パーティ」感想
ネコ缶、実は「子供がからんだ事件」が嫌いなんや。
一応。
子供の葛藤や恐怖・苦悩なんかがつづられていると、絶対に読めない。
でもこのハロウィーン・パーティは不思議と読めた。
子供の恐怖とか葛藤などは、ほとんど書かれていないからかもしれへん。
もしネコ缶とおなじ人がいたら、安心して読んでな!
じゃあ見どころ行こうか
「ハロウィーン・パーティ」見どころ1 過去の事件が繋がっていく面白さ
ジョイスが殺される以前に、この地域では4つの事件があった
ミセス・ルウェリン・スマイス事件
大金持ちのスマイス夫人が死んだとき、親族ではなく、付添婦オルガにすべての財産を譲るという遺書が発見される。
そののち、その遺書はオルガの偽造と判明。
オルガは失踪し、今でも見つかっていない
シャーロット・ベンフィールド事件
女店員のシャーロットが殴り殺される。
2人の若者(ピーター・ゴードンとトマス・ハッド)が容疑者として挙がったが、決着はついていない。
レズリー・フェリア事件
弁護士の書記が刺殺される。
居酒屋の主人の奥さんと恋愛関係。亭主も奥さんもシロ。
レズリー自身も軽犯罪(文書偽造など)で捕まったことがある。
ジャネット・ホワイト事件
学校から帰宅する途中で絞殺された女性教師。
ストーカーのような男がいたらしい
それぞれが全然関係のない事件なんやけど、調査を進めていくと、じわじわとつながりを見せる項目が出てくる。
そしてパーティの参加者の中にも、これらの事件に関係している人間が何人かいたことも解る。
このつながりを見せていく過程が、ゾクゾクするほど面白いのだ。
当然読者はこう思うだろう。
小学生が見そうな事件かあ・・どれかなあ
そんな殺され方した事件ってどれかしら?
これがわかれば事件解決やで!
「ハロウィーン・パーティ」見どころ2 パーティでのイベントが凄い
「ハロウィーン・パーティ」にはいくつかの出し物が書かれている。
- 箒の柄の競争
- 小麦粉切り
- リンゴ食い競争
- ダンス
- 鏡占い(未来の恋人が写る)
- スナップ・ドラゴン
などなど。
作品の中で「リンゴ食い競争」と「スナップドラゴン」が結構詳しく取り上げられているので、紹介しよう。
リンゴ食い競争とは
リンゴ食い競争は、日本でいう「パン食い競争」に似ているかもしれない。
日本の場合は運動会などで、パンをつるして、手を使わずに口でパンを取り、ゴールまで走るというもの。
リンゴ食い競争は、「桶の中にリンゴを浮かせて、リンゴにかみついてすくう」というものなのだ。
歯、たつんかなあって心配になるよな。
これがジョイスの事件と直結するんやけど・・・さもありなんやなあ・・・。
スナップドラゴンとは
パーティのオーラスで行われていた「スナップドラゴン」。
おそらく日本では、聞いたことないイベントだろう。
簡単に言うとこういうことだ。
まず部屋を暗くして、お皿に干しぶどうをたくさん入れ、ブランデーをひたす。
そして・・・
火をつける!
で・・・
素手で火の中から干しぶどうを取る!
もはやこれ、度胸試し(ワイルド版肝試し)やないか?
もしくはなんか宗教的なイベント?
いやはや、日本では子供のパーティには絶対やらへんよなあ・・・。
水と火の、なんともワイルドなイベントでした・・・。
「ハロウィーン・パーティ」見どころ3 キャラの会話がマニア受け
「ハロウィーン・パーティ」はポアロシリーズではもう終盤。
全33作中の、31番目なのだ。
面白いことに、この辺りになってくると、「昔○○事件で・・・」などと、ポアロたちが話したりするのだ。
今回ポアロは、情報をもらいにスペンス刑事のところに行っている。
スペンス刑事といえば「マギンディ夫人は死んだ」で、ポアロにこれは冤罪かもしれないと持ち掛けた人物だ(覚えてる?)
マギンディ夫人は死んだはこちらから
今回、そのマギンディ夫人事件をこんな風に振り返っている。
「我々が救ってやらなければならない男(略)その男は何かをしてやる気にはどうしてもならない男でしたね。
自分からは、世の中の役に立つということは絶対にしないという好例でしたよ。」「あの娘と結婚したんでしたね?あのめそめそした女と。髪をオキシドールで脱色した、あまり頭のよさそうな女じゃなかった。」
「ハロウィーン・パーティ」P65
これって、ジェイムズとデアトリィの事いってるんやな~って、読んだことのある人はピンとくる。
「マギンディ夫人は死んだ」はこちらから
こんな描写もあるで。
今回出てくる、エルムズ校・校長の話だ。
「前にメドウバンクで校長をしていた、ミス・ブルストロードから伺いましたの。
覚えてらっしゃるでしょう?
(略)
今では少し変わりましたわ。目標も違う、やり方も違う。でもやはり進歩的で、伝統ある名門校の地位は保っております。」「ハロウィーン・パーティ」148~149P
ああ~、これって「鳩のなかの猫」のことやなって解る!
あんなことがあったのに、名門校でいてくれている!嬉しい!
・・・と思ったで!
これは作品を、最初から読んでる人だけが感じるだいご味!嬉しいで!
ぜひあなたもアガサクリスティ、最初から読んでな!
アガサクリスティ(ポアロ)「ハロウィーン・パーティ」 まとめ
ネコ缶評価
クリスティ作品には珍しく、妙にファンタジーな感じがするところがある。
悪くはないが、そこだけちょっと作品の中で浮き上がってる感じがする。
ここがマイナス☆1
今回もオリヴァ夫人、活躍してるで!(もはや主要キャラ)
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