アガサクリスティは、時々ミステリーというよりも、スパイ系の内容を書く時がある。
例えばこちら
「ビッグ4」は、ポアロが世界を牛耳る悪の組織に、体を張って立ち向かう・・・という異色の内容だった。
今回の「愛国殺人」も、まさにそんな内容。
いや、愛国殺人はさらにグレードアップして、スパイものとしてだけでなく。ミステリー要素が強くなっている。
「愛国殺人」が書かれた時代が、第二次世界大戦の最中ということから、クリスティも何か考えるところがあったのかもしれない。
そんなスパイミステリーの「愛国殺人」いってみよ!
Contents
アガサクリスティ(ポアロ)愛国殺人 あらすじ
ポアロが歯医者に行ったしばらく後、なんと歯医者・モーリィが、自殺したという知らせが入る。
・・・と、いぶかしむポアロ。
捜査を進めていくうちに、最後にモーリィに診察してもらった患者・アムバライオティス氏を突き止める。
だがなんと、アムバライオティス氏に会う直前、彼は死んだと聞かされる・・・。
目の前で扉が閉まったと感じるポアロ。
とまどう間もなく、ポアロが歯医者に行った日、急患で歯医者に来ていた女性までもが、行方不明になってしまう!
モーリィの患者の中に犯人はいるのか?
犯人が本当に殺そうとしていたのは、政財界の大物、アリステア・ブラントというのは本当か?
スパイ活動や政治思想家の人間も含めて、事態は複雑になっていく・・・。
アガサクリスティ(ポアロ)愛国殺人 感想
このところ調子よく読み進んでいたが、ここにきて突然歯ごたえのある内容になった。
歯ごたえはあるが、読みごたえもその分多い。
読み進むうえでのポイントを書いていこう
愛国殺人 ポイント1 2組のカップル
愛国殺人にはこの2組のカップルが登場する。
フランク・カーター&グラディス・ネヴィル
ハワード・レイクス&ジェイン・オリヴェイラ
どちらもちょっと問題アリな男性に、女性が尽くす感じだ。
妙な思想にかぶれた感じもあるし、危なげな仕事もホイホイと引き受けたりもしている。
しかもフランク・カーターなどは、軽はずみな行動が原因で、事件にがっちり巻き込まれたりするのだ。
この、フランク・カーターとハワード・レイクスはよく似たキャラで、動きも似ているので間違えないようにしよう。
愛国殺人 ポイント2 命の重さ(ネタバレ注意)
ここからは、ちょっとネタバレの感がある。
今回、犯人はポアロにすべてを突き止められた後、こんなことを言う。
私という者は、この国の安寧と福祉を保つために必要な存在であるということです。
「愛国殺人」360ページ
つまりこういうことだ。
自分がいなくなると国も乱れるのだし、国民にとってもポアロさんにとっても、それは悪いことなのでは?
また、犯人が殺したり、罪をなすり付けようとした人間については、こんな風に言う。
○○はメンドリ程度の頭脳しかない人間、○○は詐欺師で恐喝者、○○は他にいくらでも代わりのいる人間、○○は憐れむ必要もない、全く腐った人間です。
「愛国殺人」360ページ~361ページ
・・・だから殺してもいいし、国にとって大事な、自分の方を優先してくれということなのだ。
※障害施設での大量殺人
愛国殺人が書かれたのは、今から100年近く前。
昔は、奴隷制度、階級制度があったし、こんな風に考える人間は珍しくなかったのかもしれない。
犯人はポアロに、見逃してくれるように説得を試みるが、命の重さに差はないとポアロはつっぱねる。
「私は国家のことなどに従っているのではありません。
私のたずさわっているのは、自分の命を他人などから奪われない・・・という権利を持っている、個々の人間に関することです。
「愛国殺人」363ページ
これはちょっとカッコイイ。
「愛国殺人」はトリックももちろんよくできている。
だが一番の良さは、ポアロが権力に屈しない正義感を、あらためて見せてくれたところなのだ。
アガサクリスティ(ポアロ) 愛国殺人 まとめ
ネコ缶評価
かなり歯ごたえのある内容はいいのだが、歯医者の建物のつくりが解りにくくて、患者の流れが想像しにくかったのが本当に残念。
これはぜひ、図解を入れてほしかった・・・・。
それと、マザーグースの歌を使った連続殺人かと思いきや、犯罪には全く活用されていなかったのでそれも残念。
とはいえ、久しぶりの歯ごたえのある内容だった。
「ポアロのクリスマス」「杉の柩」と、流れるような読みやすい内容が続いていた後なので、気を引き締めて読むべし!
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