アガサクリスティ

アガサクリスティ(ポアロ)こんなに面白いのになんで有名じゃないの④「杉の柩」

アガサクリスティの「ナイルに死す」は、婚約者を友人にとられたという設定から始まる物語だ。

「ナイルに死す」詳しくはこちら

「ナイルに死す」は、10点満点のよく出来た物語だが、今回、似たような設定の物語を紹介しよう。

それは「杉の柩」!

「杉の柩」も、婚約者が、ある日突然ほかの女性に一目ぼれをしてしまい、あっけなくお別れ・・となってしまう。

しかもその「彼氏を取った憎い女性(メアリイ)」が「彼氏を取られた女性(エリノア)」の作ったお昼ご飯を食べたら、なぜか死んでしまうのだ!

うーん、こわい・・・そんな気になる内容、いってみよ!

アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」 あらすじ

幼馴染でいとこ同士のロディーとエリノアは、結婚間近なカップル。

彼らは、ゆくゆくは大金持ちの叔母、ローラ・ウェルマンの財産を2人で引継ぎ、そのままその家で暮らすつもりをしていた。

だがロディーはなんと、叔母の家の門番の娘・メアリイに一目ぼれをしてしまうのだ!

悲しみをこらえて、婚約を解消するエリノア。

そしてちょうどそのころ、叔母も亡くなり、財産をエリノア1人で相続することになる・・・。

ドタバタのしばらく後、遺品の整理のために、叔母の家にやってきたエリノア。

そして、たまたまそこに来ていたメアリイと、看護婦のホプキンスに、エリノアはお昼をふるまう。

するとなぜか、メアリイだけが死んでしまったのだ!

逮捕、拘束されるエリノア。

だがなぜメアリイだけが死んでしまったのか?

本当にエリノアが毒を仕込んだのか?

疑惑は、叔母ローラ・ウェルマンの死亡にもつながっていく・・・。

アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」 感想

「杉の柩」もいい話だ。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
トリックもええのやけど、エリノアの心理描写がとても巧み。

女性なら、ついつい共感してしまうんやないかな。

見どころを書いていこう

「杉の柩」見どころ1 女性心理の描写のたくみさ

エリノアは、幼いころから深くロディーを愛していた。

だが、その気持ちをほとんど表に出さない。

なぜなら・・・

ロディ―は、気持ちを大っぴらに出す、あけすけな女性が嫌いだからだ。

ひどく、しつっこい女がいるね。
ほらイヌっころみたいに、ありったけの愛情を振りまいて歩いてるみたいな・・・。

僕はそういうのは我慢ならないんだ。

「杉の柩」27ページ

なのでエリノアは、熱い気持ちを抑え、クールにふるまい、見事ロディーの心を捉えた。

だがエリノアは、ロディ―といても安らぎを得られず、苦しさ、せつなさばかりを感じるようになってしまう。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
本音を話してない、自分を出してないんやもんなあ・・・ 。

この辺りは、100年たった今でも、女性なら共感できるのではないだろうか。

いや、100年たった今どころか、源氏物語の六条の御息所なら、首がもげるくらいうなずいてくれるだろう。

そしてエリノアは、心変わりしたロディーを責めずに、気持ちを隠してこうも言う。

3か月ほどお一人で、新しい土地を見たり、新しいお友達を作ったりしていただきたいの。

あなたは今、メアリイ・ジェラードを恋していらっしゃるけれど、今はあの娘に近づく時じゃないの。

(略)3か月たった時に気持ちを決めたらいいのよ。
その時に本当に愛してるのか、一時の気まぐれなのか解るわ。

それでも愛していると思ったら、メアリイに言えばいいのよ。

「杉の柩」112ページ

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ

苦しいなあ・・エリノア・・・。

本当は3か月たって気持ちが変わらなければ、自分のところに戻ってほしいって言いたかったんじゃなかろか?

こんな理解あることを言っても、エリノアの心はこうなのだ。

エリノア 
エリノア 
メアリイなんて死んでしまえばいい 
エリノア 
エリノア 
 あの娘さえいなかったら・・・

この感情ゆえ、ヒステリックな奇行も目立つ。

この辺り、理性的な女性なら、痛いほど気持ちが解るだろう。

だが、ロディ―を奪った(ことになった)メアリイも決して悪い娘ではない。

目をかけてくれたローラ・ウェルマンのおかげで、門番の娘ながら、いい教育も受けさせてもらったが、それに甘えず自立しようと頑張っている。

けなげな良い娘さんなのだ。

勿論メアリイは、ロジャーにも決してなびいていないし、気持ちを利用する事もしていない。

ひたすら、自立したい!と職業学校に行ったりしてるのだ。

また、エリノア、メアリイだけでなく、ローラ・ウェルマンの悲しい恋も、同情・共感できるところが満載。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「杉の柩」の女性登場人物の心理は、みんな共感できるんやないかな!

「杉の柩」見どころ2 毒薬のマニアックさ

アガサクリスティは元薬剤師のせいか、毒殺の薬の種類や使い方が、やたらマニアックなことがある。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
これまでにも何回か、そのことを取り上げてるよな~。

スタイルズ荘の怪事件はこちら
三幕の殺人はこちら
もの言えぬ証人はこちら

今回もその「クリスティの毒薬の知識が光る」マニアックな作品なのだ。

「杉の柩」では、看護師のホプキンスがモルヒネを盗まれたということで、モルヒネがこの物語を駆け巡っている。

もちろん、メアリイの死因もモルヒネ。

だが、あっと驚くトリックに使われた薬は、別にまだあるのだ。

名前も効用も、おそらく誰も知らない薬が、杉の柩では超重要な役割を果たす。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
この辺りは、クリスティの薬学の知識が、最大限に生きてるなあ~と、感心するところやな。

アガサクリスティ(ポアロ)「杉の柩」まとめ

ネコ缶評価

展開に問題はなく、初期の頃の作品と比べたら、流れるような感じでかなり読みやすい。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
だがネコ缶的には、メアリイが気の毒過ぎてー1やな・・・

「杉の柩」は裁判の場面が多く出てくる。
真犯人も、裁判の証言の最中に判明するという珍しい展開。

ラストはどうなるのかとハラハラするが、最後はいつものように収まるところに収まる。

一安心やで。

それはそうと「もの言えぬ証人」以来、ヘイスティングスを見ていない。
どうしているのか?ちょっと心配だ。

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