犯人を見つける明晰な頭脳と言えば、ポアロやマープルを思い出す人も多い。
確かに彼らはすごいが、いくら彼らが有能でも、探偵は警察ではない。
てなわけで、一応クリスティものには決まって警察も出ているのだが、名探偵の陰に隠れて印象は薄い。
でも!
今回ご紹介する「ゼロ時間へ」では、たびたび出てきた「バトル刑事」が活躍してくれるのだ!
バトル警部の活躍が見える「ゼロ時間へ」みてていこう!
バトル警部は、意外とクリスティものにはよく出てくる。
「ゼロ時間へ」以外にも、ここに出てくるので、良かったら読んでみてな!
Contents
アガサクリスティ「ゼロ時間へ」 あらすじ
弁護士会の大御所トレーヴ、テニスプロのネヴィルとその妻ケイ、そしてネヴィルの元妻オードリーに、オードリーの遠い従妹のトマス・ロイド。
これらの人たちは、それぞれの理由でガルズ・ポイント館に集まった。
ガルズ・ポイント館にいたのは、彼らの遠縁カミーラ・トレシリアンとメアリー・オルディン。
決して友好的ではない雰囲気ではあったが、それぞれの休暇がスタート。
・・・・もめるわなあ。
弁護士のトレーヴや、ケイの友人テッドも途中参加。
にぎやかな夕食会ももたらされた。
そんなある日、ガルズ・ポイントの女主人、カミーラが何者かに撲殺された!
現場に残された証拠や、動機、アリバイなどから、ネヴィルがいったん逮捕されかかる。
だが、目撃証言から彼は無罪に。
では犯人は一体誰なのか?
事件とは別に、カミーラが死ぬ前日に、ホテルのエレベーターが故障。
そこに宿泊していたトレーヴは、4Fまで歩くことになり、心臓発作で死亡。
だがこの故障の張り紙は、誰かのいたずらだった・・・。
この張り紙はカミーラ事件と関係あるのか?
人間観察力に長けたクリスティの、見事な構成が光る。
アガサクリスティ「ゼロ時間へ」 感想
「ゼロ時間へ」は、伏線の張り方がめちゃくちゃ見事。
元妻(オードリー)と、今妻(ケイ)の戦いも気になるが、伏線の見事さを紹介しておこう。
「ゼロ時間へ」見どころ 伏線が見事1
「ゼロ時間へ」は、なかなか事件が起こらない。
じりじりして読んでいると、ようやく200ページ過ぎに事件が起こる。
タイトル通り、殺人事件が起こるときを「ゼロ時間」と考えると、まさしく前半はそのゼロ時間へ向かって時が流れている。
そして200ページまでの大量の伏線も、前半と後半に別れて書かれている。
伏線前半は、バトル警部も、ストレンジ夫妻に元妻オードリーも、トマス・ロイドも、だれもかれも、ここを丁寧に書かれている。
そして伏線の後半部分、登場人物が事件現場にそろってから事件までの経過は、人間の感情を丁寧に書かれている。
特に、元妻と一緒に過ごすことになった、ケイの苛立ちの描き方はうまい。
この構成の妙なる様は、冒頭にトレーヴの口を借りてこう書かれている。
(略)推理小説は必ず殺人事件が起こったところから始まる。
しかし殺人は結果なのだ。
物語はそのはるか前から始まっている・・・時には何年も前から・・・。
数多くの要因と出来事があって、その結果としてある人物がある日のある時刻にある場所に赴くことになる。
(略)すべてがある点に向かって集約していく・・・クライマックスに!
ゼロ時間だ。「ゼロ時間へ」P13~14
クリスティがこの作品で言いたかったことは、このページで見事に表現されている。
「ゼロ時間へ」見どころ 伏線が見事2
数ある伏線の中でも、際立った伏線がこれ。
自殺し損ねた男(アンガス・マクワーター)の存在
とは思うが、彼のお世話をした看護師さんが、こんなことを言うのだ
ある日、ある場所を歩いているだけでいい、それだけで何かとても、重要な役割を果たすことになるかもしれない・・・
多分あなたは、それとは気づかずに
「ゼロ時間へ」P25
この一言が、後々ものすごーく効いて、膝を打つこと請け合い。
ハッと思い出した時には・・・このツッコミをいれたくなるくらいだ。
途中、ほとんど出てこーへんけど、アンガス・マクワーター、覚えといてな~。
アガサクリスティ「ゼロ時間へ」 まとめ
ネコ缶評価
構成が「ナイルに死す」、トリックが「スタイルズ荘の怪事件」に近い。
「ナイルに死す」詳しくはこちら
「スタイルズ荘の怪事件」詳しくはこちら
ただ、事件が起こってからは「ナイルに死す」みたいに、話が膨らまなかったのが残念。
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[…] バトル警部は、クリスティ作品にチョコチョコ出てきてるわき役さんだ。 「ゼロ時間へ」では、結構活躍してくれるで! 「ゼロ時間へ」詳しくはこちら […]