以前「チムニーズ館の秘密」という作品を紹介した。
一国の王政復古や革命、そして殺人事件に恋と、テンコ盛りな内容だ。
クリスティは、よほどこの話が好きだったのか、続編ともいえる話も書いている。
それが今回ご紹介するこちら。
「七つの時計」!
「七つの時計」の中には、ちゃんとこんなくだりもある
「刺激ならば、4年前に、イヤってほど味わったはずじゃないのかね?」
byケイタラム卿
「七つの時計」P77
「チムニーズ館の秘密」から4年後の設定なんやな。
登場人物も何人か「チムニーズ館の秘密」とかぶっているが、読んでいなくても話は十分理解できるので心配ご無用だ。
ではみていこう!「七つの時計」
アガサクリスティ「七つの時計」あらすじ
朝寝坊なジェリー・ウェイドを起こすために、仲間がこんなことを考えた。
このたくらみは成功し、朝早くからけたたましい音が鳴り響いた。
だがジェリーは起きてこない・・・。
不審に思った仲間が見に行くと、なんとジェリーは死んでいた!
しかも8個置いたはずの時計が、7個になっており、きちんと並べられてもいた・・・。
事件のショックも冷めやらぬ時、仲間のうちの1人、ロニー・デヴァルーが何ものかに銃で撃たれ死亡する。
死ぬ直前、彼はこんなことを言い残す。
その後の調査で、ジェリー・ウェイドが死ぬ間際、妹に書いていた手紙にも、セブン・ダイヤルズの名前があった事が判明。
セブン・ダイヤルズとは何なのか?
時計が7個に減らされていたのは、関係があることなのか?
行動力抜群のバンドルが、セブン・ダイヤルズ・クラブの謎に挑む
アガサクリスティ「七つの時計」感想
クリスティは、時として「元気な若い女性が、事件に首を突っ込んで大活躍」という作品を書いている。
「茶色の服の男」
「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」
今回の「七つの時計」も、そんな元気なお嬢さんが大活躍する作品だ。
その若い女性の名前は「アイリーン・ブレンド」。
通称「バンドル」。
「七つの時計」の見どころは、そのバンドル活躍ぶりだろう。
バンドルが縦横無尽に駆け巡ることで、読者も同じ目線でストーリーを理解していく。
そんな彼女の活躍をご紹介しよう。
「七つの時計」見どころ バンドルの活躍
バンドルは、ケイタラム侯爵の令嬢だ。
「超いいとこのお嬢さん」なんやけど、とかく元気にあれこれやってくれる。
そのなかでも特に驚くのは、1人で「セブン・ダイヤルズ・クラブ」のアジトに乗り込んで、食器棚の中に忍び込むところだろう。
そして勝手に穴まであけて、隣の部屋をのぞき見している。
しかも、セブン・ダイヤルズ・クラブに入る際、門番が元チムニーズ館の召使アルフレッドだった・・・というのをいいことに、半分脅しのようなことまでやってくれる。
「ねえアルフレッド、この部屋のなかで、
どこか私が身を隠せそうなところを探してちょうだい」「そんなことは無理でございます!
私までが面倒に巻き込まれて、職を失う羽目になりかねません!」
「監獄行きになれば、どうせ失業するのよ」
「七つの時計」P195
食器棚になんとかもぐりこんだ後(当然ここまででも、ひと悶着ある)のやり取りも面白い
「今度はキリを持ってきて」
「とおっしゃられても・・・さて・・」
「ばかおっしゃい。キリが無いなんて家があるもんですか。
ないと言うなら、外に買いに行ってもらうことになるんですからね。
なんとか探し出してきた方が利口というものよ」
「七つの時計」 P198
彼女の眼を通して、読者もリアルにセブン・ダイヤルズ・クラブの実態が解るので、この場面は見ものだ。
ラストまで読むと、彼女の活躍は「事件解決に役立った」とは、あまり言えないことに気づく。
アガサクリスティ「七つの時計」 まとめ
ネコ缶評価
バンドルとその父ケイタラム卿、バトル警部はなかなか個性豊かに描かれてナイス。
だが、物語を引っ張る若い男性たちのキャラがどうも薄い。
トリックや謎解きよりも、ライトな冒険小説が好きな方におススメの1冊だ。
[…] ・7つの時計⇒詳しくはこちら ・ひらいたトランプ⇒詳しくはこちら […]
Touche. Great arguments. Keep up the great spirit. Marcella Patrick Sawyor