カササギ・・・この鳥の名前に、皆さんは何を感じるだろうか。
かささぎの渡せる橋に・・・ってやつ
それ、中納言家持な!
ネコ缶は中野京子さんの「怖い絵シリーズ」が大好きやから、ついついコレを連想したわ↓
なので、タイトルに意味深な鳥の名前を入れたアンソニー・ホロヴィッツの知性に、まずあっぱれ。
期待しながら読んでみた結果・・・・
久しぶりの大ヒット!
ホラーっ気もなく、細かな伏線とその回収、必要のない密室もない、正統派のミステリーやったんやなこれが。
ミステリーマニアなら納得の内容を、じっくり見ていこう!
Contents
アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」 あらすじ
まずこれを書いておこう。
「カササギ殺人事件」の大きな特徴はこれ。
「作中作」
要するに、小説の中に小説が入ってるってヤツな。
そのうえ、「カササギ殺人事件」は、上巻と下巻に分かれてるんやけど、内容はこんな感じ。
ここを抑えておこう。
ネコ缶、それをあまり解らずに読み始めて、途中で「あれ?どーゆーこと?」ってなったしな(アホ)。
あらすじも上下巻で分けて書いていくな~。
「カササギ殺人事件」上巻 あらすじ
家政婦メアリ・エリザベス・ブラキストンが、奉公先の屋敷で、掃除の最中に階段から転落して死亡した。
粛々と始まる葬儀・・・。
だが参列している人々の表情はなんだか妙。
何故ならメアリは、人の秘密に首を突っ込むのが好きで、皆の触れられたくないことを、しっかりと把握していたのだ!
悲しみを装いつつ、どこかホッとしているような人たち。
様々な思いを胸に、また日常が始まったかと思いきや・・・
メアリの奉公先の主、サー・マグナス・パイが、首を切り落とされるという惨殺死体で見つかる。
こうなってくると、メアリの死因も本当に事故だったのかと疑いだす人たち。
メアリの息子・ロバートが、犯人扱いされることに耐えかねた婚約者のジョイ。
彼女が、名探偵の誉れ高い、アティカス・ピュントを訪ねた事から、この村の秘密が暴かれていく・・・・。
「カササギ殺人事件」下巻 あらすじ
カササギ殺人事件の原稿を読んでいた、クローヴァーリーフ・ブックスの編集者スーザン。
彼女はこんなことに気が付いた
ミステリーにはあってはならない事なのに、一体なぜ?
作者のアラン・コンウェイは、何を考えているのか?
混乱するスーザンの眼に、こんな知らせが飛び込んできた
アラン・コンウェイ死亡・・・・。
クローヴァーリーフ・ブックスに届いた彼の遺書から、アランは自殺ということになりそうだった。
だがスーザンには、どうしても彼が自殺とは考えられない。
そのうえ、カササギ殺人事件の結末はどこに行ったのか?
スーザンはこの2つの謎を追いかけていくうちに、思いもかけないことに巻き込まれていき・・・。
アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」感想
読み始めて、ネコ缶が真っ先に思ったことはこれ。
それは本の裏表紙のあらすじにも書かれていたが、読んでみると本当によくわかる。
まず出だし。
なんとなく妙な空気の葬儀から始まるところは、そのものずばり「葬儀を終えて」にそっくり。
そのうえ、下巻には堂々と「葬儀を終えて」という章タイトルがある(下巻P161)
また、カササギの数え歌が上巻に出てくる
一羽なら悲しみ
二羽なら喜び
三羽なら娘
四羽なら息子
五羽なら銀で
六羽なら金
七羽ならそれは、明かされたの事のない秘話「カササギ殺人事件」 上巻 p78
こんな風に、殺人事件とわらべ歌を合わせるのは、もうクリスティの十八番だ。
さらに、閉鎖的な村で起こる事件で、村人の秘密が暴かれていく様子は、ミス・マープルのセントメアリーミードを連想させる。
極めつけはアガサ・クリスティの孫、マシュー・プリチャードを登場させたこと
アンソニー・ホロヴィッツ、本当に知り合いだったのやろか・・・。
他にもたくさん、クリスティネタはいたるところにちりばめられているのだが、もちろんそのことをアンソニー・ホロヴィッツは隠しもしない。
ちゃんと下巻で、2ページにわたって詳しく説明している(P135)
クリスティを知らない人でも十分楽しめる内容だが、(ネコ缶含めた)クリスティ好きの人は楽しさ倍増やで!
では次に、上下巻それぞれの見どころをご紹介していこう
「カササギ殺人事件」上巻 見どころ
事件は大きいものが2つ(メアリ転落事件とマグナス殺人事件)と、小さいものがいくつか出てくる(空き巣や過去の事件など)。
だが上巻のメインは、なんといっても猟奇的な殺され方をしたマグナスの殺人事件。
この事件を中心に話は進んでいく。
事件が起こった時、妙な動きをしている人物が何人もいるうえ、これが非常に細かい伏線になっている。
ラストでこの伏線が、取りこぼされることなく、すべて回収されていくさまは感動の一言だ。
この感動のために、この辺りはきちんとメモを取っておこう。
「カササギ殺人事件」下巻 見どころ
下巻も、この2つのテーマを追う事になる。
- 「カササギ殺人事件」の顛末のゆくえ
- アランの死の真相
下巻を読めば読むほど、アランと言う人物は、どーしよーも無い奴だという事が解ってくる。
途中でイライラ、げんなりする人もいるだろう。
だが読めば読むほど、アランの事件が、自分で書いた「カササギ殺人事件」とリンクしていることが解る。
これが下巻の最大の魅力だ。
そして「カササギ殺人事件」の結末がどこに行ったか気になるが、これを考えると答えは解ってくる。
結末の原稿を隠すことで、得をする人間はだれか?
ラストで「カササギ殺人事件」もアラン・コンウェイの死の真相も、原稿の隠し場所もすべてが判明する様は、ミステリーファンなら感動するで!
この感じ、この2択はまさしく「満潮に乗って」やな~
アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」 まとめ
ネコ缶評価
上巻のラスト1行の、ものすごい謎かけや、スーザンが「カササギ殺人事件」のおかげでなぜ人生が変わったのかという忘れがちな謎など、とにかく細かな伏線がきちんと回収される丁寧な内容。
正統派のミステリーファンなら、だれもが楽しめる作品であることには間違いない。
マイナス0.5にしたのは、アティカス・ピュント探偵の作品がこれしかないところ!
そこだけが残念~。
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