最近は、「終活」といって、生前に自分の葬儀の手配をしておくことは珍しくなくなってる。
でも、葬儀の手配をしたその日のうちに、誰かに殺されたとなっては・・・・
なんか、おかしくないか?
・・・というテーマで書かれた作品が、今回ご紹介するこちら

まだまだ元気で、裕福。
これといって、誰かと、もめてる様子もない60代の女性が、葬儀の手配をした日にいきなり絞殺されるのや。
やっぱおかしいよな⁉
早速内容をみていこう!
Contents
アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」あらすじ

葬儀会社・コーンウォリス&サンズに、裕福な老婦人がやってきた。
彼女の名前はダイアナ・J・クーパー。
彼女は自分の葬儀の手配のためにここに来たのだ。
様々なことを決め、友人とランチをとり、劇場の理事会会議に参加した後帰宅。
そしてその2日後・・・彼女は変わり果てた姿で見つかる。
彼女は帰宅直後、何者かに絞殺されていたのだ!
ダイアナについて調べていくと、なんと彼女は10年前に、車の事故で双子の少年をひいていたことが解る。
しかもその事故は、1人が死亡、1人には重い障害が残っていた・・・。
他にも彼女は、友人に演劇の投資を持ちかけられ、大金を損していることも判明。
これらの事は、殺人事件と何か関係があるのだろうか?
そしてダイアナの手配した葬儀を始まると、
なんと柩から、かつての事故で死んだ子供の好きだった歌が流れ出した!
もちろんダイアナは、こんな内容は支持していなかった・・・・。
この不気味な事件を捜査する、元刑事のホーソーンと、彼から自分の本を書いてほしいと依頼された作家・アンソニー・ホロヴィッツ。
彼らの凸凹コンビが幕をあける・・・。
アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」感想

アンソニー・ホロヴィッツを読むのはこれで2作目。
⇒1作目はこれな「カササギ殺人事件」
前回読んだ、アティカス・ピュント探偵とは、ずいぶん毛色の違う探偵がここで登場する。
よく言えば超マイペース、悪く言えば全く空気を読まず、相手の都合も全く考えずに行動する・・・というキャラなのだ。
その探偵の名前は、ダニエル・ホーソーン。
作者のアンソニー・ホロヴィッツが作品の中に入って、彼の助手(パートナー?)役をやる。
その掛け合いが、この作品に色を添えているのや。
そこからまずご紹介しよう!
「メインテーマは殺人」見どころ1 ダニエル・ホーソーンの魅力。

繰り返すが、ホーソーンを一言で言ったら、こうなる。
とてつもなく失礼な奴
とにかく相手の事は考えない。
事件解決の事だけ考えてる人物だ。
アンソニー・ホロヴィッツが、スピルバーグ監督と打ち合わせをしていても、平気で部屋に入ってきて自分の目的の場所に連れていく。
だが、スピルバーグが答えるより早く、またしてもドアが開いた。入ってきたのはホーソンだったのだ(略)
自分が邪魔しているのがどんな打ち合わせなのか、どれだけ大切な場所なのか全く気付いてないらしい。「メインテーマは殺人」 p191
自分の本を書いてほしいというのも、かなり一方的に決める。
「実はあんたに頼みたいことがあってね」
「どんな?」
「俺の事を書いてほしいんだよ」
(略)
「取り分はきっちり半々でいいと思ってる」「メインテーマは殺人」p35
しかもホーソーン、アンソニー・ホロヴィッツが普段何を書いているのか、ほとんど読んでもいないときた。
おまけに自分の事は一切話さない。
ホーソーンはエセックスに住んでいるとは聞いていたものの、具体的にどこなのかは、いっこうに教えてもらえない。
「メインテーマは殺人」 p29
自分の事(と言うより事件の事)を本にしてほしいというのに、自分の事を深く聞くと怒りだしたりもする。
火村って誰⇒「作家アリスシリーズ」はこちら
これだけだったら、ただの変なヤツなのだが(実際トラブル起こして、刑事を首になってるしな)・・・
ホーソーン、とてつもなく有能なのだ。
物凄く優れた観察眼を持ち、アンソニー・ホロヴィッツが最近田舎に行ってたことや、新しい犬を飼い始めたことも一目で見抜く。
ホ「しばらく田舎にいたんだろう?」
(略)
ホ「新しい子犬を迎えたってことか」
(略)
ア「どうしてわかったんだ?」
(略)ホ「あんたの靴底の溝に、砂がはさまってたからね。
オーフォードに別荘があるのは聞いてたから、たぶんそこに行ってたんだろうと思ったんだ。」ア「じゃあ子犬は?」
ホ「あんたのジーンズに足跡がついてるだろう(略)
誰かがじっくり腰を落ち着けて、あんたの靴ひもを噛んだ形跡があるんだよ」「メインテーマは殺人」 p34~p42
「きみ、アフガニスタンに行ってましたね?」
とズバリ言い当ててたなあ・・・
ポアロやホームズも、やっぱり一癖あった。
でも、とてつもない有能さゆえに人を惹きつけ、ワトスンやヘイスティングスと友人でいられた。
ホーソーン自身も刑事を首になってはいるが、有能さゆえに、刑事を助ける仕事を振ってもらってる。
名探偵は、有能であれば少々性格悪くても許されるのは、共通の事なのかもしれない。
なぜか彼に惹かれ、本を出すことも承知し、ぶつぶつ言いながらも行動を共にするアンソニー・ホロヴィッツ。
そんな乙女のような心境なのだろうか。
今後の2人の展開と、ホーソーンの事が解るのが楽しみやな!
「メインテーマは殺人」見どころ2 今回も正統派ミステリー

前回の「カササギ殺人事件」でも言ったが、今回も路線は一緒。
正統派(本格派)ミステリーや。
ホラー要素もないし、余計な恋愛も無い。
超能力者も霊媒者も出なければ、密室のための密室もない。
そして最後に犯人が明かされる。
今回、事件や事故はこれだけ用意されている。
投資で失敗するのはよくあることやけど、解ってて投資したのかはこれまた謎。
実は、殺人事件はもう1つ起こるのだが、ここでは伏せておく。
2つの殺人事件は同一犯なのだろうか?
事故や詐欺まがいのことは、つながっているのだろうか?
事故にあった双子の家族の誰かがダイアナを殺したとしたら、第2の殺人をする理由もない。
また、損をさせられたと、訴えられそうになったから殺したのでは、これまた第2の殺人をする理由もない。
と、考えれば考えるほど
「1つが通れば他が無理になる」
という、ミステリーあるあるな罠にはまっていく。
ラストはカササギ殺人事件同様、伏線が見事に回収されていく。
アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」まとめ

ネコ缶評価
今回も「カササギ殺人事件」同様、面白く読ませてもらえた。
ただ惜しかったのは、アンソニー・ホロヴィッツが自分の仕事関係の事(脚本や台本執筆の事)をあちこちでかなり長く書いているのだ。
申し訳ないが、これらのエピソードはかなり・・・眠くなった。
メインの話にあんまり関係ないし
それ以外はグッド。
お見事だった。
ホーソーンのシリーズは、10部書く予定らしいから今から楽しみやな!
アンソニー・ホロヴィッツの作品をもっと読みたい方はこちら
・奇妙な2人組はまだまだ行く!⇒「ダニエル・ホーソーン」シリーズはこちらから
・作中作で2度おいしい物語⇒「アティカス・ピュント」シリーズはこちらから
・コナン・ドイルが再び現れた?⇒「ホームズ」シリーズはこちらから