犯人を追い詰めて、アリバイを崩していく・・・というパターンは、ミステリー小説の中ではよくある。
今回ご紹介するこちらは、タイトルからしてズバリだ。

祖父の時計屋を引き継いだという、20代の女性・美谷時乃が主人公。
彼女が捜査一課の刑事でも崩せなかったアリバイを、一瞬で崩すという内容なのだ。
詳しくみていこう!
Contents
「アリバイ崩し承ります」内容&感想

「アリバイ崩し承ります」にはこんな話が入っている。
- 時計屋探偵とストーカーのアリバイ
- 時計屋探偵と凶器のアリバイ
- ★★時計屋探偵と死者のアリバイ
- ★時計屋探偵と失われたアリバイ
- ★★時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ
- 時計屋探偵と山荘のアリバイ
- ★時計屋探偵とダウンロードのアリバイ
★はネコ缶お気に入りの話
捜査一課にこの春から務めている「僕」が、捜査が難航するあまり、時乃の元にアリバイ崩しを頼みに来る・・・いうパターンが全作品を貫く。
早速詳しくみていこう。
時計屋探偵とストーカーのアリバイ 内容&感想

医科大学の教授・浜沢杏子が自宅で何者かに殺されていた。
調べていくと、離婚した元ダンナからの、度重なる嫌がらせや付きまといに悩まされていたことが判明。
おまけに元夫は、借金までもを杏子にしていたらしい。
捜査の手が元夫に迫るころ、この元ダンナには、完璧なアリバイがあった。
美谷時乃と「僕」の初めての事件!
他のミステリーでは見たことがない。
ちょっと成立するのかが怪しいくらいだ。
医科大学の教授という設定だから、成り立つのかもしれない。
とはいえ、ラストはきれいにまとまった。
時計屋探偵と凶器のアリバイ 内容&感想

ポストからピストルが見つかった。
周りでは、暴力団どうしの争いが起きており、それに使われたのかと思われた。
でも、死体で見つかったのは、暴力団とは縁がなさそうな製薬会社の社員。
しかし被害者の勤めていた製薬会社では、モルヒネを暴力団に横流ししているという噂があった。
怪しいと思われた人間には、またしても鉄壁のアリバイがあって・・・。
ストーカーの話と同じく、うまく成り立ってくれるのだろうか心配になる。
ここまで、アリバイ作りのためにエネルギーを使う犯人は(作者も)すごい。
時計屋探偵と死者のアリバイ 内容&感想

「僕」が歩いてると、先を歩いていた男が車にはねられた。
男は死の間際、こんなことを言った。
「さっき人を殺した・・・」
彼の言った場所に行ってみると、本当に女性が死んでいた。
その死んでいた女性と、車にひかれた男性は恋人同士。
男性がほかの女性に心変わりをしていた節もあり、それが原因の犯行・・・と片づきかけた時、こんなことが判明。
「死んだ女性の死亡推定時間には、男は死んでいた」
死者のアリバイが成立してしまったのだ・・・
「仰天ニュース」あたりで出そうな話。
「密室蒐集家」の”柳の園”と同じトリック。
時計屋探偵と失われたアリバイ 内容&感想

ピアノ教師の河谷敏子が殺された。
生徒ともめている様子もなく、異性のトラブルもない彼女だが、相続した土地の事で妹ともめていた。
さっそく警察がその妹のところに行ってみると、なんと彼女は敏子が殺害された時、夢遊病の発作で寝ながらあちこち歩きまわっていたという・・・。
妹が本当に犯人なのだろうか?
そして彼女の「失われたアリバイ」を見つけることはできるのか?
いつもは「アリバイを崩す」時乃が、この回は「アリバイを探す」という事にチャンレンジ。
時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ 内容&感想

時計屋を営みながら、アリバイ崩しをやっている時乃。
彼女はそのアリバイ崩しの技術を、時計の技術と共に、祖父から教えてもらった。
そんなある日、祖父はこんな問題を出した。
「今回はおじいちゃんが犯人役だ。犯行現場はこの家。
犯行時刻に、わしはこの家から離れた場所にいたという、アリバイを作って見せる」
さあ時乃は、大好きなおじいちゃんのアリバイを崩すことができるのか?
トリックを考えた、おじいちゃんのパワーと情熱に脱帽。
時計屋探偵と山荘のアリバイ 内容&感想

雪山にあるペンション「時計荘」はその名の通り、小さいながらも時計塔があった。
そこにスキーを楽しみに来た「僕」を含む5人。
性別も年齢も違うが、楽しく過ごしていた。
そんな夜、時計塔で5人のうちの1人が死体で発見される。
はっきりしたアリバイがないのは、なんと中学生の男の子だけ。
しかもこの男の子には、うっすらながら動機と呼べるものも・・・。
時乃は、この少年を救う事が出来るのか?
スウェーデン館の殺人とか、他にルパンものにもあったなあ・・・。
トリックは面白かったのだけど、被害者がこの山荘に来た理由がちょっと弱い。
時計屋探偵とダウンロードのアリバイ 内容&感想

「お化け屋敷」といわれるくらい荒れた庭を持つ、富岡真司が何者かに殺された。
しばらくたって荒れ放題の庭を整地すると、なんとそこから白骨化した死体が見つかった!
その死体の身元は和田雄一郎。
彼は富岡の会社の経理社員で、1千万ものお金を使い込んでいた。
その後、姿が見えなくなっていたので、失踪したと思われていた。
だが富岡が殺されたいま、真相は富岡が和田を殺したのでは?・・・という事になり、捜査が始まる。
だが一番の容疑者・和田の息子はアリバイがあった。
そのアリバイは「その日しかできないダウンロードを、友人の目の前でやった」ということで・・・。
だが、そのトリックの元にあるのは、人間の記憶や心理に基づいた不変の原理。
「アリバイ崩し承ります」 まとめ

ネコ缶評価
ちょっとこじつけた話もあったが、7割くらいの話は無理なくまとまっていた。
出来れば1つ1つを長編にして、深めた話を読みたかった。
でもそうではなく、トリックに集中した短編だからこその読みやすさなのかもしれない。
ドロドロした人間感情や、心理なんかが苦手な人におすすめやな!
大山誠一郎の他の作品はこちらから
・密室専門の話が読みたい!⇒「密室蒐集家」
・未解決事件の話が読みたい!⇒「赤い博物館」
・「ABCD」殺人事件日本バージョンがある!⇒「アルファベットパズラーズ」
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