ネコ缶は今年(2022年)50歳を迎えている。
さすがにこの年になると長い小説はキツイ。
それでも読んでみたいと思わせるミステリーが今回ご紹介するこちらだ
「夜のフロスト」
大人気のフロストシリーズの第3段。
フロストの下品なジョークもますます冴え、デントン署は相変わらずのバタバタぶり。
そこに新婚のフランク・ギルモア刑事が異動になり・・・・。
さあ詳しく内容をみていこう!
Contents
R.D.ウィングフィード「夜のフロスト」あらすじ
デントン署では流感が大流行。
ただでさえ人手不足の現場なのに、ますます人がいなくなりパニック寸前のデントン署。
今日もウェルズ巡査部長の電話は鳴りっぱなしだ。
そんなデントン署に異動になったのは、フランク・ギルモア部長刑事。
優秀と名高いアレン警部の下で働けるとあって、希望を胸に妻・リズと引っ越してきた。
だがそのアレン警部は流感にかかってしまい、急遽ギルモアはフロスト警部と組む羽目に。
新しい上司・フロストは、よれよれの身なりで、早朝から深夜まで自分の直感を頼りに、とにかく働きだおす。
それなのに事務仕事はからきし出来ず、マレット署長の命令には背きまくるフロストに、
ギルモアは振り回されっぱなし。
いつまでたっても仕事から帰ってこない夫に、ついに妻のリズも大激怒・・・。
今回もデントンの町には、少女行方不明事件や老女連続切り裂き事件が起こり、怪文書までもがはびこる。
フロストとギルモアは、どう立ち向かっていくのか?
フロストの下品なジョークと直感が今回もさえわたる、フロストシリーズ第3段!
R.D.ウィングフィード「夜のフロスト」感想
今回も今まで同様、いくつかの事件が同時進行で起こる。
そしてフロストは(新人刑事と)不休不眠で事件にあたるパターンだ。
今回はこの事件が同時進行で起こる。
- 墓あらし
- ポーラ・バートレット殺害&死体遺棄事件
- コンプトン夫妻への嫌がらせ
- 町に出回る怪しい手紙
- スーザン・ピックルスの自殺
- 老女ばかりをねらう切り裂き事件
- その他
⑦には浮浪者の死体発見なんかも入るけど、メインはやっぱりフロストVSマレットのバトル。(たいていフロストが、提出物を出してないっていう経緯なのもお約束)
今回はここにギルモアの家庭不和なんかも入るな。
見どころみていこうか~。
3作目で見えてきたフロストシリーズの「お約束」
3作目なので、ぼちぼちフロストシリーズの、この「お約束」が大分解ってきた。
- 新人刑事とフロストがコンビを組まされる(そして新人は振り回される)
- マレット署長とフロストのバトル
- 複数の事件が同時進行(全く関係ない事件もモチロン起こる)
- フロストは直感を頼りにチームワークも無視した単独行動
- いろいろあるが、フロストの直感とコミュ能力で事件は絶対に解決
- ナイスタイミングで発せられるフロストの下品なジョーク
そこに時々これが入る。
- 新人刑事の恋愛
- ほろりとさせてくれるエピソード
今回は新人刑事とフロストが認め合う場面と、新人刑事が恋に走る場面は残念ながらなかった。
ラストにも救いがないので、「夜のフロスト」は前回の「フロスト日和」に比べると少々キツイ内容かもしれない。
いつもいつもハッピーエンドでは終わらない・・これもまたフロストシリーズなのかもしれない。
ホガースの絵を思わせる内容
フロストシリーズを読んでいると、同じイギリス出身の、この画家を思い出す。
「ホガース」
このホガース作品と、フロストシリーズの何が似ているのかと言うとこれだ。
ホガースは、強烈に皮肉のパンチが効いた絵を書いていた。
「ビール通りとジン横丁」とか「当世風の結婚」とかな。
特に「ジン横丁」なんかはどこにも救いがない。
ただただ強烈に悲惨な「18世紀のイギリスの真実の一部」を描いていただけだ。
一方フロストシリーズには、しょっちゅう酔っ払いが出てくる。
(そして盛大にに吐いてくれる)
イギリスは紳士の国と信じていたネコ缶は、ただただびっくりだ。
酔っ払いを入れる専用の留置場まであり、「トラ箱」なんてスラングがデントン署にもある。
まだ第3段だが、こんな感じで酔っ払だけではなく浮浪者、児童ポルノに、未成年の少女が巻き込まれる事件が、フロストシリーズにはやたらと出てくる。
ネコ缶はよくわからないが、これはあまり表には出てこないイギリスに存在する真実なのだろう。
だが、そんな暗い面を描いているフロストシリーズはとても人気だ。
ホガースの絵も「風刺画」として一級の扱いを受けている。
この両者に共通することは、真実をジョークにくるんで表現していることもさることながら、誰も絶対に特別扱いしないところだ。
上流階級の人間をフロストは容赦しないが、かといって浮浪者が救われるということもない。
ホガースにしたって、上流階級の人間が落ちぶれるさまを描いているが、ジン横丁の人間も救われることはない。
そしてそれが、なぜか読んでいる人に奇妙な快感を与える。
それがホガースの絵と同様、フロストシリーズの人気の秘訣かもしれない・・・などとホガースも好きなネコ缶は思うのだった。
今までの作品ネタが登場
さてシリーズ物も進んでくると、これが出てくることが多い。
クリスティのポアロ、東野圭吾の加賀刑事でもこれはよくあり、マニアをニヤリとさせてくれた。
フロストシリーズも3作目ながらこれがあったので、ご紹介しておこう。
「なんの因果か、おれはいつもばっちい場所に行かされる。
この間は公衆便所で今度はごみの集積所だもんな」
「夜のフロスト」p329
これは前作の「フロスト日和」やな。
「フロスト日和」のオープニングは、公衆便所にいた浮浪者の死体発見から始まるのや。
「実はジョージ・ハリスンが死んだ。
階段を下りてる途中で心臓発作を起こした。」(略)ジョージ・ハリスン警部は28年間に及ぶ警察官生活に終止符を打って、つい先日退職したばかりだ。
「夜のフロスト」p351
これも「フロスト日和」ですな。
フロスト日和の最初はこのジョージ・ハリスン警部(この名前もジョークがきつい)の退職パーティから始まるのだ。
R.D.ウィングフィード「夜のフロスト」まとめ
ネコ缶評価
水戸黄門、吉本新喜劇を思わせる「お約束」が確立しているように思う。
パターンが解っていても読ませてしまうのは、キレッキレのフロストのジョークと人柄。
「俺の直感がそういっている」の一言でなんでも押し通してしまい、不休不眠で仕事をするフロストのパワーだ。
フロストシリーズをもっと読みたい方⇒一度読むとクセになるフロストシリーズはこちら