最近なかなかコレ!というミステリーに出会えていなかったネコ缶。
つらつらとオーディブルを繰っていると、ふとこのタイトルを見つけた
「犯人に告ぐ」

ネコ缶が一番好きなマンガ「アドルフに告ぐ」と、タイトルがよく似ていることもあり、思わず読む・・・いや、聴くことにした。
するとこれがかなり面白く、2日ほどで聴き終えてしまったのだ。
早速ご紹介していこう
Contents
雫井修介「犯人に告ぐ」 あらすじ

神奈川県警の巻島史彦は、幼児誘拐事件の捜査ミスの責任を負わされて、記者会見を行う。
ただそこで巻島は、マスコミの激しい攻撃に合い失言。
左遷の憂き目にあう。
それから6年後・・・・
幼児誘拐事件は解決されず、被害者は増える一方だった。
犯人は「バットマン」と名乗り、警察を愚弄するメッセージを送り付ける。
捜査に行き詰まりを感じた警察上層部は、情報を求める「劇場型捜査」なる作戦を決行。
マスコミを使い犯人に直接呼びかけ、犯人から動くよう仕向けたのだ。
この一大プロジェクトの責任者として、左遷先から呼び寄せられた巻島。
「ニュースナイトアイズ」というニュース番組に出演し、犯人に何度も呼びかけを行う。
その甲斐あり、ついにバットマン本人からの手紙らしきものが届くが・・・。
事件は思わぬ展開を迎える。
「刑事ものミステリーの金字塔」シリーズ第1段!
雫井修介「犯人に告ぐ」 感想

正直、「犯人に告ぐ」をこのブログに乗せていいものかは迷った。
ミステリーというよりは、どっちかというと「巻島という刑事を主役としたサスペンス」なのだ。
とはいえ
●犯人は誰なのか?という体で話が進むこと
●人が次々に死んでいる殺人事件であること
・・・という流れなのでブログに乗せることにした(安易)。
では見どころをみていこう!
「犯人に告ぐ」見どころ1 主人公巻島の魅力

私が聴いたのは「犯人に告ぐ」の上下巻なので、その流れで書いていく。
まず上巻ではこんな流れで話は進む。
●「わし」による連続幼児誘拐事件勃発
●巻島の捜査失敗
●マスコミ対応の大失敗⇒巻島の左遷
そして下巻は上巻から6年後のスタート。
こんな流れで話は進む。
●犯人はまだつかまっておらず、被害者も増えている
●警察はマスコミを舞台にした劇場型捜査をに切り替える
●責任者に巻島を任命⇒事件が動き出す
「犯人に告ぐ」の見どころは、実は下巻から。
捜査の失敗とマスコミ対応の失敗という、2つの大きな失敗を犯した巻島。
「ヤングマン」と呼ばれていた巻島は、左遷中の6年で大きな変貌を遂げる。
ニヒルで、捜査の鬼とも呼べるような、すごみのある冷徹な刑事として再登場するのだ。
メタモルフォーゼを遂げた巻島のリベンジ捜査・マスコミ対応は、上巻と比較しても全く違い、プロそのもの。
この下巻の巻島が、少々怖いが本当にカッコいい。
この変貌を遂げた巻島の魅力こそが「犯人に告ぐ」の面白さなのだ・・・と強く思う。
「犯人に告ぐ」見どころ2 マスコミが舞台

犯人が探偵なり警察なりに、犯行声明的な文章を送り付けるのはよくある。
「ABC殺人事件」とか
「グリコ森永事件」とか
⇒詳しくはこちら
「犯人に告ぐ」も、犯人から手紙が来る。
だが一風変わっているのは、なんとその解説や犯人に対する呼びかけを、夜のニュース番組内でやってのけるのだ。
これは今までにない捜査方法だ。
こうしたマスコミを利用した捜査は、巻島の魅力と共に「犯人に告ぐ」を面白くするのに間違いなく一役買っている。
・・・というリアリティすら感じさせてくれる。
そのうえ、キャスターの大仰な話し方、コメンテーターなどの困ったような間の描写も見事。
なので「犯人に告ぐ」は、できればオーディブルで聞いてほしい。
きっと映画のような臨場感が味わえること請け合いだ。
また、この捜査の特集が思わぬ視聴率をたたき出し、ニュースナイトアイズの裏番組「ニュースライブ」が色めき立つ・・という事になってしまう。
このあたりも、犯人逮捕より、視聴率にしのぎを削るマスコミのエグさが出ていて、非常にリアルだ。
「犯人に告ぐ」見どころ3 キャリア組との対決

言うまでもないが、犯人vs巻島が「犯人に告ぐ」のメインストーリーだ。
だが「犯人に告ぐ」は、こちらの対決もある。
植草は32歳で警視という、エリートキャリア組。
巻島の上司・曾根の甥っ子で、捜査の監督というポジションだ。
そのせいか、植草はどこかこのマスコミ捜査にも他人事のように真剣みがない。
だが彼は、とんでもないことをやってくれる。
なんと、捜査の極秘情報を、マスコミ(裏番組の「ニュースライブ」のアナウンサー)に横流しするのだ。
※巻島が出ているのは、同じ時間の「ニュースナイトアイズ」な
自分が捜査を牛耳りたいとか、出世の為ならまだわかる。
ただ植草はそうではない。
「ニュースライブ」のアナウンサー・杉村未央子を振り向かせたいがためにやるのだ。
これもまだ彼女を愛してるがゆえに・・ならまだ解る。
だがこれも、ちょっと違うんじゃないか感が否めない。
「この自分の」恋人にならなかった女性をひざまずかせたい・・・というどす黒いエリート意識でやっているように思えるのだ。
植草のせいで巻島は窮地に立たされる。
どうなることかとハラハラするが、実にあっぱれなやり方で軍配は巻島にあがるのだ。
・・・と思う人も多いと思う。
だが、6年前のマスコミの失態をマスコミで返した感じもあり、胸のすく結末なのでヨシとしよう!
「犯人に告ぐ」見どころ4 わき役たちの魅力

ニヒルで冷徹なまでの刑事・巻島は、6年前の大失態もあってか、曲者ぞろいの捜査一課の中で浮いた存在だ。
でもそんな巻島にも腹心の部下がいる。
本田と津田だ。
本田はあっさりした気質で、6年前の捜査から巻島の部下。
ニヒルになってしまった巻島にも、何の屈託もなく接してき、機嫌よく協力してくれる。
本田の存在も巻島にとっては大きいが、なんといっても大きいのはこの人の存在。
津田は巻島の左遷先・足柄署の人。
足柄署の中でも、がむしゃらに働く津田を諭し、支えてくれる存在だった。
劇場型捜査の責任者となり、捜査一課に戻る巻島。
その時巻島は、このセリフで津田を引き抜く。
捜査一課に巻島と一緒に戻ってからは、今までの暇な部署とは一転。
超忙しい仕事になったのだが、文句も言わず淡々と激務に順応する強さも見せる。
なんかこの人を引き抜いた巻島の気持ちが解る
他に面白いのは小川かつお。
失敗ばかりで、部下にまで馬鹿にされてしまうキャラ。
彼は緊張感あふれるストーリーを和ませてくれる存在だ。
巻島の周りは敵だらけだが、こうした数少ない味方と巻島のつながりは、ホッと温かみを感じる。
そして、ストーリーにグッと深みと幅をもたらしてくれることに一役買ってくれている。
こうした個性豊かなキャラ設定のうまさは、やはりある程度の年齢のある作家さんならではだな~とネコ缶は思うのだ。
雫井修介「犯人に告ぐ」 まとめ


ネコ缶評価
朗読で聞いてよかったと心底思う。
この臨場感は朗読でこそ。
話の構成だが、ラストはいきなり終わった感じもある。
連続殺人犯人の、人となりなどももう少し書いてほしかった。
でもいいのだ。
これは巻島(と、仲間たち)の物語なのだから
続編も出ているようだし、しばらくはこれを「聴いて」いこうと思うで!
読書家におススメオーディブル

Amazonオーディオブック – オーディブル
Audible, Inc.無料posted withアプリーチ