作家アリスシリーズの火村は、「犯罪社会学」のセンセイだ。
犯罪と人間に真摯に向き合い、ストイックでシャープな印象を持つ火村。
その火村が、自分の生徒に、事件の解決を依頼されるという、ありそうでなかった展開が今回ご紹介する「朱色の研究」

女生徒と何か進展があるのか?(絶対ない。今までの火村を知ってる人なら解る)
詳しくみていこう!
Contents
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「朱色の研究」 あらすじ

火村のゼミに所属している貴嶋朱美は、なんと「オレンジ色恐怖症」。
きっかけは15歳の時に起こった放火事件。
彼女の家(朱美は離れに住んでいて無事)が燃えてしまい、世話をしてくれていた伯父が焼死してしまったのだ。
しかも朱美は、伯父が火だるまになって死ぬところも見てしまった。
そして朱美はこうも言う。
火村先生に解決してほしいのです。
そのために先生のゼミも取りました!
生徒を不憫に思う気持ちもあったが、興味もあり承諾した火村。
その後、アリスの家に泊まりに行くが、早朝に何者かがこんな電話をかけてきた。
いぶかしみつつ行ってみる火村とアリス。
すると806号室のバスルームには男の死体が!
しかもそれは朱美のもう1人の伯父・陽介の死体だった・・・。
これは朱美が依頼した、2年前の事件と何か関係があるのだろうか?
火村とアリスが動き出す。
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「朱色の研究」 感想

タイトルが良い。
見た瞬間「おお」と思う。
ミステリー好きな人なら、何をモチーフにしているかはすぐに解るはず。

ここで言う「朱色」は「オレンジ色」。
ハードカバー本の表紙をはじめ、夕焼けや火の色など、オレンジにちなんだものが物語の随所で見られる。
もちろん殺人事件の現場でも・・・だ。
3つの殺人事件を中心に詳しくみていこう
「朱色の研究」見どころ1 朱美の伯父の死

まず朱美が居候していた伯父の家が放火されて、伯父も焼死するという事故だ。
放火だという事は解っているのだが、これもいまだに犯人が解っていない。
この事件の捜査を具体的にするわけではないが、これは次のマンションの事件に確実につながっていく。
「朱色の研究」見どころ2 マンションでの陽介殺害事件

これが前半の主要事件。
廃墟に近いマンション・オランジュ夕陽丘806号室で、朱美の伯父陽介が殺されていたという、シンプルな事件だ。
だが「六人部」という男が何者かに呼び出されて、事件当時そのマンションにいたというからややこしい。
しかもその陽介も六人部も、2年前の事件があった時は現場にいた人間なのだ。
マンションを使ってのトリックで、誰かが六名田に罪をかぶせようとしたのか?
それとも六名田が嘘をついているのか?
嘘を言ってるようにも見えないが、状況は限りなくクロ・・・・。
こんな状況を、火村と警察が必死に真相に迫り、最後は火村が鮮やかに真相にたどり着いてくれる。
その真相の決め手はここでもやっぱり「朱色」
六人部の存在に気づくきっかけになったのも、オレンジ系の香水がきっかけ。
真相にたどり着くのも、オレンジ色の何かが見えたのがきっかけや。
「朱色の研究」見どころ3 2年前の未解決事件

物語後半の主要事件。
貴嶋が火村に頼んだ、2年前の未解決事件だ。
後半はこの事件の真相に火村たちが迫る。
宗像家の別荘にこの人間たちが遊びに集まった。
- 宗像家の3人(貴嶋朱美の親戚)
- 貴嶋朱美
- 陽介
- 六人部(宗像正明の友人)
- 中村(宗像正明の友人)
- 升田(陽介の仕事の付き合いがあった人間
- 太田夕雨子(被害者)
で、その中の大野夕雨子が殺されるのだが、殺され方が異様。
まず撲殺された後に、崖から岩を落とされているのだ。
しかもなぜかその時間が開いている。
- 撲殺時間・・・午後2時から5時
- 崖から岩を落とされた時間・・・午後5時から6時
この両方の時間にまたがる、ハッキリしたアリバイを持っている人がいなかった。
そのうえ、アリバイがない・・・という人もいない。
という事で決め手がなく、あいまいになってしまっているのだ。
そこで火村が、もう一度別荘に行ってみて、再び事件を検証してみるのや。
ここにもちゃんとオレンジはあるな!
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「朱色の研究」 まとめ

ネコ缶評価
設定はヨイ。
妙なるタイトルも、3つの殺人事件(うち2つは未解決)とモチーフの「朱色」の絡ませ方も。
ただ、犯人の動機に全く共感できなかった・・・。
「朱色の研究」のこの結末は、「読書メーター」やアマゾンのレビューでも、ネコ缶と同じ意見が多いな
賛否両論あるだろうが、恋に対してロマンチストな人におススメかな。