ホームズとワトソン、ポアロとヘイスティングス。
そんな名探偵コンビは日本にもいる
火村&アリスだ。
彼らは「作家アリスシリーズ」として有名だ。
その作家アリスシリーズ第6段(国名シリーズ除く)が、今回ご紹介するこちら
絶叫城殺人事件
6つの短編が入っている作品で、その6つがすべて建物の名前の話だ。
館シリーズとは?⇒詳しくはこちら
詳しくみていこう!
Contents
「絶叫城殺人事件」 あらすじ&感想
絶叫城殺人事件はこの6作からできている。
- 黒鳥亭殺人事件
- 壺中庵殺時事件
- 月宮殿殺人事件
- 雪華楼殺人事件
- ★紅雨荘殺人事件
- 絶叫城殺人事件
★はネコ缶お気に入りの話
亭・庵・殿・楼・荘・城・・・建物に関係ある漢字でまとまってるな!
では内容を詳しくみていこう!
「絶叫城殺人事件」 黒鳥亭殺人事件 あらすじ&感想
学生時代仲が良かった天濃仁。
最近は年賀状だけの付き合いになっていた所、突然電話が鳴った。
「火村と一緒に来てくれ」
天濃は山奥の「黒鳥亭」と呼ばれる、真っ黒に塗られた家に娘と2人で住んでいる。
その家の近くで一昨年、事件があった。
夫婦ケンカが起こり、夫が妻を殺害し逃走。
そのあげく、近くの海に投身自殺をした・・・というのだ。
だがその死んだはずの夫が、黒鳥亭の古井戸で死体で発見。
しかも死体は、死後1週間しか立っていなかったという。
なぜ彼はそんなところで、しかも最近死んでいたのか・・・・
でもなぜ今になって井戸で?という事はなかなか解らない。
しかも溺死ではないのだ。
Eテレの「♪カ~ラ~スは考~える」がヒント。
アリスが真樹とやっていた「20の扉」遊びは奥が深くてナイス!
「絶叫城殺人事件」 壺中庵殺時事件 あらすじ&感想
窓一つない、はしごで下りていく壺のような地下室「壺中庵」で、壷内宗也が首をつって死んでいるのが発見された。
しかもその死体は、なぜか頭に大きな壺をかぶっていたのだ・・・。
扉には閂がしてあり、自殺のようだったが、死体の様子から他殺と断定される。
容疑者は3人。
仲の悪かった息子に、家政婦、借金があった友人だ。
だが誰かが犯人としても、どうやって外から閂をかけたのか?
そして頭の壺は、一体何の意味があるのか?
密室トリックとしては比較的シンプルだが、頭の壺をそんな風に使ったのか~と解ったとき、やられた~と思うだろう。
割と正統派のミステリー。
「絶叫城殺人事件」 月宮殿殺人事件 あらすじ&感想
河川敷で、ホームレスが廃材や拾った木で建てたという、不思議な豪邸があった。
ガラクタで作られはしたが、そこには確かな「美意識」があり、アリスは不思議と惹かれていた。
その豪邸は「高さん」というホームレスが建てたもので、家は「月宮殿」と呼ばれていた。
ある日もう一度見てみたいと、出かけたついでに火村と月宮殿に寄ったアリス。
だがそこは火事になったらしく住んでいた男は死に、燃えカスが残り、警察がうろうろしていた所だった。
放火犯の少年たちが捕まったが、彼らは一様に、中に人はいなかったと言う。
だが同じホームレスの浜さんは、確かにこの中には高さんがいて、少年らは知っていて火をつけたという。
どっちの言い分が正しいのか?
犯人へのやり場のない怒りを(もしかしたら作者の怒り)少々歪んだ方に向けてしまった。
それはやったらアカンのやけど、共感は出来る
「絶叫城殺人事件」 雪華楼殺人事件 あらすじ&感想
廃ビルの屋上から飛び降りたと思われる男・最上涼の死体が発見される。
その時一緒に居た女性・倉田みずえはショックで記憶をなくしてしまい、最上涼は自殺なのか誰か(みずえ含む)に突き落とされたのか解らない。
涼とみずえは一緒に家出している最中で、たまたま見つけたこの廃ビルに住みついていたのだ。
だが彼ら以外にも、その廃ビルに先客がいた。
伊地知という50代の男だ。
3階と5階に別れて住んでいたとはいえ、涼が死んだときは伊地知もいた。
どちらかが涼を殺したのか?
涼は自殺なのか?
自殺なら、なぜ涼の頭には致命的な傷があったのか?
他殺なら、屋上に足跡が1つしかないのはなぜか?
超シンプルなトリックを、甘くてセンチメンタルな仕上がりにしてある。
「絶叫城殺人事件」 紅雨荘殺人事件 あらすじ&感想
映画のロケでも使われたという美しい豪邸「紅雨荘」。
その持ち主で、元化粧品会社社長の飯島粧子が首をつって死んでいた。
だが誰かに首を絞められて殺された後、細工をされたことは明確。
粧子は誰に殺されたのか?
遺産や土地を相続する3人の子供は、アリバイが固く、早々に除外される。
粧子と仲が悪かったという、親戚の牟礼真広はハッキリとしたアリバイがない。
だが後日、彼女のアリバイを証明してくれたタクシーの運転手を、真広は知らないと突っぱねる。
なぜ彼女はわざわざそんなことをしたのか?
そして粧子を殺したのは誰なのか?
土地やお金目当てというのはよくあるパターンだが、これはちょっとひねっている。
いかにも現代らしいひねり方。
「紅雨荘」が映画のロケに使われたこと。
2軒家が出てくるところ。
これが最大のヒントな!
「絶叫城殺人事件」 絶叫城殺人事件 あらすじ&感想
何のゆかりもない若い女性達が、連続で殺される事件が起こっていた。
しかも被害者たちはみんな、口に「NIGNT PROWER(夜にうろつくもの)」と書かれた紙が入っていた。
何の真似かと世間はざわついたが、それはどうも「絶叫城」というゲームのまねらしいと判明。
犯人が捕まらないまま、4人目の被害者が出る。
だが4人目の被害者の口からは「GAME OVER」という紙がみつかり、凶器も残っていた。
最後の被害者は死ぬ間際、110番をした。
すぐに警察は犯人を追ったにもかかわらず、どこにも見つからず・・・。
犯人はどこへ行ってしまったのか?
ゲームの通り、被害者は4人で終わるのか?
戦争・貧困・病苦といった、大きな物語が小説の主題にしにくくなった昨今、
<心の闇>を愛好する作家が目白押しだ。そんな言葉をもてあそべば、利口に見えると思うのか?
(略)バックコーラスが歌うのはトラウマ・トラウマ・トラウマ・・・
「絶叫城殺人事件」P297
これはネコ缶もちょっと共感するな。
なんでもトラウマって言えばいいってもんじゃないって。
トラウマは多かれ少なかれ、みんなにある。
でもそれを、どう乗り越えるかじゃないのかな?
有栖川有栖「絶叫城殺人事件」 まとめ
ネコ缶評価
有栖川氏は短編がうまい。
トリックそのものはシンプルなのだが、肉付けがうまいのだ。
でもって、有栖川氏の教養で、小説の中身を深めてくれたりする。
作家アリスシリーズ読みたい人は、絶対押さえとこな!