アガサクリスティにはノンシリーズといわれているもの(ポアロもマープルも出てこないもの)がある。
その最高峰の傑作がこれだ
「そして誰もいなくなった」
この作品に至っては、もう説明の余地がないくらいだ。
これは別格として、ノンシリーズで、これ以外に何がいいかと尋ねられたら、今回ご紹介するこちらを挙げよう。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」
気になるタイトルだが、これは殺人事件の被害者のダイイングメッセージなのだ。
不思議なダイイングメッセージを追いかけて、若い素人探偵2人が大活躍する作品。
早速見てみよう!
Contents
アガサクリスティ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」あらすじ
ある日の夕方、友人とゴルフを楽しんでいたボビーは、プレイ中に、がけから転落した人物を見つける。
驚いて駆け寄ってみると、その人物は苦しい息の中、こう言って息絶えた。
ボビーの友人は、助けを求めに村に帰っており、周りにはだれもいない。
あまりの謎の一言と、突然の死にボビーは戸惑う。
死体の身元を調べるために、ポケットを見ても、1枚の写真があるだけで、名刺も財布もない・・・。
大事な用事を控えていて、すぐに帰らなければならないボビーは困り果てるが、そこに1人の人物が通る。
事故ですか?
あらましを説明すると、その人物は快く救助が来るまでの見張りを引き受けてくれた。
その後、ボビーは事故死した人物の遺族にも会い、検視審問も終わり、また普通の日常が戻ったと思ったが・・・
ボビーはなぜか、南アメリカで謎の仕事の誘いを手紙で受けたり、モルヒネを飲まされて殺されそうになる。
そして、こんな事実も判明。
ボビーが最初見つけた写真と、後から発見された写真がなぜか違うものになっていたのだ!
死体の見張りをしてくれた人物は、一体何者なのか?
なぜボビーの命が狙われるのか?
伯爵令嬢・フランキーと組んで、若い二人の素人探偵が始まる!
アガサクリスティ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」感想
非常に構成がよくできた作品。
400ページと長い作品の中に、この見どころたちが、テンポよくちりばめられている。
- ダイイングメッセージ
- 密室
- ロマンス・冒険
その点は大丈夫。謎解きも実に見事だ。
詳しくみていこう。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」見どころ1 ダイイングメッセージ
これだけ有名なダイイングメッセージは、なかなか他にないだろう。
特徴は、死ぬ間際の言葉としてはあまりに異様な事。
もちろんこのエヴァンズは、死んだ男の身内でもなんでもない。
そしてこの謎の言葉に振り回されて、ボビーとフランキー、読者をぐいぐい引っ張っていく。
被害者は、一体何をそんなに気にしていたのか?
エヴァンズとはいったい何者なのか?
そして何を頼んでほしかったのか?
謎解きのヒントは、真ん中あたりに出てくる人物がにぎっている。
次第に解かれていく謎を十分楽しもう。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」見どころ2 密室
物語中盤で、もう一つの銃殺された死体が出てくる。
見た目は自殺なのだが(密室だし、自殺する動機も十分あった)なんとなく違和感もある。
でもその場にいた誰もが、死んだ人物に近寄ることはできなかった。
どう考えても怪しいんやけど、他殺と決定できる証拠もない・・・・。
エヴァンズの謎に隠れてしまうが、これもよーく覚えておいてな。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」見どころ3 ロマンス
「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」の面白さの片翼がダイイングメッセージとすると、もう1つはボビー&フランキーのロマンスだろう。
フランキーは伯爵令嬢だ。
だが気さくで明るく、好奇心旺盛。
怪しい人物がいる邸宅に、潜入調査するためにわざわざ事故を起こす。
そして法律家のおじい様にも、臆せずハッタリをかまして情報を聞き出す。
そして必要とあれば、立場を利用してバンバンお金を使ってくれる。
(大急ぎで牧師館に帰る途中)
「ねえボビィ、こんなスピードじゃだめだわ」
「これ以上出そうとしたって無理だよ」
「小型飛行機に乗ればいいわ!」「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」 P431
好奇心旺盛で、抜群の行動力を持つおてんば女子とフォローに回るちょっと気弱な男子・・・。
クリスティのノンシリーズ作品に、よくある設定だ
だが若い男女が探偵役をすると、ストーリーに勢いとパワーが出る。
謎解きの楽しさと、この若い二人の素人探偵を十分楽しんでほしい。
アガサクリスティ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」まとめ
ネコ缶評価
ちょっとごちゃごちゃしてる印象は否めない。
名前しか出てこない登場人物も多い。
でも、若い二人が主役だからか、とにかく楽しくて勢いがあり、一気に読める作品。
ラストで今までの謎が解けた瞬間は、トリ肌がたつ。
[…] 「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」のボビーとフランキーの、その後をホーフツとさせるので、ラノベのノリが好きな人にはおススメだ。 […]