「●●に捧げる」と言う言い方がある。
シンプルに言うと「両手で高く差し上げる」だ。
でも「大切に思う対象に向けて、モノや真心を差し出す」という意味もある。
・・・という事を考えたら、今回ご紹介するこちらは少々考えてしまうタイトルだ。
「火村英生に捧げる犯罪」
たしかに火村は、犯罪を研究している大学のセンセイだ。
彼を喜ばせるために犯罪・・・・?
どうなのだろうか?
詳しくみてみよう!
Contents
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「火村英生に捧げる犯罪」あらすじ&感想
「火村英生に捧げる犯罪」はこの話からなる。
- ★長い影
- 〇鸚鵡返し
- あるいは四風荘殺人事件
- 〇殺意と善意の顛末
- 〇偽りのペア
- 火村英生に捧げる犯罪
- 殺風景な部屋
- 雷雨の庭で
★はネコ缶お気に入りの話
かなり短い話(10ページくらい)が3作品ある。
中編の話の隙間にある、箸休め的な存在。
その話は、詳しく書くとネタバレに直結するので、軽めに書いた。
内容を詳しくみていこう。
「火村英生に捧げる犯罪」 長い影 あらすじ&感想
人もいなくなり、機材も出された廃工場で、夜中に死体が発見された。
死体は手足を縛られ、口をテープで貼られたうえ、首をかなり低いところで吊っていたのだ。
自殺かと思われたが、これはやはり他殺。
状況的に難航するかと思いきや、死体が発見される少し前、桑原夫妻がこの工場から何者かが出てきたのを見たと言う。
ただ、桑原稜介が見た何者かは様子がはっきりせず、妻の香澄が見たのは「長い影」だけ。
彼らが見たのは、本当に犯人だったのか?
被害者の関係者にあたっていくにつれ、十年以上前の犯罪が少しずつ明らかになっていき・・・。
昔の犯罪が少しずつ明らかになっていくさまは、ハラハラして手に汗を握る。
殺人のトリックは少々平凡だが、被害者の身になってみるとかなり怖い。
「火村英生に捧げる犯罪」 鸚鵡返し あらすじ&感想
犯行現場に鸚鵡がいたら、何かを覚えているのでは?
なにか手がかりをしゃべってくれるんやないか・・・。
そんな考えを、ミステリーファンなら考えたことがあるかもしれない。
それを、少々意外な方向へ持って行った感のある作品。
「火村英生に捧げる犯罪」 あるいは四風荘殺人事件 あらすじ&感想
ミステリー小説界の重鎮・里中泰成がなくなってしばらく後、娘の花織から連絡があった。
社会問題をテーマにしたミステリーを書き、本格推理をけなしていた里中だが、なんと自分でも本格ものを書いていた下書きが見つかったというのだ。
だがあくまで下書きで、枚数も少なく、結末も書かれていない。
何とかして形にしたい、結末もつけたい・・・というアリスと片桐は、火村の元に持ち込んだが・・・・。
(むこうも大学の准教授やし)
物理の法則+大掛かりなしかけで、舞台のような奇想天外なトリックになっていてびっくりした。
これで合ってるのかどうか謎だが、里中先生に聞けたら良かったなあ!
ガリレオシリーズの、ネコ缶おススメはこれ↓
「火村英生に捧げる犯罪」 殺意と善意の顛末 あらすじ&感想
(相棒の伊丹さんが似合いそう)
長引きそうなやり取りが急転直下、犯人が落ちる。
その後は謎解きになるけど、これ実際に出来そうなトリックやないかな~。
(後書きで、有栖川先生もそう書いてるで)
「火村英生に捧げる犯罪」 偽りのペア あらすじ&感想
という事を利用したトリックのエピソード。
昔これが出来る使い捨てカメラが大流行したけど、今はスマホが主流やし、ピンとこーへん人はいるかもしれへんなあ~。
「火村英生に捧げる犯罪」 火村英生に捧げる犯罪 あらすじ&感想
捜査一課に、こんな妙な手紙が来た。
時を同じくして、夜中に小学校で机がSの字で並べられる奇妙な事件が起こったり、首を切り落とされた猟奇的な殺人事件が起こったりした。
これは脅迫状を送り付けた犯人の仕業なのか?
犯人は一体何を考えているのか?
一方アリスも「あなたは盗作している、一度東京まで来い」と言われていた・・・・。
が、ラストは少々拍子抜けするオチ。
犯人の子供っぽい気質にオイオイ・・・と思う。
昔、遠足のバスの予約を忘れて、似たようなことをした旅行会社社員を思い出した。
「火村英生に捧げる犯罪」 殺風景な部屋 あらすじ&感想
徳永繁巳が、何もない廃墟のようなビルの一室で殺されていた。
彼は信用調査会社を経営しているという触れ込みだが、やっていたのはゆすり。
怨みをかっていたことも多かったという。
徳永は携帯を握りしめて死んでいたが、その携帯は新しくしたばかりで着信もメールも残っていない。
何とか容疑者を4人まで絞り込んだが、そこから先は行き詰ってしまい・・・・。
が、この使い方は全く予想外だった。
ヒントは被害者の向き。
左胸を刺された後、這って逃げようとしていたのに、なぜ仰向けに倒れていたかの理由を、ひたすら考えよう。
「火村英生に捧げる犯罪」 雷雨の庭で あらすじ&感想
売れっ子放送作家の早瀬琢馬は、お隣さんの轡田(くつわだ)に悩まされていた。
何やかんやと言いがかりをつけられ、時には警察を呼ばなければならないことも。
ところがある日の朝、轡田が庭で殺されているのが見つかった。
仲が悪かった早瀬が疑われてしまうが、彼は死亡推定時刻、パソコンのモニターでパートナーと仕事の話をしていた。
トイレに行くなどの短時間の中座はあったが、お隣に行って殺人を犯して帰ってくるなどの犯行は不可能。
だが火村は何かを感じたようで・・・・。
こんなお隣さんにからまれた早瀬は同情に値する。
トリックは、かなりの偶然を利用したもの。
「長い廊下がある家」に似た展開かな。
有栖川有栖(作家アリスシリーズ)「火村英生に捧げる犯罪」まとめ
ネコ缶評価
いつもながらあっさりした展開で読みやすい。
その中で「長い影」はちょっと手に汗を握る。