アガサクリスティ

アガサクリスティ(マープル)女性作家ならではの視点が光る「鏡は横にひび割れて」 

アガサクリスティは、女性作家のせいか、女ならではの目線が光る作品が多い。

杉の柩とか
満潮に乗ってとか
ホロー荘の殺人とか

これらはミステリーとしても面白いが、女性の生き方に注目して読んでも十分読みごたえがある。

でも今回ご紹介する「鏡は横にひび割れて」は、女性ならではの殺人と言える。

どんな話なのか?

詳しくみていこう。

アガサクリスティ(ミス・マープル)「鏡は横にひび割れて」 あらすじ

ゴシントン・ホールに移ってきた女優、マリーナ・グレックとその夫。

彼らは大改造を加えて仕上がった、その邸宅の仕上がりに大満足だった。

そんなある日の午後、「セント・ジョンズ野戦病院記念パーティ」の準備に関係した人たちの集まりが、ゴシントン・ホールで開かれることになる。

マリーナやその夫・秘書たちも、ホステスとして、沢山の人をもてなし大忙し。

だがマリーナは、バドコック夫人と話している時、なぜか奇妙な顔をしていたという。

その奇妙な表情を観たのは、バントリー夫人。
まるでこんな顔のようだという印象すら受ける。

織物はとびちり、ひろがれり
鏡は横にひび割れぬ
「ああ、呪いがわが身に」と、シャルロット姫は叫べり
(アルフレッド・テニスン)

 

とはいえ、これはほんの一瞬のこと。
マリーナもすぐに元に戻り、パーティは滞りなく過ぎていった・・・。

そんな時、カクテルを飲んだ女性、ヘザー・バドコック夫人が死亡。
なんとカクテルに毒が入っていたのだ!

だがバドコック夫人は、おせっかいで世話好きな、どこにでもいる普通の主婦だ。
誰かから殺されるような人物ではない。

だが捜査がすすむうちに、こんなことが判明。

バドコック夫人が飲んだカクテルは、実はマリーナが飲むものだった

バドコック夫人が、グラスを落としてしまったので、マリーナが持っているグラスを渡したというのだ。

犯人が狙ったのは、実はマリーナなのか?

くしくも、マリーナの元には、脅迫状が届いており、彼女が飲むコーヒーにはヒ素が入っていた。

犯人はいったい誰なのか?

そうして起こる第2・第3の殺人事件。

マリーナが見せた表情は、事件に関係あるのか?

ミス・マープルの推理が光る!

アガサクリスティ(ミス・マープル)「鏡は横にひび割れて」感想

そこまで派手な話ではない。
トリックもあっと驚くものではないし、旅情あふれる作品でもない。

でもこの作品は、ひどく印象に残る。

その理由をみていこう。

「鏡は横にひび割れて」読みこなしポイント1 表情に始まり、表情に終わる

「鏡は横にひび割れて」はなんといってもこの詩がポイント。

織物はとびちり、ひろがれり
鏡は横にひび割れぬ
「ああ、呪いがわが身に」と、シャルロット姫は叫べり
(アルフレッド・テニスン)

なぜマリーナは、バドコック夫人と話している時、こんな顔をしたのだろうか。

最初は不思議に思うが、物語が進むうちに、この事実はあまり重要視されなくなっていく。

脅迫状が届いていたという事が解り、狙われていたのはバドコック夫人ではなく、マリーナなのでは?という方向に進むのだ。

なので、マリーナがかつて結婚していた男性や、養子に取った子供たち(で、ほおりだした)の行方や、アリバイを追いかける。

だが捜査は、ここで完全に行き詰まる。

そしてあの表情は、やはりこの事件最大のポイントを占めていたことを、ミスマープルが見事に解き明かすのだ。

これが出来たのは、やはりミスマープルが女性だったからだろう。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
ポアロやったらちょっと無理やったかも?

「鏡は横にひび割れて」読みこなしポイント2 マニア受けする隠れキャラのような文

「鏡は横にひび割れて」は、マープルシリーズの8番目。

そのせいか、こんなことが多々ある。

 
 
あれ?この名前、どこかで見たような・・・ 
 
 
この人、たしか○○で出てたような・・・ 

そうなのだ。

鏡は横にひび割れて」は、かつて○○に出ていた人たちや、場所がこぞって出てくる。

そもそも今回舞台の「ゴシントンホール」にしたって、「書斎の死体」でも「死体発見現場」やもんなあ!

書斎の死体詳しくはこちらから

マニアには嬉しくなる、この隠れキャラたちの描写をみていこう。

ミス・ハートネルは進歩と戦い(略)ミス・ウェザビーは世を去った・・・

「鏡は横にひび割れて」p10

このお二人は、ミス・マープルのデビュー作「牧師館の殺人」に出てた。
4人で牧師さんと、ゴシップのお茶会してたよな~。

懐かしいグリセルダ(略)・・・毎年クリスマスカードを送ってくれる。
あの可愛らしかった坊やも今では逞しい青年になって・・・
「鏡は横にひび割れて」p13

これも「牧師館の殺人」読んだ人なら解る。
ラストでグリセルダは、子供が出来るんやよな。

他にも、ネタバレになるので書かないが、「牧師館の殺人」ネタが出てくるんやで。

ちょっと嬉しいよな!

アガサクリスティ(ミス・マープル)「鏡は横にひび割れて」まとめ

ネコ缶評価

アガサクリスティは、レイディ・オブ・シャロットの詩の一説を読んで、この物語を思いついたのではないかと思う。

もしそうだとしたら、すごい才能や・・・。

ただこれ、もう少し短くして、中編くらいにしても話が締まって良かったんやないかな~と思う。

とはいえ最後にグッとくるのは変わりないな!

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