アガサクリスティが「メアリ・ウエストマコット」という名前で、恋愛小説を書いていたという事はここで書いた。
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今回ご紹介する「春にして君を離れ」は、その中でも最も評価の高い作品だ。
非の打ちどころのない主婦・ジョーンが、旅行の帰り道に砂漠で何日も足止めを食う。
珍しいことやなかったんやろな。
何もすることがなかったジョーンは、たまたま前日遭遇した、学生時代の友人の言葉を思い出す。
その言葉を頼りに、自分の人生(夫婦・親子)を振り返ってみると・・・
本当に自分は正しかったのか?
子供たちは幸せだったのか?
という事を考え出し、隠された真実に行きつく。
という、昼ドラみたいな設定なのだが・・・・
実に、実に面白いのだ。
100年近く前に書かれた作品だが、今読んでも十分に面白い。
どのレビューも高評価なのもうなずける。
そして何より、100年前にどこにでもいたであろう、こんな女性にスポットライトをあてたクリスティを心底尊敬する。
ではさっそくみていこう「春にして君を離れ」!
Contents
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「春にして君を離れ」あらすじ
ジョーンは、体調を崩した末っ子・バーバラへのお見舞いを終えた帰り道の途中、一人の女性と会う。
みすぼらしく老けた姿だったが、その女性は女学校時代の友人・ブランチ。
久しぶりの学生時代の友人に会い、屈託なく話をしたジョーン。
だがブランチは、なぜかジョーンにこんなことを言った。
・・・でも今度はあの夫婦、うまくおさまりそうね。
せっかくの再会は少しギクシャクしながらも、なんとか平和に終わる。
その後ジョーンはロンドンへの帰路につくが、なんと悪天候で、テル・アブ・ハミドという砂漠で何日もの足止めを食らってしまう。
砂漠の中、食べて寝ること以外、することもないジョーン。
すると不思議と、ブランチの言葉がよみがえり、自分の夫婦関係や親子関係を振り返ることになった。
自分の人生は一体何だったのか?
自分は本当に真実を見てきたのか?
次々と起こる疑問。
考えることしかない空間で、ジョーンが気づいた真実とは何だったのか?
メアリ・ウエストマコットの最高傑作!
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「春にして君を離れ」感想
クリスティを読みなれた人であれば「春にして君を離れ」を読んだ時、こう思うだろう。
ネコ缶だけかな(笑)こんな風に思うのは。
それくらい、主役のジョーンはクリスティ作品によく出てくるキャラだ。
では今回は、このジョーンのキャラを中心に、感想を詳しく書いていこう。
(ネタバレもあるので、読んでない方は注意してくださいませ)
「春にして君を離れ」 主婦・ジョーンという人物
「春にして君を離れ」を読んだ後、こう思う人も多いかもしれない。
どんな人かというと、こんな人だ
- 自分の見たいようにしか(自分の思い描いた幸せ図を通してしか)物事を見ない。
- 自分の見たいものでなければ、見なかったことにする
- 自分の思い描いた幸せ図が壊れることを恐れている
- 自分の望みに関して、相手はどう思っているのだろうという思いやり・想像力は全くない
こういう人は「悪い人ではないのだが、一緒に居るとものすごく疲れる人」になる。
相手の望みのために、ひたすら尽くさなければならなくなるからだ。
そのうえ、相手の望んだこと以外の意見を言ったり、行動をすることを厳しく禁止される。
そしてジョーン(みたいな人)が禁止するとき、それはたいていこういう言葉がついてくる
「家族のため」「あなたのため」
「あなたの事を心配してるから」
息子のトニーが、父親の後を継いで弁護士になることはせずに、農場を経営すると言う。
父親のロドニーは賛成したが、ジョーンは大反対した。
ジョーン「父親を失望させないようにするのは、息子の義務じゃありませんか」
「春にして君を離れ」P213~214
子供の幸せ云々のまえに「子供の義務」。
今では義務なんてことを口にはしないかもしれないが、口でどういおうと、内心こんな気持ちで子供の進路に反対する親は多いだろう。
- 「自分の思った通りの○○でいてほしい」
- 「自分が思い描いた人生図を、崩さないでほしい」
ジョーンもこの時本当は、こう言いたかったのではないか。
「息子は自分の思い描いたように、仕事を選ぶことが義務」
まだ友人や恋人であったら「別れる」ということも出来る。
だが自分の母親がこんな人であったら、かなりキツイ子供時代になるだろう。
その最大の犠牲者というべき存在が、ジョーンの末っ子バーバラだ。
バーバラは母親の呪縛から何とか逃れようとしてあがく。
その結果どうなったのかは、しっかり作品を読んでほしい。
「春にして君を離れ」を読んで母親として思うこと
母親は多かれ少なかれ、ジョーンのような側面があると思う。
- 子供はこんな風に育ってほしい
- 子供はこんな学校に行き、こんな仕事をしてほしい
多くはそれを「愛情」と言う。
だがネコ缶、それはたいてい「親のエゴ」だと思う。
子供の人生は子どものものだし、仕事も学校も人生の伴侶も子供が選ぶものだ。
そして子供には、チャレンジして失敗する権利もあるのだ。
そして何より「きちんと真実を見ることを恐れない」ようにせんとな!
アガサクリスティ(メアリ・ウエストマコット)「春にして君を離れ」まとめ
ネコ缶評価
よくできた話。非のうちどころがない。
人間観察(女性)を書かせたら天下一品の、クリスティの真骨頂だ。
ただ一つだけ、最後にロシアの貴婦人と会うエピソードは、無くてもいいかなとは思う。
そこだけマイナス0.5だが、10点満点に近い内容やで!
彼女はどうしているんやろな~。
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