クリスティのノンシリーズには、元気な女の子が活躍する作品が多い。
具体的に言うとこちらとか。
「茶色の服の男」
これなんかもそう。
「チムニーズ館の秘密」
そして今回ご紹介する「バクダッドの秘密」も、そのうちの1つに入るだろう。
ヒロイン・ヴィクトリアは、ノンシリーズの主人公らしく、とにかく行動力にあふれているが、ちょっと破格なところがある。
なんと、勤務先の社長夫人の物まねをしているところを見つかり、首になるというところから始まるのだ。
その後出会った、イケメンに一目ぼれ。
名前と行先しか知らないのに、バクダッドまで追いかけてしまうという無茶苦茶さもある。
ではみていこう!
Contents
アガサクリスティ「バクダッドの秘密」 あらすじ
速記タイピストのヴィクトリアは、社長夫人の物まねを見つかり、会社を首になってしまう。
落ち込んで公園にいる時であったのが、元戦闘機乗りのイケメン・エドワード。
彼にすっかり一目ぼれをしたヴィクトリア。
うっとりしているヴィクトリアに、エドワードはこんなことを言った。
せっかく素敵な人に出会ったのに・・・と、がっかりするヴィクトリア。
だがもともと楽天的な彼女はこう決心した。
一方、あちこちの町で、不穏な動きがあった。
バクダッドに向かう様々な人物が追跡され、荷物を荒らされていた。
挙句の果てには、命をあやうくする人物も・・・・。
何かを見つけて、バクダッドへ運ぼうとしている人物がいるのだ。
そして、それを阻止しようとしている組織もちらほら見える・・・。
一体バクダッドで何が起こるのか?
そしてヴィクトリアは、エドワードとの恋を実らせることができるのか?
アガサクリスティ「バクダッドの秘密」感想
今回登場するヒロイン、ヴィクトリアは物まねで会社を首になるような女性だが、もう1つ大きな特徴がある。
それはこれ!
「嘘がうまい」
自分の事を嘘で塗り固めて、SNSでセレブみたいにふるまう・・・という嘘のつき方ではない。
自分がピンチになったときなどに、まことしやかに嘘をついて乗り越えてしまうのだ。
その有様をざっと紹介しよう。
ヴィクトリアの大嘘1 仕事を得るために私文書偽造
どうしてもエドワードに会いたかったヴィクトリア。
一文なしで旅費もないので、バクダッドに向かうクリップ夫妻の付添になる事に決めるが、雇ってもらうためにこんな手を使った。
ビショップのことや。
これだけでも「おいおい・・・」と思うやろう。
下手したら私文書偽造になりそうな感じだ。
おまけに、クリップ夫人から、なぜあなたはバクダッドに行きたいのか聞かれた時、こうも答えた。
「伯父を訪ねてまいります。(伯父は)ポーンスフット・ジョーンズ博士ですの」
「まあ、あの有名な考古学者の?」
「はい!」「バクダッドの秘密」P65
たいした度胸だ。
ネコ缶は絶対にできない。
ヴィクトリアの大嘘2 ついた嘘から誠もでる?
中盤、ヴィクトリアは監禁されるが、辛くも逃げ出す。
逃げ出したはいいが、そこはバクダッド。
21世紀の日本ではない。
砂漠で遭難しかけるのだ。
そこへ運よく発掘隊のキャンプに拾われるのだが、ここでも嘘を発揮。
「伯父のポーンスフット・ジョーンズ博士の発掘隊に、合流することになっていますの」
「バクダッドの秘密」 P309
だが助けてくれた発掘隊は、まさにそのポーンスフット・ジョーンズ博士の発掘隊の1人。
ヴィクトリアは博士の姪で、人類学者という事になってしまう。
実際にそんな姪がいたのだそうな。
万事休すと思いきや、ここからヴィクトリアは、嘘をつきとおすために意外な踏ん張りを見せる。
ヴィクトリアの大嘘3 大ピンチも嘘でなんとかしてしまう
ラスト、犯人に命を狙われそうになるヴィクトリア。
でもそこでも、まことしやかに嘘をつきまくって、窮地に陥りながらも犯人から情報を引き出したりする。
同時に一種の自己保存の本能が(略)極めて敏速に働いた。
ヴィクトリアは愚かしい、間の抜けた(略)表情を装い続けていた。
と言うのは、(略)今自分が非常に危険な瀬戸際にあることを感じていたのだ。
(略)助かる道はただ1つ、切り札は1枚しかなかった。「(略)まあ!あなたって素晴らしい人だわ❤」
「バクダッドの秘密」P379~380
得意の物まねの技術を使い演技をし、敵にメロメロなふりをして油断させる。
大ピンチを、嘘と度胸と演技力で切り抜けてしまうのだ。
新しいタイプのヒロインかもしれへんなあ~。
アガサクリスティ「バクダッドの秘密」まとめ
ネコ缶評価
ヴィクトリアの気質は、身近にいるとちょっと厄介だが、物語だったので何とかセーフ。
スパイとかサスペンス物も、クリスティは書くが、ネコ缶的には今一つ。
ビッグ4とか、スパイもの、サスペンスが好きな人向きかな?
ビッグ4詳しくはこちら
本で床が抜けそうになっている方・人に見られたくない本が欲しい方はこちら!⇒読書好きを救うもの!それは「キンドルペーパーホワイト」